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第二話

 馬車に揺られること2日。カルマン領のカルマン公爵邸までの道のりは案外悪くはなかった。のどかな草原と森林を眺めながら隊商宿で休憩を取りながらゆっくりと公爵邸まで向かっていった。そして家を出てからゆっくり眠れるようになったおかげで今朝顔を洗ったときに水面に映る顔には大分クマの薄くなった自分がいた。

 急に舗装がなくなったときはどうしたことかと思ったがしっかり隊商宿はあるのは意外だった。。

 しかしよく考えてみると舗装よりも安全に寝泊りできる隊商宿のほうが大切なためそちらを優先して舗装まで手が回っていないのだろう。

 その証拠にカルマン公爵邸まであと少しのところで急に大きな河が現れたこんなに広く水量が多い河川は王国のどこを探してもないだろう。その河川にはとても立派な石造りの橋が架かっていた。インフラのかけるべきところはしっかりとかかっているのがよくわかって見えた。この河川を渡らないと公爵邸とその領都に至れないのだとしたら、もしかしたら公爵閣下はとてもしっかりとしている方なのかしらと思った。

 ふと前を見ると荘厳な山脈が顔をのぞかせておりあの膝元に新たな住まいがあると思うと長かった旅の疲れが出てきてしまい少し睡魔に飲まれてしまった。


「お嬢様到着いたしました。降りてください。」

「あら、寝てしまったのかしらごめんなさいね。」


 どうやら寝ている間に到着してしまったらしい。御者が荷物を降ろしてくれていたようで公爵邸の門の前には私の少ない荷物が並んでいた。


「私はこれでロシェール領に帰らせていただきます。お嬢様どうかお元気で。」


 御者は私を降ろしてそう言うと馬車を走らせて帰ってしまった。父親にはお前につける使用人を雇う金がもったいないからとつけてくれた使用人は一人もいない。


「ここが今日から私が住む場所なのね。」


 ひとりで置いてかれてしまった私は公爵邸を見た。


「想像よりもなんというか小さめの邸宅なのですね。」


 なにせ暴君と呼ばれる独裁者なのだからもっと大きな屋敷を構えているのかと思っていたが実際にはロシェール家よりも二回りも小さい町役場を少し大きくしたようなサイズ感である。しかし見た目は美しい白い邸宅で気品の良さを感じられた。


「それにしてもきれいな土地ね。」


 公爵邸は小高い丘の上に立っているようで下には小さな町が見える。その先にはだだっぴろいが人の手が加わってない自然本来の美しさを残した草原に遠くには美しく雪をかぶった山々と今日わたってきた大きな河が見える。

 ロシェール伯爵領も自然豊かな場所だったがここには自然の力強さを感じる。


「さていつまでも眺めていられないわ。そろそろ行きましょうか。」


 この自然にもらった感動を勇気に変えて門にかけてある小さな鐘をチリンチリンと鳴らした。

 鐘を鳴らして数十秒後公爵邸の扉が開き一人の執事服を着た男性が門へと向かってきた。


「初めまして。この家で執事を務めさせていただいております。ギヨームと申します。どちら様でしょうか?」


 美しい所作で自己紹介をされたがどこか怪しまれているようだ。それもそうだろうまさか伯爵家の長女が使用人の一人もなしに輿入れするとはとても思えないだろう。


「ギヨーム様自己紹介ありがとうございます。わたくしはエドワード様の婚約者のアニエス・ロシェールと申します。こちらが婚約の証拠となる書類です。」


 とロシェール家の判が押してある婚約の証明書を門の柵の隙間からギヨーム様に渡した。


「これはこれは申し訳ございません。使用人もおらずおひとりでしたからどなたかと思い警戒して柵ごしでご挨拶してしまいました。このギヨーム不覚にもエドワード様の奥方となられる方にとんだ失礼を。今門を開けますのでどうぞこちらへ。」


 さすが公爵家の執事を務める方。一流の使用人なのだろうと思わせる仕草で門を開け私の荷物もすべて持ってしまった。


「すみません。私の荷物ですのに、大丈夫ですか?」

「いえいえ、この程度仕事のうちに入りません。大切な旦那様の奥方に荷物を持たせたとなってはわたくしの恥となってしまいますのでお構いなく。」


 そのまま軽々と荷物を運びドアを開けてくださいました。


「それでは奥様、この部屋が応接間となっております。わたくしは荷物を奥様の部屋に置いて旦那様を呼んで参りますのでしばしお待ちください。」


 ギヨーム様はそういうと部屋から出て行ってしまいました。

 応接間は白を基本に統一されており調度品は控えめだった。少なくとも公爵邸に来てから暴君と噂されている方の邸宅とはとても思えないため私の中で本当に暴君と噂されるようなひどいお方なのかという疑問の種が芽吹いてきてしまった。


 そう考えてるうちにふとノックされギヨーム様が

「アニエス様。エドワード様をお連れいたしました。よろしいでしょうか?」

 そういい応接間のドアを開けエドワード様を招き入れた。

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