怒れる乙女
ここ数日悪魔の森の依頼をこなして過ごしていると、防具を身に付けたマーチさんと街の入り口の門の近くでで会う。
「マーチさん!」ダリアが手を振る。
「ダリアちゃん」
マーチさんがダリアを見つけ駆け寄ってきた、そしてマーチさんの後ろから数人の冒険者が近付いて来る。
俺とダリアはマーチさんとここ1ヶ月程顔を会わせていなく、お互いの近況報告で盛り上がっていた。
「なぁ、マーチ。
そんな低ランクな奴と仲良くするのは止めてもらえるか?
我々まで低ランクと思われるじゃないか?」
振り向くと、男が立っていた。
それはまさにイケメンだ。背の高い男で金髪に細マッチョな体、赤と金を基調とした派手な全身鎧、そして体格ににつかない大剣を肩から下げていた。
「うるさいわね。
あんた達は道案内で一緒にいるだけでしょ。そんな迷惑なら勝手に帰ったら?」
「チッ」
「やめな、行くよ」
マーチさんにイラつくイケメンを押さえて、同じパーティーだろう女性がイケメンを連れて行く、その女性もだれもが見惚れる位に綺麗な女性だ。
このパーティーってわざわざ顔で選んだの? そう思う位に近寄りにくい人達なんだけど。
「マーチさん、あの人達は?」
「あ~、この都市で唯一のAランクのパーティー。
Sランクのパーティーがいないからあいつらが最高かな」
あいつら? あいつらですか? マーチさんがそんな言い方するなんて、よっぽどだよ。余っ程嫌ってるみたい。
その後3人そろってギルドに行く。各々に報告が終わるとギルドで飲もうと言う話になりギルドの食堂に入って昼過ぎから3人で乾杯する。
話題はハルアさんの話になった。どうやら来月の中頃にはこっちに来るらしくギルドで働くような話をしていた。
ルルダンルギルドやハルアさんの話で盛り上がっているとさっきのイケメンがマーチさんの隣に勝手に座る。
「だから、マーチ。
何でこんな低ランクと一緒にいる?
こんな低ランクじゃなくて俺達と一緒に飲めば良いだろう。
何時も誘うけど俺達の誘いは断るのにこいつらとは飲むのか?」
ふとマーチさんの顔を見る。
ハイ、マジ切れしてました!! マーチさんが席を立つと同時にイケメンが壁まで吹き飛ぶ。
絶体にマーチさんが何かしたはずだが俺もダリアも見えなかった。
壁際にマーチさんが来ると急にイケメンの体が宙に浮いた。誰も触れていないのにイケメンの体が宙に浮く。
その奇妙さに、回りの人が皆離れて行く。
そこにイケメンのパーティーのタンクが割って入る。
「その辺で止めて下さい」その声は少し震えていた。
「なんだ、野良犬じゃ無かったのか?
お前が飼い主ならちゃんとしつけておけ。首輪が無ければ何処で会っても次は無い」
マーチさんの殺気のこもった声に回り皆が恐怖する。
用事が終わったかのように、まるで何も無かったかのようにマーチさんが席に戻る。
「用事終わった?」
ダリアの声が聞こえた。
ダリアって凄いな、俺なら怖すぎて声かけれない。
「さ! 飲み直しましょう」
そう言うとマーチさんが新たにエールを注文する。
そこにタンクの男が来た。
「すみませんでした。まだ、我々はマーチさんと行動を共にしないと行けません。
あいつを許してもらえませんか?」
「犬だろう、なら首輪を付けて来たら許してやる」
「それは奴隷の首輪のことでしょうか?」
マーチさんは何も言わず新しく来たエールを飲む。
「あんなんでもうちのリーダーです。
我々は依頼達成出来なかったと報告します。もし、我々で問題無い時はまたお願いします」
タンクの後ろで悔しそうな顔をする女剣士を横目に、マーチさんがタンクの男にソロになった方が良いと話しかける。
「は?」
みんな驚いた顔でマーチを見る。
「お前はもったない。唯一のAランクだろう、こんな奴らと一緒にいると後悔するぞ」
「仲間なので裏切れ無いです」
タンクが頭を下げて戻る。倒れて気を失っているイケメンを担ぐとギルドをでていった。
マーチさん曰く。
タンクが物凄く優秀らしく、囮スキル等の特殊スキルを複数待っている上に剣術も相当らしい。
ちなみに、絡んできたイケメンが一番弱く単独だとDランク程度の実力らしい。
ちなみに名前を聞いたが名前すら覚える気持ちが無かったようだ。パーティー名すら知らないと言ってのけた。
おそらくあのイケメンが、一番最初の顔合わせでよっぽどの事をしたのだろう。
基本的にマーチさんは冒険者を嫌わない、ギルド職員をしていた位だ。だからか素行が悪い冒険者には慣れっこだ。そんなマーチさんがここまで人を嫌っているのを初めて見た。
そこにギルドの職員が走ってきた。
「申し訳ございません。皆様にお話があります。
一緒に来てもらえますか?」
完全に職員もビビってるよ。
だろうな、良く分かるよその気持ち。怒ったSランクオーバーの勇者の怒気は耐えられるものじゃ無い。
等と考えいるとマーチさんが俺を見ていた。
「何か、悪いこと考えてませんか?」
「そ、そんなこと、ないよ」
ボー読みで答えるとさらにジト目で見られた。
ギルド職員に呼ばれ個室に入る。そこにいたのはギルマスのマタベリア辺境伯だった。
「マーチ、悪いな仕事終わりで…うん? なんだお前、すでに酒を飲んでいるのか?」
「あら? そんなに飲んでませんけど」そう言って笑顔でごまかす。
「タツキ。マーチを甘やかすな。頼むぞ」
「いや、そんなことを俺に言われても」
「マーチはお前の意見以外は聞かないんだ、わしの頼みと思ってやってくれんか?」
「無理です!!
俺はDランクですよ。Sランクオーバーの冒険者に何か言える立場に無いです」
「む。た、確かに。・・・いや、そんなことも無いだろう。男と女の関係にそんな事は関係無いはずじゃ」
突然、極寒の雪山に放り込まれたような寒さを感じる。
「ギルマス!! お兄ちゃんはそんな暇がないの。おわかり?」
殺気を放つのはダリアだった。
そのあまりに強大で冷酷なダリアの姿にみんな恐怖を覚えた程だ。
「ダ、ダリア。そう怒らんでくれ。
こんな老い先短いジジイのわがままだと思い少し辛抱してはくれんか?」
「ハ?」
ダリアがギルマスを睨む。
「うん。ダリアわかった。タツキはダリアだけを見てもらえるようにわしも努力しよう」
「おじいちゃん。話が分かるね」
「お、おう。そうじゃろう。そうじゃろう。わしは話のわかるじじいで有名なんじゃ」
その場にいたダリアとギルマス以外の者皆がギルマスを睨んだ。マーチさんもダリアだけは逆らわない、それも不思議だ。
「お、おう、そうじゃ来てからもらったのは他でもない。
タツキとダリアもマーチの調査に参加してもらいたくてな、そのお誘いじゃ」
「俺とダリアにマーチさんの調査の協力?」
「ああ、護衛兼道案内でAランクパーティーをつけている。
だが、思ったより使えなくてな2人に参加してもらえないかと思ってな」
「それならさっき、止めるって言ってきたわよ。
まあ、私としては有難い限りかな。
タンク以外はDランク以下と変わらない実力だし、あいつらを守りながら戦うのはやっぱり勘弁して欲しい」
「やはりか。今まで放置してたのが悪かったな。
タツキとダリアだけじゃ足りないだろう。少し時間をもらえるか?」
「良いわよ。私は何も焦ってないし」
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