ミライザの思い
俺とダリアの会話に呆れた顔をするナダリー。
「私、とんでもない奴の懐に飛び込んだの?」
そう、ぼやいていた。
夜、ナダリーの案内でこっそりと屋敷を抜けてある民家にくる。ナダリーが部屋に入る時、隠匿魔法をかけて俺も中に入る。
ダリアは向かいの建物の屋根に潜んでいた。そこに入ってきたのはリリーとマリ-の姉妹だ。
「はあ、いつまでもこんな子供の真似事してれば良いんだ?」
「マリー。文句は言わない約束だよ」
「チッ!
所でナダリー、あんたの方の守備はどうよ。あいつらふざけた事ばかりやってるが相当出来るぞ。
眠り薬や毒を仕込んでも決して食わないし、面倒で忍ばせた奴を送ったが全員帰りうちに合ったぞ」
「そうだね。アンドール王子に報告が必要になるね」
「ちょっと待ちな! そんな事するとあたしらの首が飛ぶぞ。
アンドール王子直轄部隊の掟は知ってるだろう」
マリーとリリーのやり取りが続く、其処でナダリーが動く。
「なあ、私は消えるよ。
すでに私の正体はばれているみたいだしね」
マリーが隠し持っていた短刀を抜く。
「ナダリー。掟は守ってもらうよ」
そこに隠匿魔法をといて俺が姿を表す。
「マリー、リリー。子供が出歩いて遊ぶ時間じゃないのぞ」
マリーとリリーがばっとこっちを向いた。その顔は強ばり、額に汗をにじませている。
「私達が気が付かない訳無いでしょう」
ダリアがドアを開け静かに入って声をかけた。
「ナダリー、貴様はめたな!!」
リリーの悔しそうな声が聞こえた。が、2人は抵抗する事無く我々に捕まってしまう。
屋敷の地下牢に2人をつなぐと、そこにミライザがやって来た。ミライザは深く悲しい顔をしていた。
「マリー、リリー。小さい時から有り難うね。こんな事にも気付かない何て私は王女失格なのかもね。
タツキさん、ダリアさん。後はお願いします」
ミライザがそれだけ言って戻って行った。
まあ、拷問何てしたこと無いしな、けど生かして置くことも出来ないし。
「ナダリー。取りあえず俺達の聞きたい事を聞いても良いか?」
ナダリーが黙ってうなずく。
マリーとリリーは暴れる事もなく俺を見る。
「お前らの雇い主は誰だ?」
「何の目的で屋敷にいる?」
マリーとリリーは何の反応も見せない。
「そうか?
最後の質問だ。アンドール王子直轄部隊は、なんだ?」
笑う2人を見てスラッシュを飛ばし2人の両足を飛ばす。
「グアー」「ゆ、許してくれ」
2人が命乞いした瞬間だろうか、突然苦しみ出すとそのまま亡くなってしまう。
家人を呼んで2人の始末を頼む。
「ナダリー。アンドール王子直轄部隊って言うのはなんだ?」
「ハイ、お話の前に場所を変えましょう、作業のじゃまになってしまいます」
俺達の部屋に移動するとミライザが部屋の前で待っていた、そこでミライザも含め話し合いになった。
マリーとリリーそしてナダリーはアンドール王子直轄部隊の一員だと言う。ただ、ナダリーは2年ほど前に入ったばかりでほとんどアンドール王子にも会った事が無いのだと言う。
アンドール王子はここアップルランドの第一王子。
その性格は独占欲が強く、狡猾で自分勝手、気に入らない者はいつも直轄部隊を使い消してしまうらしい。
アンドール王子直轄部隊とは、そんなアンドール王子が奴隷や捨て子、売られてきた子供達を集め自分の都合の良い人間を育て作り上げた部隊らしい。
連れてこられた子供達は武器を手に殺し合いを行い、勝ち残った者だけが直轄部隊として残り、暗殺、情報収集等を行う。
失敗した時はみんな自害するように躾られているのだと言う。恐らく2人が亡くなったのも、その為なのだろう。拷問の辛さを抜けるために死を選ぶ。
ナダリー曰くそう言う教えなのだと言う。
初めて知ったがマリーとリリーは本当の姉妹ではない。2人とも子供の時の過酷な経験から、成長を止めたような見た目になったのだと言う。
そんなマリーとリリーは幼いミライザのメイドとして、ミライザが6才の頃から一緒なのだと言う。ミライザにとっては仲の良い家族に裏切られたような思いらしい。
「タツキさん、ダリアさん。本当にすみませんでした。
私は信頼が厚い2人をと思ったのですが、その2人が兄の仲間だった何て」
そう言うと泣き出してしまう。
「ミライザ。失敗や裏切りなんかは誰でもある。
これからどうするかだけだ。
今の状態は最悪だ、あの2人が自決したのは程なく伝わるだろう。
お前がどうしたいかだけだ。
俺とダリアはミライザの友達だ、そう勝手に思っている」
ナダリーがミライザの肩を抱く。
「タツキさん。
ミライザ様は姉妹から裏切られたのです。少し考えて頂けますか?」
「ナダリー。 人は優しさだけじゃ成長しない。いいかミライザ、お前はこれから領主になる。
そして上に立つものは常に裏切りと過剰な信頼を受ける、それが優秀で有ればある程だ。
大事な事は自分をどれだけ貫けるかだ、お前が国を継ぐなら他の事をアドバイスする。
お前はどうしたい?」
ミライザが俺を睨んだ、その表情は複雑で、苦しそうな顔だ。
「タツキさん。私はどうしたら良いでしょうか?」
「ミライザは領主になるんだろう。
なら、今回のような事は何時でも起こる。
その時どうするかだ」
「私は信じたいと思います。
甘いと思われるかもしれません。それでも友を、家族を、領民を信じたいと思います」
ミライザがハッキリとそして強い思いでそう言った。




