魔法剣と聖教ナイト
その日の午前中はダリアのファッションショーだった。
30着近い服を出して着こんでみたり、着回ししたりと様々なコーディネートをして今日はラフな格好を選んだ。
はき古した藍色の作業ズボンに白い半袖のシャツをあわせていた。
この日2人で向かったのが武器屋だ。
普段使ってる剣が段々と短くなってきた事もあり交換する予定でやってきた。
武器屋も特徴があり、得意な物が違う、何件か見て一つの武器屋で買うことにした。
「どれ、にぃちゃんの剣を見せてもらえるか?」
「これが、今使ってる剣だ」
そう言って長剣を出す。
「結構な長剣だな。おまけに長柄だな。柄が二つに別れているのか?
柄の中の棒は、持ちかえようだな。
刃の長さは1.5m。柄は30cm
フム」
そう独り言を言うと奥の部屋に行き何やら箱に入った長剣を持ってきた。
そこに物凄く気になる剣が入っていた。
「なあ、この剣を見てもいいか?」
それを見た武器屋の親父が一瞬強張る。
「持てるならな。でも後悔するぞ」
「そうか?」
何を指しているかわからなかったが手に取ってみる。ズシっと重さを感じるが手に良くなんじだ感じを覚える。
鞘を外す。何処か懐かしさを感じさせるその刃に直接触れてみると素材の質感といい物凄く良さを感じる。
恐る恐る見ていた親父さんが声をかけてきた。
「あんた、何ともないか?」
「ああ」
「ならいいんだ。良かったよ。
そいつは魔法剣と呼ばれる種類の剣なんだが、物凄く持ち手にたいして好き嫌いがあってな。
先週、警備隊の隊長がその剣を掴んだ途端に腕を焼かれてしまってな。
困っていたんだ。
そうだ。その剣とついになる剣がある、良ければ一緒に買わないか?」
「あ、なら私見たい。長剣じゃないよね」
「お、嬢ちゃん良くわかるな。こいつだ」
そう言ってもう一つの剣を奥から持ってきた。
長剣は紅く燃えるようなイメージがある。もう一つの剣は少し白く凍りつくようなイメージだ。
「こっちの剣は大人しくてな。割りと欲しがる奴が多いんだけど、単体で販売するといつの間にか戻って来るんだよ。
この二つは俺のひいじいさんの時からこの店にあるから、優に200年は誰も使っていない」
「「200年!?」」
ダリアと顔を見合わせた。
「ああ、家の言い伝えだがな。
で、どうたい? 手に持った感触は」
「俺はこれがいい」「私も」
「よし、決まりだ2本で100万リンでどうだ?
魔法剣にしたら破格値だろう」
確かに魔法剣として見たら破格値だろうけど。ダリアを見るとOKって顔してる。
「こっちの長剣には鞘があるが、こっちの剣には鞘がないな」
「わかったよ。お嬢ちゃん、飾ってある物の中から合う鞘を持っていっていいよ。
これでどうだい」
「買う」
「その長剣が日照。その剣が月照と言う名前だ。
元々は一つの剣だったらしい。それこそ太陽の剣に匹敵するような物だと言い伝えられいる。
この二つの剣は今はいないけど、初代ふたご座 ゲミニの勇者が身に付けた
だと言う噂だ」
「ふたご座 ゲミニの勇者か?
なら、俺達も見習わないといけないな」
「そうだよ。初代のふたご座 ゲミニの勇者は夫婦だったんだからね。
私達も仲良くしないとね」
「おいおい、そう言うのは店の外でやってくれるか?
独り身のおっさんには怒涛の攻撃よりダメージがでかいぜ」
お互い、鎧等を着けずに剣だけを下げてまち街中をぶらぶらとする。
この頃になると肉の流通量も増え、屋台も徐々に増えてきていた。
「お兄ちゃん、何か食べようよ」
ダリアに言われて近くの屋台で肉串を買う。
近くの噴水に腰をかけて2人で食べていると、何処からともなく視線を感じ始める。
その後いくつかの屋台をはしごして料理を食べてから街の外に来た。
「最近、ダンジョンばかりだったら、またに外もいいね」
ダリアがご機嫌に話をする。
門を抜けて草原まで来ると後ろを振り向く。5人程の人が付けていた。
「何のようだ? ここまで付いてきてごまかすつもりか?」
ローブを着た女が前に出てくる。フードを外した時にチラッと聖教ナイトの紋が見えた。
「すみません。その剣を私に売って頂けないでしょうか?
ずっと探していたのですが…」
話を遮るように確認をする。
「先週も武器屋に来たのはあんた達だろう、そこで扱えなかった物をなぜ欲しがる?」
「武器屋の方から聞いたのですね」
すると徐々に仲間が集まり、回りを取り囲むように立っていた。
「その剣は我が家に伝わる剣でした。それを4代前の当主が借金のかたに手放したと聞き及んでおります」
柄に手を添えると日照の感情が伝わって来た、それは物凄く嫌がる感情だ。あまつさえ敵意すら感じてしまう。
魔法剣って本当に意思を持ってるのかね? 不思議に思ってしまった。
「悪いが断る。あんたの話が本当か嘘かどっちでもいい。
俺が正式に剣に気に入られているのは良くわかるし、ついでに日照がお前達を嫌っているのもな」
「な?」「ふざけるな!!」
回りから声が漏れて聞こえてくる。
「月照も同じね。魔法剣って意思を持ってるのね。
月照も嫌悪感をあなた達に示しているわ。よっぽど嫌われる事をしたのね」
ダリアが俺の後ろ立ち、すでに戦闘体制に入っていた。
何人かの聖教ナイトが剣を抜き、戦いの構えを見せる。
それに合わせ俺とダリアも各々に日照と月照を抜いて構える。
「やはり、手放しては頂けませんか?」
さらに女が聞いてくる。
「そう言うのを脅しと言うぞ。
複数で取り囲んで、武力で脅す。良く聞く聖教ナイトのやり方だな」
「ばれてましたか。でも剣の話は本当です、ばれているからには生きて帰られると厄介です。
死んで頂きます」
その言葉に一斉に剣を抜いて襲いかかる聖教ナイトの面々だが、訓練を受けたことの無い最底辺の者をあつめたようだ。
日照にスラッシュの要領で魔力を込めると、剣が光始めた。
「うわ!?」
ダリアが何か驚いた声をあげる。
ダリアを見るとダリアが持つ月照が青白く光輝いていた。
気を取り直して長剣を横になぐ。
するとまばゆい程の光のビームが飛び聖教ナイトの体を上下で2つに切り裂いた。
余りの威力に思わずあんぐりとしてしまった。
それを見ていた聖教ナイトの女が興奮気味に声を漏らす。
「最高です。凄いです!! それこそ私の求める物」
聖教ナイトの女の反応を見た日照がさらに嫌悪感を露にした。
何かが目の前を横切った気がしてダリアを見ると、ダリアの回りに氷の蝶が舞っていた。その氷の蝶は自らの意思があるのか、自分でとんで行くと聖教ナイトに降り立つ。
すると聖教ナイトが凍り付き、絶命していた。
余りの凄さにダリアと2人唖然としてしまっていた。
「凄いです。貴方達、私の配下に入りなさい。今なら即、幹部として徴用します」
その声は先程の女性の声ではなかった。一度だけ聞いたことがある。
軍幹部にして聖マリーンナ教会の幹部でもある、メイプル ラッシュ メメシー伯爵の声だ。
メイプル ラッシュ メメシー伯爵は冒険者に例えるとSランクの上位に位置する位に強い人物だ。
辺境を守護してきた家の当主にして、希代の天才とも言われる程の人物。
流石にここで会ったのは不味い気がする、何せ俺達じゃ逆立ちしても勝ち目の無い相手だ。
「おい、これはどういう状態だ!」
そう言って複数の男達が走ってきた。
俺達と聖教ナイトの女の間に入ると直ぐに聖教ナイトと気付いたようだ。
「ここは、我々が預かろう。我々はSランクパーティーの…」
聖教ナイトの女が相手の話を遮るように文句を言い始めた。
「ち、邪魔が入ったね。今回は見逃してあげる。流石に私1人でSランクのパーティーは骨がおれるわ」
そう言うと忽然と姿を消した、索敵をするが気配すらない。
「お前達、何で聖教ナイトに絡まれたんだ? こっちの倒れているはお前達がやったのか?」
「すまなかった。助かったよ。
今日、武器を新調して、試しにスライムでもと思って外に出た所で絡まれた。
こいつらは聖教ナイトだったんだな。てっきり武器を狙った盗賊だと思ったよ」
諸々の事を話すのが面倒で適当にごまかしてしまった。
「なんだ。じゃあ、武器屋から付けられていたのか?
まあ、一度ギルドに行こう。話はそれからだ」
ギルドで事の成り行きを話す。その間にギルド職員が武器屋に走った。
そして俺とダリアが新しい武器を購入したことを確認、その後店にいた他の客が消えていたと武器屋の主人が説明したようだ。
マーチさんが来た。他の冒険者は部屋を出でて、俺達3人になる。
「話は聞きました。タツキさんとダリアちゃんはその聖教ナイトに覚えはありますか?」
「声だけなら覚えがありますが、本人かどうかはわかりません。
その声の人物はメイプル ラッシュ メメシー伯爵の声そのものでした」
「そうでしたか。
現在この街に御忍びで来ています。
2人には悪いですが、今日は家に帰らずギルドに泊まってもらいます。
明日から第一王妃が来られる予定もあります。面倒かも知れませんが一週間程度、我慢してください」




