Part10 調査2日目
「今日はもう、正面から行こう」
居間で朝食を食べていると、零が居間に入るなり、そう言った。
『正面から?』
「うん。あの事件も突然のことだったし、学校に忘れたものを取りたいとか言えば、入れると思わない?」
…………確かにそうだが、俺達のクラスの教室は昨日零が調べていたはずだ。
他クラスにいたら、結局怪しまれる気がする。
「それもそっか…………じゃ、昨日と同じように忍び込もう。あと、行く途中でそろそろ念話も教えるね。疲れるでしょ、筆談って」
『ありがたい』
確かに、疲れる。
紙とペン必須だし。
「じゃ、とりあえず朝ご飯~。いただきまーす」
俺の隣に座って、手を合わせる零。
俺はそろそろ食べ終わるな。
『御馳走様。先に準備しとくぞ』
「うん。わはひもひほひへひふはは(私も急いで行くから)」
わかったから、飲み込んでから喋れ。女子だろお前。
◆◇◆◇◆◇
「念話に必要なのは、イメージ力。まあ、魔力の扱い全般に言えることだけどね」
学校へ向かう途中の、念話教室。
零がとても得意げに話しているのは、人に教えるという行為のせいだろうか。
「まず、魔力を放出する。念話する相手のいる距離によるけど、そんなに必要はないよ。で、その魔力を、紐状にしてみて」
紐状に…………………こうか?
少し放出した魔力を捩るイメージで、細長くしていく。
お、良い感じだ。
「そうそう。良い感じ。その魔力を、念話したい相手の身体…………どこでも良いけど、頭が一番繋がりやすいかな。そこに繋げる感じでやってみて」
この魔力を、零の頭に繋げる感じで?
…………ん~、難しい。
なんというか、すげぇコントロールしづらい。
こう…………かな。
「出来たね。じゃあ、後は考えてることがオートで伝わるから」
「(はぁ!?)」
「お、来た来た。言いたくないことも、魔力が繋がってる間はダダ漏れだから、気をつけてね。私と念話繋げてる時に変なこと考えてたりしたら、潰すから」
慌てて魔力の繋がりを切る。
良い笑顔でどんだけ物騒なこと言うんだ、お前は!?
「急いで切ったって事は、もしかして考えてた?」
全力で否定!
首を横に振ると、疑っているような目で顔を覗き込んでくる。
「ま、良いけどね。それよりほら、着いたよ」
っと、念話を繋いで…………
「(どうやって忍び込む?)」
「うーん…………昨日は警備員いなかったから、普通に正面から入ってたけど」
「(よく見つからなかったな…………)」
「そこは、私の実力だよ」
胸を張る零。しかし、張るほどの胸はない。
「冥夜君? 君、念話繋いでるの忘れてない?」
…………………………あ。
「さっき言ったばかりなんだけどな? 変なこと考えたら潰すって」
「(申し訳ありませんでしたぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!)」
念話で謝罪をしながらの、全力の土下座。
リアルで土下座するシチュエーション、初めてだよ!
「………………まあいいや。人に言われたくはないけど、一応自覚してるし。でも、次はないからね?」
「(イエッサー!)」
ジト目で睨まれていたせいか、冷や汗でシャツがじっとりとしていた。
コイツ、怒らせると怖いタイプだ…………
「今日も校門に警備はいないみたい。とりあえず、敷地内には校門から入ろう。校舎にどこから入るかは、警備の様子を見て考えよ」
「(了解)」
校庭の様子を見ながら、ゆっくりと敷地内に入る。
警備は…………今のところはいないみたいだ。
「(………………おかしくないか?)」
「やっぱり、冥夜君もそう思う?」
「(ああ、警備が薄すぎる。とても2、3日前に殺人があった場所とは思えない)」
「警備をする必要がないのか、それとも………………」
「(警備を、何者かが始末したか)」
「だね」
となると、ここからは警備以上に犯人を警戒しなければならない。
もし警備が始末されたとするなら、俺達も遭遇すれば戦闘は免れない。
「行こう」
零の先導で、校舎内に入る。
どうやら、この数日で校舎内の地図は頭に叩き込んだらしい。
「校舎内にも警備なし…………これは、本格的に怪しくなってきたね」
確かに、いつになく静かだ。
『嵐の前の静けさ』というやつだろうか、嫌な予感がする。
「どうしよう? 昨日はとりあえず、私達の教室付近を調べてみたけど………………」
!
話し掛けてくる零の口を、手で塞ぐ。
俺達の教室から、何か音が聞こえる。
ブチッ…………ブチブチッ…………
ビチャッ…………
聞いているだけで不愉快になる音だ。
何かを引きちぎる音と、何かが滴り落ちるような水音。
「………………いるね」
念話を使わず、ただ、頷く。
犯人か…………
「行くよ。覚悟は良い?」
「(あぁ、バッチリだ)」
「先手必勝、相手に気づかれる前に決めるよ。相手が格上だったら、正面から戦ったらまず勝てない」
それはわかる。大烏天狗と戦ったときに、嫌というほど実感した。
「Go!」
零の合図で、2人同時に走り出す。
教室までは約50メートル。
相手はまだ気づいていないはずだ!
教室に入る。
そこにいたのは、予想だにしない人物。
「先生………………?」
教室の中央で、警備員と思われる人物を『喰らっている』のは、俺達の担任だった。
「アァ? ナンダ、オ前ラカ」
灰色のスーツの男、白井 狼牙は、振り返って呟いた。
その口は、鮮血に染まっていた……………………




