面倒な出来事1
一週間以上にわたる監禁生活もとい、保護生活を終えてギルドの食堂にダリアと2人で来る。
「終わったね」
「やっとだな。ダリア、疲れて無いか?」
「なんとかね。お兄ちゃんは?」
「俺も何とかだ。まさか…。ほっとにまさかだ。
保護官だと言ってマーチさんまで一緒の部屋で泊まり込むとは思いもしなかったよ」
でもマーチさんよっぽど楽しかったのか何時もウキウキしていたよな。
おかげで俺は疲労困憊だけど。
「お、ダリアじゃん。やっと釈放されたな」
めざとく俺達を発見したのはダリアの友達のアサヒだった。
一緒のテイブルに座ると勝手に自分の食べ物を注文していた。
「タツキさんも大変だったでしょ、美人を2人もはべらかせて」
そう言うとからかうように笑う。
「アサヒ。俺からのアドバイスだ。
このギルドの中でマーチさんに関するいかなる発言も自己責任だ。
一応、注意はしたぞ」
「アサヒ、私とマーチさんは凄く仲良しなの。馬鹿にするような発言は許さないよ」
「悪かった。ちょっとからかいたかっただけよ。
それよりさ。あんた達が監禁されている間中、大変だったんだよ」
そう言って俺達に顔をよせる。
「王妃と何とかって言う伯爵が喧嘩になったらしいの」
「ひょっとしてメメシー伯爵?」
第一王妃とメイプル ラッシュ メメシー伯爵が喧嘩? まさかな、一国の王妃と伯爵が喧嘩なんて基本的にあり得ないはずだ。
「そうそう、その人。何でも、王妃がマリーンナ教会の人を毛嫌いして遠ざけたらしいの、そしたら護衛できていたそのメメシー伯爵って人が怒ったらしいのね」
「アサヒ、その話を詳しく教えてくれ」
俺も小声でそう伝える。
アサヒ曰く。
第一王妃の側使えを普段のメイドから、聖マリーンナ教会のシスターにメメシー伯爵が勝手に代えたことに王妃が怒った事の発端らしい。
側使えのメイドは、王妃が結婚する前からの知り合いで、わざわざ結婚した時も家からつれてきたメイドらしい。
メメシー伯爵が何を思い、側使えを切り替えたかは不明だが王妃の怒りを買ってしまった。
元々第3王妃は聖マリーンナ教会の信者だ。だが、他の王妃達はそもそも聖マリーンナ教会を良くは思ってもいない。
側使えのメイドを交代させたことを勝手な振る舞いと王妃はとらえたらしい。
その後、メメシー伯爵は警備の職を取り上げられ、代わりに王都から第一旅団が王妃を迎えに来て昨日帰って行ったらしい。
どうりで監禁生活、もとい保護生活が長引いたわけだ。それにしても王妃の護衛の為に第一旅団か、そもそも国王直属部隊だぞ。
国王を支える直轄部隊は3部隊ある。
第一旅団 国王の守護部隊。約500名からなる部隊で各部隊の100人兵長達を集めて作られた部隊だ。常に国王とその家族の警備が仕事、100人兵長は冒険者にするとDランク程度。
第2旅団 暗殺部隊としても有名な遊撃部隊。100名からなる特殊部隊で、1000兵長を中心した部隊。1人1人の実力は冒険者にするとAランク相当と変わらない程の実力を持つ。国王きもいりの部隊。
第3旅団 王都を守る守護部隊。ここは兵士も多く、3000名を越えると言われている。
王都の警備、消防、治安維持の全てを行う部隊。ここは通常の部隊と同じく各兵団長か存在して警備に当たっている。
この3つの旅団は国王専属部隊で、軍隊の中でも特に秘匿性の高い部隊でもある。
その中の第一旅団が来たと言うことは国王がメメシー伯爵を疑っていると明らかに言っているのと変わらない事だ。
そうなると、遊撃隊が紛れ混んでいてもおかしくは無いだろう。その時、兵士らしき男達が数人でギルドに入ってきた。
「私は警備隊 隊長のスマイルと言う。レイン殿はいらっしゃるか?」
何故か警備隊がマーチさんのカウンターにいって声をかけていた。
「私が呼んで来ましょう」
隣にいた受付のお姉さんがカウンターを立つ。そこに少し酒によった冒険者が近づいた。
「兄さん達。兵士かなんか知らんが余りそんな顔でギルドに来るもんじゃねえぞ」
若い兵士が後ろを振り向き冒険者に対峙する。
「なら、どんな顔ならいいんだ?」
ガタッ!! 殺気のこもった声に回りの冒険者達が反応する。
一斉に警備隊の面々を冒険者達が取り囲む。
「おやめ! あんた達。それだけ元気があるなら依頼でもこなしてきな」
マーチさんが立ち上り冒険者達を見る。
マーチさんの一言に興味をなくしたように冒険者達が散っていく。
警備隊隊長が若い兵士をいさめている
最中にレインが降りてきた。
「スマイルさん、訓練の話は断ったはずだが?」
「今日は別件です。こちらの冒険者の方が昇級試験のための訓練を行っていると聞きました。
それも我が警備隊の見習い兵士に対して行っていると」
「研修を受けている奴らの事は良く知らん。だが、研修を受けている以上そいつらは冒険者なのだろう?
なら、Fランクに上がる為の研修を受けていても問題無いだろう。
Fランクの研修を担当しているのも冒険者だ。ランクはDランク、あんたに教えるにはもっと上のランクが必要だろう」
「確かに筋が通っておりますね。
では私も冒険者登録をしてその試験を受けたいと言えば受けれるのか?」
「そりゃかまわんよ。
だけどあんたにGランクの冒険者は耐えられるかい?
便所の汲み取りやら、家畜の世話、大壁の補修の手伝いなんかだ。それを1日やったところで数千リンにもならない。
そんな事を黙々と半年位こなしてもらって初めて昇級試験が受けれる。
やってみるかい?」
「うッ!」スマイルが顔をひきつらせる。
「あんたとこの若い兵士だって、少しでも上に行くためにわざわざ冒険者登録して頑張ってるんだろうよ」
「おい、Gランクと言うのはそんな仕事しかないのか?」
警備隊長のスマイルが真剣に聞いてきた。レインが真剣な顔で警備隊長のスマイルを睨む。
「いいか!! Gランクは身分証すら持てないもの達を救う為に国王陛下が作られたクラスだ。
そこから這い上がるチャンスを与える為に作られたのだ。
そんな連中が何の訓練もなしにモンスターに挑んで見ろ。あっさりと死体の山だ。だから、わざわざ昇級試験と研修制度をもうけている。
まして、冒険者の多くが我流で腕を磨いて強くなる」
「つまり、訓練は逆効果を生むと言う事か?」
「ハッキリと言ってそういう結果になることも多くある」
「なら、私達が見て行けそうだと思う者に直接声をかけても問題無いか?」
「指名依頼か?
それはかまわない。だが、判断する時はギルド職員立ち会いの元だ。
お互いに不利な条件は無し。お互いの了承の元での契約だ」
「わかっている。我々も鬼ではない。
有意義な話が出来て満足だ、今日は帰ります」
嫌な笑顔を残し警備隊が帰って行った。




