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PS.女に興味が持てない僕を好きになった女の子。(打切り)  作者: しもさん
【第一章】僕は少女に告白されます。
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【第一章】登校前の僕と姉と妹。




「さてと………」


学園の制服に身を包んだ僕は、荷物の中身を確認していた。今日から新学期を迎えるから、念入りに忘れ物がないか調べているのだ。必要最低限の筆記用具と、今日のうちに明日から始まる授業の教科書がバックにあることを確認して、青色のサブバックのファスナーを閉める。


今日から僕は、月乃魅夜つきのみや学園の高校二年生として通うことになる。


この学園は中等部と高等部が一緒の校舎になっていて、エスカレート方式で進学できる進学校だ。10年前に、この月乃宮つきのみや市に新しくできた学園で、校舎の中はとても綺麗だ。トイレに限ってはホット便座にオートライトにオート水道と、本当に学園の設備なのか?と疑うくらいな機能を持っている。下手したら、学園のトイレの方が家庭トイレより多機能な人は少なくないのかもしれない。


ちなみに、月乃宮市と書くのに学園は月乃魅夜と書くのは、建設設立者の気まぐれな思いつきでこうなったらしい。


「ゆ~せ~、ちょっといぃ~?」


「ん、どうしたの、美咲みさき姉さん?」


そんな事を考えていた時に僕の部屋に現れたのは、制服姿の美咲姉さんだ。といっても、姉さんの制服姿は辛うじて着れてますってくらい酷い有様で、ファスナーを閉めるだけのスカートですらまともに履けてない。いや、寧ろファスナー全開まで開いているにも関わらず、膝までスカートが落ちてこないのはどうやって履いたらできるのだろうか?パンツの中に埋め込んでいる形跡もないし………不思議だ。


「上手く制服着れないから着させてぇ~」


「おいおい、制服ぐらい自分で着ろよ………もう三年だろ?」


「だってぇ~」


唇を尖らせ拗ねるポーズをとる姉さん。そんな姉さんに「しょうがないなぁ………」と憎まれ口を言いつつも、しっかりと制服を直しにかかる僕。こんな風に甘やかすから、いつまで経っても自立しないんだよなぁ。と思いながらも直してしまう僕の意思力は、とてもちっぽけで弱いものだと痛感した。


「早くぅ~、学園遅れちゃうでしょ~?」


「まだ時間はたくさんあるから大丈夫です。ってか、遅れる思うんだったら自分でできるように努力しろよ」


「面倒ぉ~」


「何がだよ………。それと、いい加減にその無駄にかわい子ブってる声やめろ。直さないぞ?」


「はいはい、わかりました。わかりましたから直してくださいっ」


「ったく………」


まずは、だらしなく履いているスカートから直すことにした。外から見たら、膝立ちスカートを持ってファスナーを閉めようとする変態に見えなくもない。いや、髪の毛の長さからしたら、男じゃなくて女として見られる可能性の方が高いから、変態とは見られないかもしれない。………自分で言っていて悲しくなってきたが。


ともかく、僕は美咲姉さんのスカートを持ち上げて、姉さんが指定する短めの位置でファスナーを閉めた。その最中に、姉さんの太ももやお尻、お腹や背中といった身体の一部に僕の手が当たることもあるし、姉さんと言うよりは、女性特有の香りーーー男の僕にとってはいい香りに感じるーーーが鼻孔をくすぐったりするし、勿論ながらパンツの形やら種類やら色やらも目視している。だが、僕は別段恥ずかしがることも興奮することもなく、ただ冷静にたんたんと課せられた仕事をこなす。姉さんは、時々身体に僕の手が当たる度にワザとらしく声をあげたりするが、今日は大人しく僕の仕事を眺めている。


それが、僕たち姉弟きょうだい兄妹きょうだいの関係だ。


おそらく、この鹿賀宮かがみや家で一番まともな羞恥心を持ち合わせているのは僕と咲夜姉さんだけだ。それ以外の姉と妹は、なんでもかんでもやたら僕を頼りにしてくる。そして、何故だか知らないが女の子に頼んだ方がいいものばかりなのだ。どうして咲夜姉さんに頼まないのか、それが僕が抱えている鹿賀宮家内の最大の謎だと勝手に思っている。


「スカートの長さ、こんなもんか?」


「うん、バッチしっ!」


「了解。んじゃ、次上な」


スカートの次は、ボタンを付け間違えてるYシャツと羽織っているだけのブレザーとまったく結べてないリボンの修正に取り掛かる。Yシャツに限ってはシワだらけで、明らかにアイロンしていないだろ?とバレバレの仕様だ。本当なら今すぐにでもアイロンをかけたいのだが、生憎そんな余裕はない為仕方なく帰ってからかけようと無理やり妥協することにした。


まずは、付け間違えてるYシャツのボタンを外す作業からはいる。勿論ながら、外す度に肌は露出していき最後のボタンを外した時には、女性が胸元にほぼ必ずつけている下着の一種が顔を出す。ご存知の通り、ブラジャーのことだ。美咲姉さんはピンク色のブラジャーをつけている。無駄にフリフリの装飾がされていて、可愛い系の美咲姉さんにはとても似合っていた。


それから視線を下に向けると、とっても綺麗なお腹に差し当たる。肌荒れも起こしている形跡もないし、無駄な脂肪がついているわけでもない。しっかりと引き締まったお腹は、女性の魅力の一つであるくびれがカッコ良く決まっていた。偏った食生活や、運動不足ではない証拠だ。何より健康体である。こうしたお腹を見ていると、食生活や栄養バランスにこだわって作っている甲斐があると素直に思う。


「うん、とっても綺麗なお腹だな」


「………変態オヤジみたいな発言してないで、早くやってよね?」


む、無意識に言葉に出してしまったのか?これは悪いことをしてしまった。けど、『変態』ってことは僕は『男』として当然な回答をしたのか?………ちょっと嬉しいかも。←いつも女の子扱いされているからなぁ。


と、くだらないことを考えている間も僕は手を動かすことをやめない。素早くYシャツのボタンを付け直すと、今度はリボンだ。Yシャツの襟を立て、後ろに紐を持っていき前で丁寧に結ぶ。他の学校や学園だと元々リボン状に結ばれているものにゴム紐を通すだけと、とてもシンプルで着けやすい仕様になっているのに対して、月乃魅夜学園のリボンは結び目から着用まで全て自分でやんなくてはいけなく、とても面倒で時間のかかるものになっている。これに関しては、どうしても得意不得意が出てしまうと思うので、姉さんが僕に頼ってきても仕方がないと思う。


リボンを着け終えたら、後はブレザーだけだ。さすがにブレザーを着れないと言うほど美咲姉さんは腐っていない。「後は自分でやるよ、ありがとー」と言って、僕の部屋を後にした。


「忘れ物は無かったし、そろそろ行くか」


姉さんの着替えを手伝っていたら、丁度いい時間帯になっていた。左腕につけている腕時計でそれを確認すると、僕はサブバックを持ち出して部屋を後にする。


玄関前には先ほどの美咲姉さんと咲夜さくや姉さん、それに由美香ゆみかかおりがすでに準備を済ませて先に待っていた。


「遅いよ、お兄ちゃんっ!由美香は一番早くずっどっていたんだよぉ?」


「そうだぞー優声?妹を待たせちゃうなんて、ダメなお兄ちゃんだなぁ(棒読み)」


「ごめん、由美香。ってか、弟に制服着させられているあんたは何なんだよ………」


「また美咲姉姉ちゃん優声兄ちゃんに制服着させてもらったの?」


「そうよ?何か文句あるの?」


「文句というか、そろそろ優声に制服頼のまないで、自分で着たらどうですか?」


「咲夜までそんな事言うの?」


「「「「いや、みんな同じ意見だから」」」」


「………マジで?」


「「「「うん、マジマジ」」」」


「………はぁ、しょうがないなぁ。明日からは努力してみますよーっだ」


「そうしてくれると僕も嬉しいよ」


拗ねてしまった美咲姉さんだが、ここで下手にフォローをいれて「やっぱり優声は優しいのねっ♪んじゃ、これからも制服着させてねっ♪」みたいな展開になられても困るので、僕はただ一言呟くだけにした。


「それにしても、華姉ちゃん遅いなぁ~」


「しょうがないよぉ、華お姉ちゃんは何時もお手入れに時間かけてるからぁ」


香の愚痴に、由美香が的確に答える。


そう、この場には美咲姉さん咲夜姉さん、由美香や香はいるのだが、上から数えて五番めの妹、華の姿はない。華はこの鹿賀宮家の中で一番オシャレに気を使う人物であり、その知識は社会人である一葉姉さんや母さんとは比べものにならない程だ。将来はそっち系に進むつもりなんだと、僕は勝手に解釈する。


では、華が降りてくるまでに簡単な状況説明でもしようか。


まず思う事は、何故姉弟/兄妹一緒になって登校するのかというと、僕たちが通う月乃魅夜学園は中高一貫校だからだ。「どうせ同じ学園に向かうなら、全員一緒に行きましょう」と一葉姉さんが最初に言い出してから、卒業してしまった今でも続いている、ある意味この鹿賀宮家の行事みたいなものだ。本当に急いでいる時とかは待たずに行ってしまうのだが、それ以外の時はこうして全員で一緒に登校しないと学園にいった気分にならないくらい習慣づいてしまっている。だから、どんなに一人が遅くなっても必ず待っていて、そのせいで遅刻になろうとも「『赤信号、皆で渡れば怖くないっ!』精神で行きましょっ!」と訳のわからない言い訳にまとめられて、誰も文句を言うものはいなくなった。


「………すまん、遅れた」


そんな事を考えているうちに、支度を終えた華が二階から降りてきた。相変わらずの綺麗な金髪が、癖でカールがかかっていて綺麗だ。化粧されているが、まじかで見ないと化粧がされているのかわからないくらい薄化粧で、逆に綺麗な顔立ちの華にはそれくらいが丁度良く感じる。


「遅いよ、華。みんなもう待ってたんだから」


「………ごめん、美咲姉。久々の学園で時間配分忘れてた」


「本当よ。まったく、私たちに迷惑かけないでくれるかしらん?」


「………そのキモい言い方と弟に制服着させてもらってるあんたに言われたくねぇよ、クズ姉」


「あ、相変わらずの美咲お姉ちゃん限定の悪ぐ………毒舌だねぇ華お姉ちゃん」


華と美咲姉さんはあまり仲がよろしくない。と、いうよりも一方的に華が美咲姉さんを嫌っている傾向にあるのだが。「そんなところが可愛いんじゃない♪」という美咲姉さんの感性はわからないし、わかりたくもない。自分の行動に反省する気が見れないのが理由で、華は美咲姉さんを嫌っている。まぁ、この人が自分から反省するようなところはぶっちゃけ一度も見た事がないから、治すことも治ることも誰も願ってないけど。


「よし、全員揃ったことだしそろそろ行くかっ!さすがにこれ以上長居すると遅刻しちまうからな」


「「「「「(………)了解(ですぅ)」」」」」


そういって、玄関を開けて次々と出て行く姉と妹たち。


「それじゃあ、母さん。いってきます」


まだ寝室で寝ているであろう母さんに向けて一言呟いてから、僕は一番最後に家を出て鍵を閉める。


リビングに朝食と共に置き手紙を置いてきたから、後で電子レンジて温めて食べてくれることを願って僕は学園へ歩き出した。


ってか僕、朝から結構な労働してるなぁ………。




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