嵐の前の静けさ
結局その日は5階層まで進みセイフティーポイントに到着。野営の準備に入る。
「しかし、お兄ちゃんを見て魔法剣士に見えたのかな?
あの驚きようは凄かったね」
ダンジョンで絡まれた事を思い出したのかダリアがまた、笑い出す。
「そうか、俺も憧れの魔法剣士になれたのかな?」
「うっそぉ、憧れてたの?」
「そりゃあね。ダリアを見ていつも格好いいなって思ってたよ。
一種の憧れだよ。自分無いもの持ってる人に対する」
「ふ~ん」
そう言うと俺を見てニヤニヤと笑いながら自慢気な顔をする。
次の日に6階層に向かい調査をする。
オークの階層だ。
現在確認されているモンスターは、1階層~5階層はスライム、グリーンワーム、レットウルフ、ゴブリンだ。
6階層から10階層がオーク、シルバーウルフ、蜥蜴系のモンスター等だ。
階層は11階層まで有るがどういう訳か11階層に入った事がある奴がいないらしい。
何でも結界が張ってあり、先に進む通路が見えるがその先に入ったものはいないと書かれている。
6階層にくると先ずは出てきたのがオークだ。
単体で行動しているようだ。
オークに後ろから近付きけさ斬りにして倒す。
どういう訳か6階層はオーク単独で行動しているようで他のモンスターが出てこなかった。
7階層にいたのがシルバーウルフだ。常に2~3頭の群を作り行動している。
ここからが大変な階層なのだろう、7階層に入ると他の冒険者が見当たらない。おそらく簡単に対処できるオークの階層でみんな帰るのだろう。
シルバーウルフはウルフ系のモンスターの中では上位に位置するモンスターだが、個体差が特に大きく出るモンスターでもある。
以前共に戦った、ハルアさんのテイムしているボスを筆頭にあのシルバーウルフ達はかなりの強さを持っている。
だが、ダンジョンで会うシルバーウルフはブラックウルフと大差ない強さに見える。とは言え、シルバーウルフは毛皮が高く売れるモンスターなので容赦なく見つけ次第で倒していく。
8階層に入ると、いたのは体長1.5m程のグリーン蜥蜴の集団だ。
8階層に入って直ぐにダリアが月照を抜く。氷の蝶が飛び立つと、蜥蜴に舞い降りる、寒さに弱い蜥蜴達が瞬く間に凍り付き倒れていった。
9階層にいたのがシルバーウルフだ、全ての個体が7階層と違いでかく統率が取れた動きを見せる。
日照を抜きスラッシュを出す。
光の刃が瞬く間にシルバーウルフの群を倒していく。だが、やられた仲間の死体に隠れこっちを狙う者が沢山いる。階層によってここまでレベルや知性に差がある事に驚いてしまった。
死体の中から飛び出すシルバーウルフを倒しながら先に進む。
ハルアさんのテイムしているシルバーウルフ、ボスに雰囲気のにた個体を見つける。
この階層の本当のボスモンスターだと思われる。その個体は光を浴びるとシルバー光る毛並みをしていて、強烈な圧を放っていた。
その目は覚悟を決めた者のように迷いもなく驕りも蔑む姿もない、その凛々しい姿に目を奪われるほどだ。
「グルルルルル」
そう唸る歯は犬歯が折れ顔に傷を残し、でも王である風格を残していた。
「お兄ちゃん、私が行く」
ダリアが珍しく自分から行くと言い出した。
「任せた」
「うん」
ダリアが月照を中段に構え、肩の力を抜き足を前後に開く。
真っ向勝負だ!!
ダリアよりシルバーウルフが先に動く。
頭を低く、ボア系のモンスターのように体当たりしてくる。
ウルフ系のモンスターの弱点とも言える腹を最大限に隠し、硬い頭で剣をいなす様に攻め立てるシルバーウルフ。
体当たりをかわしたダリアをよそに、俺をにらみ次はお前だ。そう主張する。
そう、相手を下に見てわざと怒らせるかのような振る舞いだ。やはりこの個体は数々冒険者を葬って来たやつだ。
ダリアもそれを感じたのだろう。
「私はそんな弱く無いよ。安心してかかっておいで」
まるでシルバーウルフと会話しているかのように言う。
その瞬間、シルバーウルフは俺に興味をなくしたかのようにダリアに集中する。
唸る事を止め、威嚇をせずダリアを見つめる。それは2人だけの時間の始まり、しかし1秒にも満たない短い時間だ。
でも向き合うダリアとシルバーウルフはゆっくりと会話を重ね、お互いを知り認め合うだけの十分な時間だったのかも知れない。
その瞬間に、言い知れない嫉妬を覚えた。
「行くよ!!」
ゆっくりと、でもしっかりとした、ダリアの落ちついた声がダンジョンの中に響いた。
ザッ!! ダシャ!! 一瞬だった。
◇◇◇◇◇
10階層のモンスターを倒し一番奥まで来ると結界を発見。手を出すと何故か中に入る事が出来た。
階段を登り11階層を進むと扉があり、その手前に転移魔石があった。
ダリアと2人覚悟を決めてその魔石を触る。すると入り口近くの祠の石の前に転移した。
ここは、ダンジョンの入り口の脇に有る祠で誰も意味が分からず放置された場所だ。
「取りあえず今日は帰ろう」
「お疲れ様、帰ろうか」
疲れたように言うダリアを見て黙って街に戻ってきた。帰りの馬車の中でダリアが珍しく寝てしまった。
ダリアを先に宿に送り届けてからギルドに結果報告で顔を出す。依頼カウンターの前に何やら人だかりができていた、時間がかかりそうなので買取りカウンターに顔を出す。
「少しばかり量が有るけどいい?」
「ああ、構わんよ」
いかにも職人ぽい親父さんがいる。ダンジョンで倒したシルバーウルフを初めオーク、グリーン蜥蜴の素材を卸す。
「お、シルバーウルフの毛皮じゃないか。傷も少ないしきちんと毛皮をはいで持ってきいる。
あんちゃん、解体が上手いな」
「お、それに牙、オーク肉とグリーン蜥蜴の魔石だな。
これなら結構な値段で買い取れるぞ」
「ありがとう。所で奥のカウンターは何の騒ぎだ?」
「ああ、何でもダンジョンで仲間がやられたって抗議しに来てんだよ。
移籍してきた奴らにダンジョンマッピングの依頼出しのがおかしいとか、怪我人が出たとかな。昔は恥ずかしくて誰もそんなこと言わないのが普通だったのに、時代の流かね。
ここじゃ最大のクランだ。駄々こねたら何とかなると思ってるだよ」
「そうか、ありがとう」
そう言ってお金をもらい買取りカウンターを離れる。




