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午前三時、影が息をする。
壁の向こうから、確かに“耳を当てる”音がした。
こつ、と硬い何かが当たる音。
そして――呼吸。
すう……はあ……
今度は、壁の向こうからだ。
僕は、理解した。
立場が、入れ替わったんだ。
翌朝。
目覚ましが鳴る前に目が覚めた。
体が妙に軽い。
鏡を見ると、顔色が悪いのに、目だけが妙に冴えていた。
そして気づく。
壁の向こう――空室のはずの部屋から、生活音がする。
カーテンを開ける音。
足音。
水道の流れる音。
昨日まで何もなかったはずなのに。
管理人に聞いた。
「隣、誰か入ったんですか?」
管理人は怪訝な顔をした。
「え? ずっと住んでるでしょう。ほら、あなたの隣の……」
名前を言われた。
それは、僕の名前だった。
その夜。
午前三時。
今度は、隣の部屋から“僕の声”が聞こえた。
「……気づいた?」
僕は、壁に耳を当てた。
向こう側でも、同じように耳を当てる気配がする。
壁一枚を隔てて、
まったく同じ呼吸。
すう……はあ……
そして、同時にささやく。
「どっちが、本物?」




