マタベリア辺境伯領
色々と有りつつもマタベリアの街に到着する。
門が見え、多くの人が受付待ちで並んでいるのが見える。
すると馬車は貴族達が通る方に進む。訪れている貴族もなく、待つ事なく門について受付を行う。
「ルルダンルから来ましたギルド職員のマーチです。後ろは護衛とその馬車になります」
「伺っております。間も無くギルド職員が参ります。少々お待ちください」
すると程なくしてギルド職員と兵士が一緒に来た。
「お待ちしておりました。私はギルドの副マスターでラトビットと申します。
入城手続きは私が行なっております。このままお入り下さい」
「ありがとう。それで隣の方は?」
「ハイ、マーチ様の御手伝いを仰せつかりました。辺境兵団、副団長のアーモンドルッツと申します。以後よろしくお願いします」
「そう、護衛を紹介します。ルルダンル都市から同行したタツキ ムルシアとダリア ビンセントの2名になります」
「タツキ ムルシア? 急襲隊長のタツキ ムルシアか?」
そう言うと俺の元にかけよって来た。
「ああ、タツキ!! タツキだ!! 少し見ないうちに大人になったなあ。
俺だ王妃とタツキを国境付近まで迎えに行ったアーモンドルッツだ。覚えているか?」
「アーモンドルッツ副兵団長!!
ご無沙汰しております。まだ王都にいらっしゃるものだと思っておりました」
第2王妃が有る国に捕まった時に急襲した部隊とは別に、国境で我々を保護するべく待機していた部隊があった。
4日間、王妃をおぶさり歩き続け国に帰る事を目的としていた俺を発見して、保護してくれた人でもある。
「おい」
アーモンドルッツ副兵団長が近くの兵士を呼ぶ。
「タツキとダリア2名の受付はお前達の方でしておけ、2人は冒険者だ必要な事は後程ギルドに確認をするように」
「ハ!!」
「では、マーチ殿。行きましょう。
タツキ達も一緒に来るように」
その後、ギルドに入る。このギルドはマタベリア辺境伯がギルド長を勤めている。
マタベリア辺境伯は50歳を過ぎる歳でありながら、未だに前線で指揮を取るなど数々の武功を誇る人物である、そして領内の政治にも長けた人物と評判だ。
宰相 ウエイト バルス ラッツ公爵の最側近と呼ばれる程仲がよく、年に数回は宰相もここマタベリアに遊びに来ると言われている。
そして聖マリーンナ教会嫌いを公言している人物としても有名だ。
理由は簡単で、怪我等の治療に高いお布施を要求。払えない者は容赦なく切り捨てる。
また、教会として信者から金を集め金儲けはしているが、一切。孤児の救済や貧しい者を助けようとする事がない。
回復魔法や聖魔法を使える者を自らの教会に集めては捕えてしまい2度と外に出ることが無い。そう言われている事。
こう言った事がマタベリア辺境伯に取っては受け入れられないのだと言う。
マタベリア辺境伯曰く、‘’聖マリーンナ教会は教会ではなく、金に汚いただの悪徳治療院‘’だそうだ。
まあ、聖教ナイツに目を付けられた俺とダリアにはもってこいな環境だけど。
そして我々一行が連れて来られたのがギルドで、先ずはギルドに依頼完了の報告。
その後、何故か俺とダリアと2人でギルマスの部屋に通される。
そこには穏やか顔をして座るおじ様がいらっしゃった。向かいの椅子にはマーチさんが座っている。
「来たか、2人とも座りなさい」
そう言われマーチさんの横に座る。
「私は、マタベリア辺境伯で、このギルドのマスターだ。
と言っても領地運営や王都の事は息子に丸投げしてるがな」
そう言うとマタベリア辺境伯が俺を見る。
「マーチを良く守ってくれた。感謝する。
今、我がマタベリア辺境伯領は危機に瀕していてな、勇者の内マーチだけが我が願いを聞き入れてくれた」
元々マタベリア辺境伯の領地は悪魔の森と言われるモンスターの巣窟に面している。
その悪魔の森から、モンスターが国内に入らないようにする為の最後の砦なのだ。
悪魔の森に沢山の冒険者が群がり、モンスター狩りを行なっているが全く追い付かないと言うのが本音なのだ。
その森の最深部にドラゴンを越えるモンスターがいるのだと言う。それを撃つためにマーチさんが呼ばれた。
だが、勇者と言えど1人では倒す事も出来ない。勇者が後2人は必要と言われる程のモンスターがいるらしい。
「それでだ。もし、タツキとダリアが良ければ我がマタベリア辺境伯領に移るつもりは無いか?
護衛の仕事だ。元々ルルダンルに戻るつもりだとは思うが」
「我々ですか?」
「あ、いやいや分かっておる。ルルダンルに仲間を残して来たのだろう…」
「移りますよ」
「へ? そうだろうな。うんうん。
う! 移る?」
「はい。元々そのつもりで受けた依頼ですから」
「感謝する」
マタベリア辺境伯がテイブルに頭を付けんばかりに頭を下げる。
そこからマタベリア辺境伯から現状を教えてもらう。
マタベリア辺境伯領は悪魔の森からのモンスターの襲来が非常に増え、兵団や冒険者達が対応に当たっているが間に合わないのだと言う。
最近は冒険者や兵団にも疲れが出てきている。元々マタベリア辺境伯をしたって集まった兵団や冒険者達もそろそろ引退を考える年になってきている。
だが、若く優秀な者がそう簡単に育つはずもなくベテラン層と若者層と別れ、一番活躍してくれる中間層がいないのだと言う。
◇◇◇◇◇◇◇
翌日、ダリアと2人で早速悪魔の森に来た。
浅い所はグリーンワーム、スライム、角狐、蹴りウサギと言ったモンスターが主流のようだ。どれもFランクでも倒せるモンスターだ。
日帰りの予定で少し奥にはいる。
「ダリア、ブラックウルフだ」
「了解」
我々の進む方向にブラックウルフの群れを見つける。
獣道に堂々と横たわり自らの縄張りを主張している。
しかし、ブラックウルフはこんな浅瀬に住み着くモンスターではないはず。
そんなブラックウルフがこんな浅瀬にいると言うことは、ブラックウルフを餌とするモンスターがその奥には沢山いると言うことだろう。




