Part16 約束、次の満月に
第一章の最終話です!
やっと書けた………………
「…………ってことで、俺はもう立派な犯罪者だ。しかも、後付けとはいえ俺は魔族。零達と一緒にいるわけには、いかないさ」
「……………………」
流石の零も、この時ばかりは黙っていた。
今まで一緒にいた奴が魔族で、しかも既に2人の人間を殺している。
そんな話をしたところで、冷静にしていられる方が珍しい。
「そんな感じだな。わかったろ? ………………俺は、生きてるべきじゃない」
「………………」
「かといって、俺には自殺なんてする度胸はない。…………零にしか頼めない」
零は顔を伏せていて、表情を読むことが出来ない。
しかし恐らく、相当思い詰めた表情をしているのだろう。
「なんで、そんなこと言うの………………?」
震えている、零の声。
声だけじゃない。肩……身体全体が、微かに震えていた。
「私は、最初から冥夜君が魔族だって感づいてた。それなのに、なんでずっと一緒にいたと思う?」
「対魔族戦闘の有利化と、俺の監視、じゃないのか?」
「…………そうだね、それもある。けど、一番の理由はそうじゃない」
俯いていた零の瞳から、水滴が落ちる。
泣いてる………………?
「私は………………
冥夜君、君の事が好き。魔族なんて関係ない。君の事が、好きなの」
声が出なくなった。
今までのとは違う、驚きから来たものだった。
「神谷さんに問い詰められた時に、私、一目惚れって答えたよね? あれ、嘘じゃなかったんだ。割と本気で、答えてた」
「な………………」
「私は最初から君の事が好きだったよ。魔族とか関係なく、君の事が」
衝撃だった。
全く予想もしていなかったその言葉は、俺の脳内を瞬時に駆け巡り、支配した。
零の言葉は、嬉しくもあり、またそれ以上に、出来るなら聞きたくないものでもあった。
魔族である自分と、人間である零。
相容れない存在である俺達に、その感情は芽生えてはいけないものなのだ。
「………………気持ちは嬉しいけど、俺は…………」
「わかってる。わかってるよ。こんなこと言ったって、冥夜君が困っちゃうだけだってことも。けど、これ以上隠していたくないし、好きな人を殺すなんて………………絶対にできない」
「……………………」
「冥夜君は、どうなの?」
零は再び俯き、問い掛けてくる。
「私のこと、どう思ってる? 魔族だからとか、そういうのは考えないとするなら…………冥夜君が、人間のままだったとしたら」
「人間の、ままだったら…………」
どうなのだろう。
今までそういう目で見てこなかったから、よくわからない。
俺は、零のことをどう思ってる?
好き、なのだろうか。
わからない。
「………………一ヶ月、待ってくれないか?」
「一ヶ月?」
「ああ。どうにも、今は答えが出せそうにない。自分の気持ちが、まだわからない」
「………………わかった。でも、なんで一ヶ月?」
もっともな質問だな。
答えが出たら伝える、で良いはずだ。それなのに、期間を正確に指定する。気になるのも無理はない。
「俺の声が出なかった理由は、恐らく魔族となった代償。この世界にいる魔族は、力が制限されるんだろ?」
「そうだけど…………」
「今日は満月。魔族の力がその制限から完全に解放される日。今までは魔力を封じられていたからか、満月でも話すことは出来なかったが、これからは満月の夜なら、話すことができるだろう」
そう、つまり、何が言いたいかって言うと………………
「零の気持ちに応えられる応えられないに関わらず、自分の気持ちは言葉で伝えたい。アイツには、伝えられなかったから」
「…………そう、わかった。待ってるね」
そう言って、零は笑顔を見せた。
いつも見せてくれていた笑顔。
けど、この時の笑顔には、少し、ほんの少しだけだが、悲しさが見てとれた。
「スマンな」
「良いよ良いよ。それより、早く後片付けして帰ろ? 疲れちゃった」
「そうだな。流石に校庭にクレーター出来てたらマズイだろうし」
言って、目をやると、校庭のど真ん中に巨大なクレーター。
神谷を消したときの跡だ。
「(自分でやったとはいえ…………面倒臭いな)」
心の中でぼやきながら、作業を開始した。
結局、家に帰り着いたころには、日が昇りはじめていた。
そして予想していた通り、俺の口から言葉は、出なくなった。
次話から第二章です。
あらすじに書いてある、戦争へ向かう予定。
さらに、メインキャラがようやく増える予定です!
お楽しみに!




