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プロローグ

「人間とは何者なのか? なぜ彼らは誰もが常に違うのか? もし全員が同じだったなら、何が起こるのか。思考の型も、振る舞いも、彼らが行う営みも常に異なり、謎に満ちた模様、あるいはスケッチを残していく。」記録:ハンサル・ジョルリモ。


 ハンサルはいつも、自分の人生とは関係のないことばかり書いてしまう。まあ、少しは繋がっているのかもしれない。ハンサル・ジョルリモ、サムリノの街で育った少年。

 そこは、普通の人間よりも狂った思考を持つ人々が暮らす環境だった。


 ハンサルはノートを閉じ、ゆっくりと立ち上がり、慎重に歩き出した。無意識のうちに、彼はコートツリーまで何歩費やしたかをいつも数えている。

 数え、数え続け、一歩、また一歩と、ハンサルが手の中のストップウォッチのボタンを押すまで。カチッ。


「10歩、13秒」


 あまり完璧ではない。3秒のずれ――かなり悪い。


 毎日欠かさず行っている儀式を終え、ハンサルはそこに掛かっていた上着とフェドーラ帽を手に取った。部屋には鏡があったので、彼は少しだけ時間をとって、帽子をわずかに横へ傾けた。

 今日の私のスタイルには、これで十分だろう。彼はドアを開け、そこから外へ歩み出ることにした。


 ハンサルは空を見上げ、工場が連なる一帯から立ちのぼる黒煙の群れで埋め尽くされた空を見つめた。彼の耳は、休むことなく動き続ける蒸気機関の音を捉え続けていた。

 前庭には古びはじめた郵便受けがあり、その木の土台はもろくなりはじめていて、ハンサルが中から手紙を一通取り出すと揺れるように見えた。それは、中央を赤い蝋で封じられた手紙で、蝋の質感はすでに固まっていた。


 ハンサルが手紙を開けるより先に、新聞配達の少女が通りの端から彼の名を呼んだ。少女は非常に大きな声で叫んでいた。


「ハンサルさん!!!! 新しいニュースですよ!!!」


 ハンサルは目の前にある声のほうへ顔を上げ、言った。


「こちらへ来たまえ、お嬢さん。君の新聞を買いに、私はそちらへ行くつもりはない」


「はいはい、待ってください、私がそちらへ行きますから」と少女は言い、用心しながら道を渡った。


「それで、旦那様、どんなニュースがお望みですか? また事件ですか? それともスキャンダル?」


「……前回のような取るに足らない事件を持ってきたのなら、やめておくことだ。私はもう、そういうものを読むのにはうんざりしている」


 ハンサルは地面を足でとんとんと叩きながら、目の前の少女から視線をそらした。実際の会話は今、彼の目の前で行われているというのに、彼は周囲の様子を観察していた。


 少女はハンサルの言葉を聞いてただ微笑み、すべすべした手で、抱えていた新聞を一部ずつゆっくりとより分けていった。


「今日はやめておくよ。私はこれからすぐ酒場へ行くつもりだ――」


「待ってください、ハンサルさん、これは最近のなかでもかなり新しい事件のひとつなんです。新聞社では、皆さんがこの奇妙な事件の話をしています」


 少女はそれから一枚の新聞紙を差し出し、ハンサルはそれをさっと受け取ると、残された左目で注意深く、一行ずつ、一語ずつ、ひとつも見落とさずに読んだ。

 記事の要点は、この街の政治家のひとりが尋常でない死に方をした、というものにすぎなかった。遺体は警察署の隣を流れる溝で発見された。


 奇妙なことに、地元の探偵たちは、その政治家は全身に火傷を負って死んだものと推測していたが、この事件の不可解さは、証人である地元の警察官たちが、事件の時から一瞬たりとも焦げた臭いを嗅いでいない、という点にあった。


「それで……ハンサルさん、このお嬢さんを、報酬を待たせたままにしておくなんて、まさかそんな薄情なことはなさいませんよね?」


 ハンサルはゆっくりとコートの内ポケットに手を入れ、ポケットの中で重なり合う硬貨の形を手探りしてから、慎重にそれを取り出した。ディリーと刻まれた銀貨が、ハンサルの手のひらに現れた。


「ニュース二つにディリー銀貨一枚?」


「ふう……。その記事以外に、いい事件はなさそうだ」


「君はいつも言い訳ばかりだな。取りたまえ」とハンサルは言い、その記事の報酬を渡した。


 少女は、かなり大きな報酬を受け取って、ただ嬉しそうに微笑み、ハンサルに礼を言うと、その場から歩き去った。

 ハンサルは、少女の背中が、歩道沿いに立ち並ぶガス灯に遮られて、ゆっくりと見えなくなっていくのをただ見つめていた。

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