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魔女の一族に生まれたけど、叔母達に家族を皆殺しにされて家を燃やされて神器も奪われたから、兄妹で『怪盗』になって奪い返すことにした  作者: ぽよみ30号
プロローグ

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クリスマスイブの朝

12月24日 7時15分


──それは、すべてが壊れてしまう前日の朝だった。


「んー……」


スイはもぞもぞと布団の中で動き、瞼に当たる光から朝を察知した。

そして頬に当たる空気の冷たさから、今日は布団から出るのに難儀する朝だということも理解した。


「…………」


片目だけをチラリと開けて目覚まし時計を見ると、時刻は7時17分。いつもの起床時間を17分も過ぎている。このまま起きなければ小学校に遅刻してしまう。


「ふっ……」


しかし、彗は不敵な笑みを浮かべた。

何故なら今日から彼女は無敵。昨日、2学期最後の終業式があった。小学一年生の彼女にとっては初めての冬休み。朝起きて寒い中自分で学校まで歩いていくという行為がこんなに苦しいものだとは、去年まで彗は知らなかった。


だが昨晩、ベッドに入る前に彼女の宿敵である目覚まし時計の設定時間を10時に設定を変えてやった。もう明日からこいつは毎朝私を苦しめることができない。そう思うと清々した。


忌々しい平日の寒い朝とはお別れし、しばらく二度寝三度寝が待つパラダイスのような生活が──


バサッ!!


──突然、掛け布団が剥ぎ取られた。

ピンク色のパジャマに包まれた彗の小さな体を守っていた優しい布団は消え、冷酷とも言えるほど冷たい空気が彼女の体に突き刺さる。


「私のパラダイスがああっっ!!!」


「何言ってるんだ、彗。早く起きろ」


「何すんのっ!お兄ちゃんっ!私は今日から毎朝、ぬくぬくパラダイス二度寝を味わうんだよっ!!」


「母さんが冬休みも朝はいつもと同じ時間に起きろって言ってただろ。健康の基本は生活習慣だって」


ヨイは妹の言葉から目覚まし時計の設定が変えられていることを察し、彼女の目覚まし時計を手に取った。


案の定アラーム時刻は遅い時間になっていたので、6時30分に変更した。


「ギャー!ちょっ、何してんの!もともと起きる時間は7時でしょお!?」


「どうせ、彗は目覚ましが鳴ってから30分はモゾモゾクネクネしてるだけだろ。彗が7時に起きるならこの時間に鳴らさないと」


「モゾモゾクネクネぇ?妹が本気で苦しんでるのによくそんなことが言えるね?」


彗はうぅー、と声をあげて兄を睨みつけた。


「私が魔法を使えるようになったら、お兄ちゃんなんて簡単にやっつけて……泣かしちゃうからね!」


「はっ、彗が魔女になるのなんて何年先……いや何十年先の話だよ。それ」


月詠家は、代々魔女が繋いできた一族だった。

彗も、いずれ自分が魔女になるのだと信じて疑っていなかった。


「というか朝ごはん出来てるぞ。早く降りてこいよ。今日はおばさん達も来るんだから」


宵はそう言うと、彗から剥ぎ取った布団を子供部屋のドア近くの床に投げ捨てた。

ここで妹に布団を返すとそのままくるまって眠るに決まっている、と推測をした兄の行動であった。


彗は兄の推測の正しさに苛立ち、二段ベッドの下段から這い出るように降りた。


「自分が四年生だからって威張っちゃって……ちょっと先に産まれただけのくせに……」


彗はブツブツと兄に文句を言いながら、床に置かれて冷たくなった布団を拾い、ベッドに投げ捨てた。

兄の作戦通り、冷たくなってしまった掛け布団にもう一度くるまりたいという気持ちは生まれない。


「ベッドだって、私が上が良かったのに……」


彗は兄に腹を立たせながら、二段ベッドの上段を見た。

3歳年上の兄、宵は何かと妹である彗に偉そうに指図をしてくる。そのくせ、彗の話はあまり聞いてくれない。彼女はそのことに日頃から苛立っていた。


「そうだ」


彗はへへ、と口角を上げて目を細め、二段ベッドの梯子を登った。

そして兄の布団の上をシャカシャカと這うように進み、枕元に置いてある目覚まし時計を手に取った。


「夜中の2時に爆音が鳴るようにセットしてやろー……っと」


兄の目覚まし時計は、自分のものと色違いで両親に買ってもらったものなのでセット方法は知っている。


そして「爆音」というのは比喩ではない。

この目覚まし時計にはいくつもの音のパターンが入っており、鳥の囀りのような優しいものから、爆発音といった激しいものもある。

一度聞いたことがあるが、こんなに激しい音で毎朝起こされたら寿命が縮んでしまう、と思って採用しなかった。


「音量も最大にして……よしっ!ざまあみろ」


彗はこの目覚ましが鳴るとき、下で寝ている自分がこの音で驚かされる可能性までは考えることはなく、上機嫌のまま子供部屋を出ようとした。


「………あれ?」


彗は、自分でも何故そんな行動をとったのかわからない。

しかし彼女は足を止め、自分が暮らしている子供部屋を振り向いてしまった。


何故かもうここには……この優しい日常には、戻ってこれない気がした。


「……気のせいか!」


彗は再び体の向きを変え、階段の方へと走り出した。

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