【序章】プロローグ
初の恋愛物を書いていきます!あまり期待通りの展開にならないかもしれませんm(_ _)m割とギャグな感じて進めていきたいと考えてますので、よろしくお願いしますm(_ _)m
【〜僕の家庭事情〜】
ーーーピピピピッ!
デジタル時計からなる目覚まし音に、僕は浅い眠りから覚める。僕の朝は早い。軽快なリズムを刻みながら鳴る音を早めに止め、 僕は体を起こす。
ーーー5:40.13ーーー
デジタル時計が示す時間を見て、いつも通りに起きれたことに安堵する。ベットから離れ、隣の住民を起こさないようできるだけ物音を立てないように移動する。
扉を開けるとすぐ右側に階段があり、それを下って洗面所へと向かう。鏡を見ると、まるで女の子のように長い髪ーーー腰にまで届くのではないか?ーーーが寝癖で酷い有様になっていた。本当は今すぐシャワーを浴びたいところなのだが、今は時間がない。よって僕は、部屋を出る前に持参していたヘアゴムで髪を後ろに束ね、水道の蛇口を捻り顔を洗うだけにする。これから新学期が始まる、つまり春先の季節の水道水の温度は、未だに冷たい。お湯を出して洗ってもいいのだが、その行為すら面倒と感じてしまう僕は、恐らくまだ夢の中に囚われているのだろう。
顔を洗い終えた後は、リビングの中のキッチンへと向かう。上下長袖の黒色のスウェットの上にエプロンを着用。その後は、右手に包丁左手に食材を装備する。もう僕が何をするのかわかっていると思う。そう、僕は朝食を作るために毎朝早く起きているのだ。これは僕の日課であり、同時に義務と思っている。
ちなみに、僕の朝食を含めて作る人数分は8人前。人数が多いからたいへんと思っている人、意外にもあまり人数分は労働に関係ない。多少切る食材が増えたり、調味料の調整をおこなわないといけないだけで、調理時間は±10分程度のズレしかないから、そんなに疲労した とは感じないのだ。それ以前に、僕は料理というものが好きだから、沢山作れるという意味では嬉しいといっても過言ではない。ただ、朝が早いということだけきついが。
僕の朝食は昨日のうちから仕込みをしている。どうして?と聞かれたとしても、たいした回答を返すことはできない。ただ、みんなには美味しい物を、栄養のある物を食べて欲しいという一心で作っているので、もし答えるとしたら………なん、だろ?
「………よしっ!」
そんなことを考えながら調理をしていたら、何時の間にか盛り付け前まで終わっていた。集中していたせいか、あまり調理の家庭を思い出せないが、味見してみたところ美味しくできていたので、誤った調理はしていないみたいだ。我ながら、美味しくできたと思う。
朝食のメニューとしては、ワカメ・豆腐といった一般的な味噌汁の中にネギや大根を加えた物、鮭の焼き魚、きゅうりの漬物、白飯といった普通の朝食だ。昨日から仕込みをしている味噌汁は、なかなかいい味を出していると思う。
時計を確認すると、現在の時刻は6時20分。ギリギリ間に合った、という感じだ。一番最初に朝食を食べる人は6時25分に下に降りてくる。今から盛り付けを開始して、丁度いいタイミングといったところか。
僕は素早くお皿を出して盛り付けを開始する。いつも座る位置に料理を運び、いつも飲むインスタントのコーヒーを入れていた、その時にドアが開く音が聞こえた。
「ふぁぁあ………おはよぅ、優声」
「おはよう、一葉姉さん」
眠そうな顔で僕の名前を呼ぶのは、僕の姉の一葉姉さんだ。僕は、この人の為に早く起きて朝食を作っている、といっても過言ではない。もしかしたら、一葉姉さんは何故自分で作らないのか?一葉姉さんが自分で朝食を作ればいいのではないか?と思っている人もいるかもしれないが、少なくとも僕の家族の中でそんな風に思っている人はいない。何故?と問えば、それは僕たち家族の家庭事情のせいだろう。
僕たち家族には父親がいない。7年前、正義感の強かった親父は、1人の小さな女の子を車から守る為に自らが犠牲となって、その事故で死んでしまった。責任感も強かった親父は、死に際に「………すまない」と一言だけ残してこの世から去った。僕たちは、その「………すまない」の一言にどれだけの謝罪の意味が込められていたのか、すぐに理解できた。
僕たちは、親父がいれば9人家族と一般的には非常に大家族なのだ。その唯一の稼ぎ手であった親父がいなくなった瞬間、家計的に僕たちは絶望の淵に立たされた。大家族という理由で働けなく、専業主婦であった母さんが働かくようになり、勿論ながらそれだけで家族8人分を養えるほどの職につける歳ではないし、そもそもバイトすらしたことのない母さんが急に働くなど、到底不可能と言われていたくらいだ。現在は、コンビニの夜勤の仕事をしているものの、「私が働きます」といった時には、家族も親族も大いに驚いたのを覚えている。そう思うと、今立派に働けるまでに成長した母さんは、凄く努力したんだとわかる。いつの日か聞いた、「子供がいるから頑張れるんです」という言葉には、嘘も偽りもないのだろう。それだけ大事にされている僕たちは、本当に幸せ者だ。
だが、さっきも言ったように母さんがいくら頑張っても僕たち子ども7人分の食料と学費、受験料、自分の分までの食糧の確保、土地や家のローン、さらにガス水道といった生活費すべてを賄えるほどの収入はない。幸いなことに、僕らは親族が多かった為に沢山お金を借りることはできたが、いつまでも借り続けることはできないのは僕にもわかる。彼らにも、彼らの生活があるのだから。そんな母さんを少しでも楽させてあげようと、一番上の一葉姉さんは高校を入らずにすぐに働くと言い出したのだが、母さんがそれを許さず「高校だけはちゃんと行きなさい!」と一喝されて、仕方なく高校に行くことにしたのだ。その代わり、必死で勉強して滑り止め一つもなしで名門校に受かり、さらにその学校内でも成績は常にTOPクラス。そして、2年前に学校側の推薦でエリート企業と呼ばれるIT企業に入社した。それにより、家の家計はかなり安定した。まだ安心できるとまではいかないが、何とか親族の人たちにお金を借りずに生活できるレベルまでになった。普段は憎まれ口を叩かれているキャラだが、みんな心では一葉姉さんに心から感謝している。
一番上の一葉姉さんは、今年で20歳になる。姉さんが働いている勤務先は、ここから結構離れている。そのため、僕たちよりも早めに起きなくては勤務先に間に合わないのだ。僕は、そんな一葉姉さんに少しでも恩を返せるようにと、こうして毎朝朝食を作る形でやっている訳で。
「はい、コーヒー。いつものインスタントだけど」
「ん、ありかと。………ズズズー、はぁ。インスタントでも十分に美味しいから、無理して高い豆を買わないようにっ!」
「はいはい、わかってますよー」
このような会話は毎回のように行われているので、もう返す言葉もお互いに同じだ。RPGに出てくるNPCとは、こんな感じなのだろうか?と毎回思うことが、この疑問にたいしての答えだと、僕は気づいている。
僕は一度、「食事は和食なのにコーヒーでいいの?」と聞いたことがあるが、一葉姉さん曰く「和食だからってコーヒーを飲んでいけないと誰が決めたっ!?」と、無駄にキリッと裏で効果音が鳴っているかのような、そんなキメ顔をされてしまっては、こちらからはもう何もいうことはない。てか、できない。
「もぐもぐ………うん、何時もながら優声の作る朝食は美味しいわっ!」
「そう言ってくれると、作っているこっちとしては嬉しい限りだよ」
本当に美味しそうに食べる一葉姉さんを見ると、その言葉通り素直に嬉しい。やはり、料理の楽しみは作っている時よりも、美味しそうに食べている姿を見れる瞬間だと思うのは、僕だけだろうか?
ただ、僕は姉さんに一言だけーーーいや、一葉姉さん一人に限ったことではないけどーーー言いたいことがある。
それは、姉さんの格好だ。え、どんな格好をしているかって?それはとても簡単に説明できる、何て言ったって一言で済むのだから。
ーーー下着姿。以上っ!
服着ろよっ!!と何回も突っ込んだのだが、一向に治る気配が見受けられないので、とうの昔に諦めた。だが、それでも言わせてくれっ、服を着ろよっ!!
「一葉姉さん、また服着ないで降りてきて………」
「だって、面倒くさいし。それに、家には優声以外には男の子いないじゃない」
そう、それが原因の一つだと僕は思っている。僕の家庭は、親父が死んでから男の子は僕だけどなってしまった。「髪が長いから、後ろ姿だけなら女の子だけだね♪」と、二番目の姉、美咲姉さんが言っていたのを思い出した。まぁ、確かに髪長いけどさぁ………。
と、そんなことじゃなくて、僕の家族は男:女=1:7という悲しい比率で成り立っている。僕たちの親族は、どうやら昔から女系家族らしく、親族の中でも僕だけが唯一の男の子だ。「見た目は女の子だけどね♪」と、頭の中で美咲姉さんの声が聞こえた気がして、思わず「うっセーよっ!」と返してしまった。
僕の家族は、僕を基準に考えると姉が3人妹が3人いる。一葉姉さんが一番上で、それ以外は順に高校三年生の美咲姉さん、同じ高校二年生の双子の姉咲夜姉さん、一つ下の高校一年生の妹華、二つ下の中学三年生の妹由美香、四つ下の中学一年生の妹香、そして母さん加奈子と僕という家族構成になっている。
だからか、彼女たちは家の中では全くと言っていいほど『羞恥心』というものが感じられないのだ。下着姿で廊下をウロウロ歩くわ、食事を食べるわ、最悪裸で歩き回ることだってある。いったい僕がどれだけ気苦労を重ねているのか、彼女たちはわからないだろう。
「そういう問題じゃないくて、嗜みの話をしているの。家でどんな格好をしていても文句は言えないけど、最低限の服は着ようよ」
「えぇー、今更優声に恥ずかしがってもしょうがないじゃない?一緒にお風呂だって入ってるしー」
「それは、姉さん達が勝手に入ってくるからでしょ………?」
「でも、私たちの裸は何度も見てるでしょ?」
「む、そりゃあ嫌というほどに見てますが」
「なら、今更下着姿見られても恥ずかしがることはないっ!」
「………そ、そう………か?」
ヤバイ、なんかいいようにまとめられた感が半端ないぞっ!?思わず納得しかけだじゃないか!
「って、そーゆー問題じゃないっ!」
「じゃあ、どういう問題よ?」
「まだ春先きたばかりだろ?そんな薄手の格好でウロウロしてたら風引くだろ!ただでさえ、一葉姉さんには苦労かけているんだから、できるだけ常に万全の状態にしておきたいんだよ。なのに、夏ならまだいいとして春や秋、時には冬まで下着姿になるのはどうかと思うよ?他の姉さん達や妹にも同じようなこと言ったけど、全然言うこと聞いてくれないし………。何でこっちが心配しているのに、バカみたいじゃないか」
みんなが一つ勘違いをする前に、僕はそれを正そう。僕は、家の中ではどんな格好をしていても構わないと思っている。つまり、家の中だったらどんなに羞恥心のない姿をしていても気にしないし、それは個々の自由であるから、家という縛りの少ない環境で羽目を外すことぐらいいいと思う。だから、僕が感じているのは羞恥心のなさではない。それではなくて、その格好によって引き起こされるもの、つまり体調の方を気にしているのだ。何故だか知らないが、どんなに寒い日でもうちの家族は薄手な格好でウロウロするのだ。赤ら様に寒そうにしているにも関わらず、上一枚すら着ようとしないその頑固さは、違うところに生かして欲しいものだ。よって僕は、常にみんなの体調が万全なのかそうじゃないのか、それが気がかりでいつも気苦労しているのだ。
「………優声、マジでそれだけ?」
「それだけだけど?逆に、それ以外に何を心配するのさ?」
「えっ!?あ、うんそうだねっ!………ちょっと自分の体に自信なくすわ」
最後の方に言った言葉は聞き取れなかったが、その後ブツブツ呟きながら食事をとっている様は、とても暗い雰囲気をしていた。何をそんなに落ち込んでいるのかと尋ねようとした時、「もしかして、不能なのではっ!?」と大きな声をあげて僕に迫って来たが、僕は何を言っているのか理解できなかったためにスルーする方向で決めた。
朝食を食べ終えた一葉姉さんは、一旦自分の部屋に戻り、すぐに仕事用のスーツに身を包んだ。自分の姉さんだが、一葉姉さんはかなりの美人だと思っている。僕と同じくらいか、それよりももう少し長い暗めの茶髪が、癖で若干カールがかかっている。一般的にいうところのOLスーツを着る一葉姉さんは、ヤケに色っぽく感じてしまう。それは、薄めにメイクしていることも否めないが、それ以前にとても『女』という身体つきをしているからだと思う。
「優声っ、どう?ちゃんと決まってる?」
「うーん、どれどれ………」
一葉姉さんは、いつも鏡で自分の姿を確認する代わりに、僕で確認をする。姉さん曰く、鏡よりも信頼できるということらしい。僕は別段断る理由がない為、この行事ももう日課となっている。直すところがあれば直しているのだが、今日は特に目立ったものはなかった為、適当に誇りを叩いて終わった。
「………はいっ、これで大丈夫だよ」
「ありがとー、優声っ!それじゃあ、私はそろそろ行くね」
「あ、うん。いってらっしゃい、7時回りそうだから、急いでね。気をつけて」
「それじゃあ、いってきますの『チュー』はぁ?」
「ハグで勘弁してくれ、姉さん」
「もう、しょうがないなぁー」
そう不満を漏らしつつも、とても満足そうな顔で両手を広げて待つ。僕はそっと姉さんを引き寄せて、優しくハグする。因みに、一葉姉さんはかなり妥協して僕とハグすることで収めてくれている。最初の方は、本気で唇を奪いにくるもんだから、俺が何とか説得してハグで済ませてくれているのだ。こうして、僕のファーストキスは守られている。
「姉さん………そろそろ時間」
そういうと、とてと不満そうな顔でーーーいや、欲求不満な顔つきだなあれはーーー僕から離れる。さっきまで僕を支配していた柔らかい感触といい香りがなくなり、少し寂しい気持ちにるが、いつまでも求めていたら姉さんに迷惑がかかる。
「それじゃっ、本当にいってきます!」
「いってらっしゃい」
姉さんは玄関のドアを開け、こちらに一回微笑みかけた後に家を出た。家計がギリギリな僕たち家族に、車などの高級品を買えるわけでもなく、姉さんは歩いて駅まで向かう。チャリはあるのだから、それで行けばいいと思うのだが、一葉姉さんはチャリをあまり好まないらしく、いつも15分かけて駅へと向かう。
「さて、と………」
一番の姉さんはもういない。だが、まだ家には2人の姉と3人の妹と母親がいる。その人たちの為に、僕はまだやらなくてはいけないことが沢山ある。
「おはよぉ、優声」
「優声、はやく飯っ………」
「………はょ、あにき」
「おはようですぅ………お兄ちゃん………」
「おっす、兄ちゃんっ!」
一番最初に声をかけてきたのは、僕の双子の姉の咲夜姉さんだ。次は美咲姉さんに続き、華、由美香、香の妹三人集だ。因みに、今彼女たちの格好は、
ーーー咲夜姉さん、上下灰色のスウェット。
ーーー美咲姉さん、Tシャツ一枚。下着着用なし。
ーーー華、裸Yシャツ。
ーーー由美香、裸。
ーーー香、ホットパンツのみ。上なし。
うわおっ!咲夜姉さん以外全員ダメじゃんwww思わず頭の中で笑ってしまった………。取り敢えず、華と由香里と香と美咲姉さんには、無駄だろうけどもう一度キツく言っておこう。風邪引くからちゃんとした服で寝なさいって。とくに、由美香には………何故裸?
「はぁ………たくっ、取り敢えずリビング行こう。朝食出すからさ」
僕はあちこち文句を言ってくる姉妹達を押しながら、リビングへと向かった。
こうして僕の一日は始まる。僕は、気が休まる日を常日頃願っている。あぁ、どうか神様、彼女たちがちゃんとした服装で寝てくれますように………。