アンダルシアを継ぐ者
次ぎの日、代官に呼ばれ俺達は町の外れの高台に来ていた。
ミライザが代官に用事を聞く。
「このような所に来て何をなさるのですか? かなり大事なおつとめと聞きましたが」
何かぶつぶつと文句を言っていた代官がニコニコとしてこっちを見る。
「間も無くです。もう少しお待ちを」
すると我々の頭上がふと暗くなる、何かの影に入ったようだ。不意に代官が舌うちしたように聞こえる、まるで来るのが遅いと言わんばかりだ。
「ヒィ」「キャ」
ナダリーとミライザが驚きのあまりに座り込んでしまう。後ろを振り向くとシルバーに輝く毛並みの、とても大きな狼のモンスターがいる。
そのモンスターと目が合う。
代官がふんぞり返り偉そうに何かを言っていたが、俺の耳には何も聞こえなかった。
それより目の前にいる狼のモンスターに集中していた。感覚的に審判の塔で会った暗黒竜 ワンダー カラミテよりも強い、そう感じた。
ダリアはミライザとナダリーを守るように立っている。
「ワォーーーーーーーン!!」
突如、目の前の狼のモンスターが遠吠えをすると森のざわつきがぴたりと止まる。
「貴様ら2人はかなり強そうだな」
突然狼のモンスターに話かけられて驚いて見てしまった。
「お前は、人の言葉がわかるのか?」
「当たり前だ。我をなんだと思っている」
「いや、普通にでかい狼のモンスターじゃないのか?」
俺の素直な返答にシルバーの大きな狼のモンスターが顔をひきつらせてしまった。
そこに代官が大声をあげる。
「馬鹿者、こちらはフェンリル様だぞ。貴様らの悪行を伝え倒しに来て頂いた」
「ほお、お前がフェンリルか。
実際に会ってみたかったよ、暗黒竜 ワンダーより強そうだ」
フェンリルが不満な顔をする。
「ワンダー? あんな軟弱竜と一緒にするな。確かに我がフェンリルだ。我が名乗ったのだ、お前達も名乗れ」
「俺はタツキ アンダルシア。
そっちで立っているのが、妻のダリア アンダルシアだ」
「アンダルシア? はは、久しく聞いたぞ。タツキとやら、黒の宝玉を持ってるか?」
「黒の宝玉?」
マジックバッチから黒の宝玉を取り出す。
「ブッッハハハハハ」
フェンリルが勢い良く笑いだす。
「タツキ、場所を変えよう。ここでは戦うに狭すぎる」
「かまわない。何処に行く?」
「海だ。あの辺りは何も無い」
「えー。ちょっと!! 2人だけずるい、私も戦いたい」
ダリアが怒って抗議をする、するとフェンリルがダリアを見る。
「ふん、事が終わったら何度でも戦ってやる。
我も本気を出す相手がおらずに、つまらぬ時間を過ごして来ている。
それよりダリアと言ったか? 其処のジジイはまだ殺すなよ、どうやら我との約束をたがえたようだ」
「このじいさん? わかった。
どうやら私じゃなくフェンリルがやるって事ね」
「それと、ダリアだったらな。このバックをお主にやろう」
そう言うとマジックバックを咥えダリアに渡した。
「何、これ?」
「我達が帰るまで持っておれ」
フェンリルが俺を見る。
「さて、アンダルシアを次ぐ者よ。行くぞ」
その場にいるミライザとナダリーをダリアに預け、海沿いの広い場所まで走って行く。
「驚いた。我の速さに付いてくるのか」
「たいした事じゃない」
海辺に付くとフェンリルがまた遠吠えをする。
「タツキ、しばし待て。立会人を呼んだ」
すると海がざわつき始める。
バチャバシャ!! ドッシャ!
「シードラゴン?」思わす声が漏れた。
「うむ、我の餌じゃ」
すると海から一人の男が上がって来た。
「フェンリル。何のようだ?
こんな緊急の呼び出しなど、たいした事じゃなければ海の肥やしにしてやるぞ」
「タツキ、紹介しよう。奴はリバイアサン。メルシー アンダルシアの眷属の一人だ」
何とも今日は驚く日だ。森の神獣のフェンリルに続き、海の神獣のリバイアサン。まるでオンパレードだな。
「リバイアサン、俺はタツキと言う。フェンリルと対戦するにあたって立会人を呼んだと聞いていた。
今日は海の神獣のリバイアサンにも会えるとは思ってもいなかったよ」
リバイアサンがフェンリルを見るとフェンリルがただ黙って頷く。
「なら、俺も対戦しよう。アンダルシアの名を継ぐ者よ」
「フム、なら2人共対戦だな。
タツキ アンダルシアだ。おして参る」
日照を抜いて構える。
男の姿だったリバイアサンがドラゴンに戻る、体長が長く流線型の鱗に全身が覆われていた。
フェンリルは少し体が小さくなった気がする、戦闘に合わせ体のサイズを変更出来るのは凄い事だ。
2人を見て思わず感心してしまう。
「双・飛翔」
鋭く輝く光の鳥がフェンリルとリバイアサンに向かう、難なくかわす2人を追尾するように光の鳥が背後から襲う。
そのタイミングに合わせリバイアサンに斬りかかる、リバイアサンは飛翔が当たる覚悟でドラゴンフレアーを出す。
リバイアサンのドラゴンフレアーは水の剣のように鋭く地面を切り裂いた。ドラゴンフレアーをかわしリバイアサンに蹴りを入れ、体制を崩すとフェンリルに向かい幻光を飛ばす。
不意を付かれたフェンリルの左肩付近に幻光が当たる。
「流星群」
光の槍を空一杯に出し、フェンリルとリバイアサンと対峙した。
「参った。我の敗けだ」
「同じく、俺も敗けだ」
流星群を見たフェンリルとリバイアサンが揃ってあっさりと敗けを認めてしまった。
「タツキ、お前は強いな。アンダルシアには勝ったか?」
何故かご機嫌にリバイアサンに聞かれてしまう。
「嫌、ダリヤと2人で何とか互角に戦える位だ。審判の塔で何十回も挑んだが、結局勝てなかった」
「なんと、ダリヤもかなりの腕だな」
「フェンリル、ダリヤとやらは誰だ?」
「タツキの妻だ、タツキと変わらない強さを持ってる」
リバイアサンと顔がちょっと困惑していたが、フェンリルとリバイアサンが人姿になると2人揃い俺に平伏した。
「アンダルシアの名を継ぐものよ、我らは共にお前付く。
メルシー アンダルシアが審判の塔に入る事になって以来約900年、ダッツとマリーンがなくなり我らは王を失った。
アンダルシアを継ぐタツキを我らは共に新たな王として、共に忠誠を誓おう」
「なんだ、2人ともダッツとマリーンを知ってるのか?」
その後ダッツとマリーンの話で少し会話が盛り上がる。




