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魔女の一族に生まれたけど、叔母達に家族を皆殺しにされて家を燃やされて神器も奪われたから、兄妹で『怪盗』になって奪い返すことにした  作者: ぽよみ30号
一つ目の神器

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仮に卵しか食べ物がない国があったとしても、鳥肉はあるはずだ。鶏はいるんだから


「お兄ちゃん、いきなり怒鳴ってごめん」


彗はアパートに戻り、パソコンを操作していた宵に向かって頭を下げた。


「……」


宵はしばらく口をつぐんだまま彗のことを見つめてから、口を開いた。


「俺も、すまなかった。彗の気持ちを無視した発言だったと反省している」


宵は「あと……」と付け加える。


「怒鳴ったことだけではなく、首を掴んで宙吊りにしたことと、俺の背中に座って背骨を海老反りにしたことも謝ってほしいんだが」


「いや、それは絶対に謝らない。それに関しては私が正しいから」


「どういう教育を受けたら、あの酷い暴力が『正しい』という価値観になるんだよ」


彗は「ふっ」と笑い、言い返した。


「お生憎さま。私を教育してくれた人は7歳の頃からは一人しかいなかったの。ね、お兄ちゃん♪」


「もしかして俺のせいだと言いたいのか?」


二人は互いに見つめ合い、ニヤリと笑った。

既に先ほどまでの怒りの感情は二人とも消えていた。


「飯にしよう。カレー作っておいたから」


「やった!カレー好き!」


宵がそう言うと彗は嬉しそうに笑い、キッチンの方へと小走りした。


「明日から、飯は交代で作るんだぞ」


「うん。任せて!私も料理は練習したから色々作れるよ!卵焼きとか目玉焼きとかスクランブルエッグとかだし巻き卵とか!」


「なんだ?卵しか食べ物がない国から来たのか?」


「は?調味料とかもあったし」


「いや質問の本質はそこじゃねえよ。あとなんでちょっとキレてんだよ」


───────────────────


二人がカレーを食べ終えた後、彗は「私がやるよ」と皿を洗い、片付けた。


その間に宵はテーブルを拭き、食事の片付けを終えた二人は改めてテーブルを挟んで向かい合った。


食事が終わったら今後について話し合う、と決めていたわけではないが、二人ともそのつもりで座っていた。

二人の間には、兄妹として言葉にしなくても通じる事もある。


「……お兄ちゃん。さっきは私のことを心配して、危ない事はやめようって言ってくれてたんだよね」


「………」


宵は少し驚いた。

とても感情的で直感と欲望のみで生きていると言っても過言ではない妹が、自分の言葉の裏を理解してくれるのはとても稀だからだ。


人間として単純に成長したのか、それとも良い友人に相談にでも乗ってもらったのだろうか。


「ああ、そうだ。正直俺は自分が死ぬのも当然嫌だし……たった一人の、最後の家族を……彗を失うのは、絶対に耐えられない……と思う……」


「……っ」


彗は少し驚いた。

常に冷静で論理的、機械の様な兄が自分の感情を素直に口にするのはとても稀だからだ。


「でも本当にごめん、お兄ちゃん。私はどうしても取り返したい。おばあちゃんの、お母さんの……月詠の魔法を」


「……」


宵は何も答えず、彗を見つめたまま小さく頷くだけだった。

まずは聞きたかった。妹の考えと、その素直な気持ちを。


「私は30代目になれたかどうかはわかんない。自分の魔力光も何色か知らないし……」


魔力光。それは月詠家に生まれた娘が神器に魔力を込めた際に出る光のこと。

その色が月光と同じ色の娘が、代々月詠家の家督を継いで「月詠の魔女」として神器と魔法を引き継いできたのだ。


本来であれば彗は10歳の頃に神器を使って魔法の修行を始めるはずであったが、7歳の頃に事件が起こったため、彗は魔法を使ったことがない。


だから彗は自分の魔力光が何色かも知らず、自分に継承権があるかもわからない。


もしかすると両親はあの後も子供を作るつもりで、その後に産まれてきた妹が月光色の魔力光を持ち、彗はあの叔母達同様に継承者じゃなかったかもしれない。


「それでも!私はお母さんの代で『月詠の魔女』が終わりなんて嫌なの!みんなを優しく癒すあの魔法は、この先の未来にもずっと、ずっと、繋いでいきたい……」


「……」


宵は妹の目を真っ直ぐに見つめたまま、口をつぐんでいた。

完全に同意見で、この話に対して反論は何も無いからだ。


平安時代から現代まで伝わってきた月詠家の魔法が終わる。


それは魔法も使えない、当然継承権も持たない男児として産まれた宵にも、到底耐えがたい事であった。


彼もまた、先祖が人々を救ってきた偉大な魔女であり、自分がその末裔であることを誇りに思っていたのだ。


「……だが、わかっているよな」


「うん。危ないんだよね」


「……ああ」


先ほど宵が彗に話した通り、神器を奪い返すということは叔母達が自分達の存在に気付くということであり、気付かれたら二人を始末しに来る可能性が非常に高い。


神器を持った魔女に襲われる恐ろしさは、彼らは嫌というほど覚えている。


しかも、今回は自分達を守ってくれる優しい母親はいない。


自分達の力だけで、あの恐ろしい3人の叔母に立ち向かわなければならないのだ。


「……神器を1つ持った母さんでさえ、2つ持っているあいつらに勝てなかったんだぞ」


「……うん」


10年前、彼らの母親である秋奈は満月鏡1つで、2つの神器を持つ3人の姉妹に魔女としては勝利した。

秋奈は姉妹から神器を全て取り上げた後、夏波の拳銃による不意打ちで命を奪われたのだ。


しかし先に逃がされた宵と彗はこのことを知らない。

秋奈は3人の叔母に敗北し、命を奪われたと思っている。


「……何もしなければこのまま暮らせる。平和で、今日みたいにカレー食って、明日は何しようかとかどうでも良い話をして、適当に笑いながら暮らせるんだ。……家族で」


宵は自分の部屋に彗が転がり込んできたとき、彗と同様に嬉しかった。

あまり感情を表に出さない彼だが、再び家族で暮らせる喜びを静かに噛み締めていたのだ。


それなのに、妹がその平和を壊してでも進もうと言ってきた。


もう二度と、家族を失いたくない。

そう思って宵は反対したのだ。


「……それでも、やるのか。彗」


「10年前にも言ったでしょ。お兄ちゃん」


彗はスゥ、と息を吸い、兄の目を強く見つめながら言った。


「月詠の魔女は……ここに一人だけ、まだ生きてるよ」


自分の魔力光の色は知らない。

継承権があるかもわからない。

だが、『月詠の魔女』があんな叔母達に破壊されて終わりという結末だけは、許せない。

例え、殺されたとしても。


「…………………」


妹の言葉を聞いた宵は少しの間黙り込んで目を閉じ、静かに息を吸い込んでから、再び目を開いた。


「……….わかった。一緒にあいつらから神器を取り返そう。彗」


「そうこなくっちゃ!」


ついに宵は首を縦に振り、魔女の末裔の兄妹は家の再興の決意を固めた。

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