Part11 驚愕の邂逅
久しぶりの更新です!
熱中症とは怖いものです………………
今まではそこそこのスピードで書けてたのにな…………
そんなわけで、めちゃくちゃ遅筆な11話、どうぞ。
白井狼牙が、ゆっくりと立ち上がる。
足元に、無惨にも腹を食いちぎられた警備員の死体が落ちる。
「虚野ォ…………暗月ィ…………」
「白井先生…………」
「オマエラ、コンナトコデナニヤッテンダ? 今ハ、校内ヘノ立入ハ禁止ノハズダガ」
「先生………………あなたこそ、今何をしていたんですか」
「飯ダヨ。腹ガ減ッチマッテヨ」
悪びれもせずに言う白井。
零が、白井の足元の死体に目を向ける。
「人を、食べたんですね」
声が震えている。
恐怖などではない。ただ単純な、怒り。
「虚野零、あなたを人に仇成す者とし、排除を開始します!」
白井に向かって、一気に駆け出した。
それを余裕の表情でみている、白井。
「ヤッテミロヨ…………出来ルモンナラナァ!」
瞬間、白井の姿が視界から消えた。
「くぅ…………!」
攻撃に向かっていた零の身体が、後ろ向きに吹き飛んでいくのが見えた。
廊下の窓を割りながら、外へ投げ出される。
アイツ、何しやがった!?
「暗月ィ…………オマエモ同ジ目的カ…………?」
「…………」
コクリと頷く。
「ナラ、オマエニモ同ジノヲ喰ラワセテヤル!」
目の前の白井が消えた。
身体を少しだけ後ろに反らすと、先程まで身体のあった部分を、白井の右腕が通りすぎた。
右側からの不意打ちか。
でも………………大烏天狗より遅い!
右腕に魔力を纏わせ、驚いた表情の白井の顔面に、裏拳を叩き込む。
零が飛んでいったのとは逆、教室の窓を割って、校庭に飛んでいく。
それを追って、俺も飛び出す。
空中の白井に向かって、脚を振り上げる。
今のは、零が吹っ飛ばされた分。
コイツは、学校を襲った分だ!
鳩尾に踵を減り込ませ、校庭へ叩き落とす。
土煙が上がる。
「キ……サマァ…………!」
すぐさま立ち上がり、咆哮する白井。
同時に、身体中から灰色の毛が生え、頭から耳が生える。
「『人狼』…………」
いつの間にか隣まで戻って来ていた零が呟く。
左腕を押さえているのは、落下時の衝撃で怪我でもしたのだろうか。
「魔族序列第八位の魔族。中級魔族の上位種だよ」
魔族序列第八位………………
ってことは、大烏天狗の二つ下か。
「上位種と言っても、そこまで警戒するような相手じゃない。魔力の扱いが苦手な種族で、主に体術を使って相手を翻弄する」
確かに、あのスピードは捉えづらい。
けど、魔力の扱いが苦手なら、なんとかいけるか?
「(俺が前衛に行く。援護、頼めるか?)」
「大丈夫?」
心配そうな表情でこちらを覗き込む零。
大丈夫、大烏天狗に比べたら遅い。
あの速さなら、なんとかついて行ける。
力強く頷き、駆け出す。
目標は、当然狼牙だ。
「ハハァ! 俺ト、サシでヤロウッテカ? ヤレルモンナラヤッテミロ!」
迎え撃つように、駆け出す狼牙。
そのスピードは、パッと見、俺の3倍はありそうだ。
だが、たからこそいける!
お互いの身体が衝突する寸前、身体を数センチ左にずらす。
同時に身体を前後反転、狼牙に背を向ける体勢になり、左肘を狼牙の腹部に叩き込む!
普通の肘鉄なら、魔族には効かないかもしれないが、このスピードで突っ込んできたのだ。
多少はダメージになるだろ!
「カ…………ハァ……」
よし、一応効いてる!
それじゃあ、怯んでるうちに追撃!
肘を狼牙の腹部に深く食い込ませ、それを離す勢いを利用して右回転。後ろ回し蹴りをお見舞いする。
中々効いたらしく、狼牙は校庭にヘッドスライディングする要領で、倒れ込んだ。
「ナカナカヤルジャナイカ。ダガ、マダ甘イナ」
少し油断したところで、狼牙が立ち上がると同時にこちらに爪を振る。
咄嗟に後退したが、胸の辺りを掠ったらしく、少しだけ血が飛び散った。
「…………!」
条件反射で、右腕に纏わせた魔力を狼牙に向かって放つ。
それをサイドステップでかわし、狼牙がこちらに肉薄する。
狼牙の爪を、魔力を固めた壁で防御するが、攻撃を止めたと同時、魔力が霧散していった。
足元で魔力を爆発させ、その勢いにのって大きく距離を取り、再び狼牙に向けて魔力を放つ。
「…………すごい」
零は冥夜の戦いぶりを見て、ただただそう呟いた。
援護すら必要なく見えるその戦いぶりは、明らかに素人のものじゃなく見えた。
「ホントに、君は何者なの? 冥夜君…………」
呟く言葉は、冥夜に届くことなく、夜の闇に消えていく。
ただ、先程から何か違和感を感じる。
何か、とてつもなくマズイことが起きそうな、そんな雰囲気。
そして、思い出した。
『冥夜の身体に宿る魔力は、常人の10分の1以下』
霧玄から知らされた、冥夜の身体の『異常』。
それはこの状況で、最悪の事態を示唆していた。
「冥夜君、ダメ! それ以上魔力を使っちゃ…………」
零は、力の限り、叫んだ。
零の声が聞こえた。
これ以上魔力を使っちゃ…… の後が、全然聞こえなかった。
しかし、あの真剣な表情を見る限りじゃ、かなりヤバいことが起きそうな気がするな。
つっても、魔力使わなきゃコイツには勝てない。
なら、少しでも早く決着をつける。
次で、終わりにする。
右腕に魔力を溜めていく。
なるべく少なめの量を、凝縮、密度を高める。
標的は、『人狼』、白井狼牙。
これで、終わりだ!
渾身の力を込め、魔力を放つ。
その魔力は、狼牙に直撃…………する直前に、何かに掻き消された。
くそ、なんだかわからねぇが、もう……………一…………回…………
もう一度魔力を溜めようとした時、全身から力が抜けていくのを感じた。
身体を支えることすら出来ず、ただそこに倒れ込んだ。
「ハッ、ドウヤラ、魔力切レノヨウダナ」
魔力…………切れ?
どういうことだ…………まさか、俺に宿ってた魔力を使い果たしたっていうのか?
「コッチトシテモ多少不本意ダガ、終ワリダ」
倒れている俺に、狼牙が歩み寄って来る。
マジでヤバい、指一本動かねぇ……!
零も駆け寄ってきてる。けど、あのスピードじゃ間に合わなそうだな。
………………終わりか。
諦めかけた、その時。
「アンタ、もう用済みよ」
どこからか聞こえてきた、聞き覚えのある声。
同時に、上空から黒い光が降り注ぎ、狼牙を飲み込んだ。
光が消えると、そこに狼牙の姿はなかった。
「全く、また面倒なことしてくれたねぇ、アンタらも」
呆れたような声を出しながら、女性が空から降りて来る。
金色の長髪に、外国人のような碧眼。
漆黒のローブに身を包んだその女性は、確かに見覚えがあった。
『アイツ』は、確か短髪だったはずだが、間違えるはずもない。
なんせ、数少ない『幼なじみ』なのだから。
「神谷…………さん?」
零が震える声を絞り出す。
そう。そこにいたのは、魔女のような格好をした、神谷遥だった。




