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魔女の一族に生まれたけど、叔母達に家族を皆殺しにされて家を燃やされて神器も奪われたから、兄妹で『怪盗』になって奪い返すことにした  作者: ぽよみ30号
プロローグ

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秋奈の覚悟



「…………よかっ、た………」


三人がいなくなった静かな寝室で、秋奈は一人呟いた。


この姉妹達との神器を使った戦いは、秋奈には二つの目的があった。


一つは、戦いに勝利にして姉妹を説得して改心してもらうこと。

そしてもう一つは、子供達を無事に逃すこと。


片方は達成できなかった。


しかし──


「宵くん……彗ちゃん……だ…い、す……き……」


秋奈が最期の言葉を口にしたとき、秋奈が最後に使った満月鏡の魔法の効果が消えた。


満月鏡は冬子が持っていってしまったが、神器の魔法は魔女の体からある程度離れても持続する。

魔法の効果が消えるのは魔女の意識が魔法から切れたときと、別の魔女が神器に魔力を込めたとき。

冬子は満月鏡は持っていったが、すぐには使わなかったので秋奈の魔法は秋奈が絶命するまで続いた。


秋奈の魔法が終わったとき、頭から血を噴き出していた子供達の死体は優しい月光色の光に包まれ、犬と猫の人形に姿を変えた。


それぞれの人形の頭に、弾丸が貫通した穴が空いている。


──秋奈は、もう一つの目的だけは確かに成し遂げたのだ。


────────────────


「……ねえ、お母さん大丈夫かなぁ……」


「しっ。声を出すな。俺達はとにかく、言われた通りにここにいるしかない」


ここは、月詠家の前にある公園。

秋奈の魔法によって体を透明にしてもらった二人は、母と叔母達との戦闘が始まってすぐに寝室から逃げ出し、家の前にある公園まで裸足のまま逃げてきたのだ。


あのときの秋奈は、叔母達の悪事を察してからすぐにスマートフォンに文字を打ち込んで子供達に画面を見せた。


『にげる じゅんびを して。

おばさんたち、わるいひとに なっちゃったみたい。

おかあさんがやっつけて、いいひとに もどすから、ふたりは たたかいが はじまったら、こっそりにげだして、こうえんの しげみに かくれてて』


彗にも読めるようにひらがなで書かれたその文章を読んだ宵は、すぐに大きく首を振った。


勝てるわけがない。


神器は人を癒せる素晴らしいものだが、悪い心を持った人間が利用すればあれほど危険なものは無い。

しかも、母の手元にあるのは戦うとすれば最も弱いと思われる満月鏡だけ。

一緒に透明になって、三人で逃げたい。

そう願いながら何度も宵は首を振った。


彗も目に涙を浮かべ、同じように首を振った。


秋奈は少し困ったような顔を浮かべたあと、再びスマートフォンに文字を打った。


『だいじょうぶ。おかあさんは、いちばん すごい まじょだから。

ぜったいに むかえにいくから、さきに こうえんに かくれてて。

でも もし、さきに いえから でてきたのが、おかあさんじゃなくて、おばさんたちだったら、おばさんたちが いなくなるまで まってから、なるべくとおくまで にげなさい。

そして、にどと「つくよみ」ってみょうじをなのっちゃダメ。』


読み終えた彗は秋奈に飛びつき、抱き締め、絶対に離れないという気持ちで腕に力を込めた。


まだ7歳の彼女だが、母親の覚悟を感じてしまったのだ。だからこそ、母を一人で置いてはいけなかった。


彗は自分のパジャマが強く引っ張られるのを感じた。振り向くと、宵が大粒の涙を溢しながら自分を見ている。口だけを動かして、「行くぞ」と言っている。


宵も同じく、母親の覚悟を感じた。

彼は妹とは違い「だからこそ、ここにいてはいけない」と考えた。

自分達がいると母は戦えない。

三人とも助かる確率を少しでも上げるために、自分は妹を連れて先に逃げなければいけないのだ。


強い目をした息子、泣きじゃくる娘。

それを見た秋奈はまたスマートフォンに文字を打ち込んだ。


『多分、お父さん達はもう殺されてる。彗ちゃんがそれを見ないように、目を瞑らせて、宵くんが背負っていってあげて。もし私に何かがあったら、これからは宵くんが彗ちゃんを守ってあげてね』


秋奈が画面を宵に見せると、彗もすぐに覗き込んだ。

しかし小学一年生の彗は『父』と『見』と『目』以外の漢字は読めず、文章の意味はわからなかった。


それを読んだ宵は一瞬言葉を失ったが、震えながら静かに頷いた。


秋奈は最後に、もう一度ひらがなのみで文章を書いて二人に見せて微笑んだ。


『もしも、もしもだけど、おかあさんがでてこなかったら、ふたりでたすけあって、なかよくくらしてね』


─────────────────────


そうして戦いが始まってすぐ、宵は彗を連れて家を出た。

母の言いつけ通り裸足のまま家を出て、公園の茂みに彗と隠れた。


「あっ、玄関が……」


ここに隠れてから10分ほど経ったころ。

家の玄関が開くのが見えた。


「ッ………!」


出てきたのは、三人の叔母。


宵は絶望した。叔母達が出てきたということは、母は敗れたということ。


「あ、あっ、ああああっ………」


そして兄妹は、さらなる絶望を突きつけられた。

体が、透明ではなくなり始めたのだ。


母が最後に自分達に満月鏡でかけてくれた魔法が解けた。

もし生きているのならこの状況で魔法の解除は絶対にしないはず。

つまり母は、月詠秋奈はもうこの世にはいないのだ。


「あ、お、お母、さぁんっ……モゴッ」


宵は必死に嗚咽を抑えながら、妹の口を塞いだ。そして自分の口ももう片方の手で塞いだ。

そうしないと、今にも泣き叫び出してしまいそうだった。


家から出てきた叔母達はそれぞれが手に何かのタンクを持ち、家の周りをグルグルと歩いている。


今にも殺してやりたい気持ちを抑えながら、宵はその様子を見ていた。


そして玄関付近に冬子が座り込んで何かをしていると思ったら、突然大きな火柱が上がった。


冬子は「あちっ!あついっ!」と叫びながら火柱から離れ、三人は家の敷地外に出た。


春華、夏波、冬子の三人は、月詠家に放火したのだ。


火はみるみる回り、宵と彗が生まれ育った家はすぐに業火に包まれた。


「あっ、あああああああっ!!」


彗は思わず大声をあげたが、月詠家と公園が少し離れていることと、家が燃える音が大きいのか叔母達はこちらには気が付かない。


宵は、噛み切った唇のせいで口の中に血が溢れるのを感じた。


数分後には火事を知った近所の住人が集まってきたが、三日月ノ玉を持った春華が『何も起きていないです。皆さんは何も気が付かずに家で寝ていました』と伝えると、彼らはその言葉を「真実」として受け入れ、「何もなかった」と何度も呟きながらそれぞれの家へと帰った。


叔母達はその後、自分達が乗ってきた車に乗り、その場を去った。


親を殺し、妹夫婦を殺し、生まれ育った実家に火を放ち、甥と姪を殺したつもりで──。

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