狙われる
「タツキ、体は大丈夫か?」
「かまわない。大事な話なのだろう。教えてくれ」
「先ずは紹介する。
我が国 メルボルス立国の公爵家で マサリエ 公爵家の次男ムッシュム サガリエ マサリエ殿下。
そして侍女兼護衛のメッシュ子爵家 長女 アカリ バルス メッシュ殿だ」
「レイン殿。我々にそのような呼称は不要です」
そう言うと立ち上がる。
「タツキさん、ダリアさん。初めてお目にかかります。
元、マリサエ公爵家、次男 ムッシュムと申します。
こちらは」
そう言うと女性が制止する。
「私はメッシュ子爵家長女のアカリだ。
すまないが、平民に頭を下げる訳には行かない。その辺は理解してもらいたい」
レインがアカリを見るとアカリが震えだす。カタカタと震えると椅子に落ちるように座ってしまった。
「ムッシュムについてはこの後、正式に廃爵の予定だ」
ダリアがレインを止める。
「あのさ、これおおごとだよね。そんなおおごと私達でいいの?
もっと優秀な人に預けた方が良くない?」
ムッシュムが懐から手紙をだす。
「これはある方から、直接2人に渡して協力を得るようにと言われて持ってきました」
そう言うと手紙を渡される。
そこにはマナディア第4王妃とウエイト宰相の連盟でアカリ第一王女を守るようにと書かれていた。
そして、軍の特殊文が記載されていた。それは文字の下に書かれる暗号文だ。
『アカリ第一王女を逃がします。ムッシュムはアカリ第一王女の侍従で戦闘力はありません。
タツキ、ダリア。2人を頼みます。
事がすめば2人を迎えに行きます。それまでの間よろしく』
それを見た後、ダリアに手紙を渡す。
「おい!!」
アカリ子爵令嬢が手を伸ばす。
ダン!!
俺が単刀を取り出しアカリ子爵令嬢の手を刺して動きを止める。
「うがぉ! き、ぎざまぁ、ごんなことをして只でずむと思ってるのか?」
「おい! 侍女兼護衛がこの程度攻撃もかわせないなんて呆れて物が言えない。
ダリアは俺のパートナーだ。俺の背中を守れるのはダリアだけだ。
そのダリアに手紙を読ませて何が悪い」
ダリアも手紙を読んでアカリとムッシュムを見る。
「私らが嫌なら仕方ないじゃない。
ギルドの監獄にでもはいっていたら、暗いし臭いけど決して狙われないわ。
このギルドは24時間護衛の兵士と冒険者達がうろついているし。
何より2人の勇者がいる、何処にいるより安全よ」
アカリ子爵令嬢が何とか手を抜こうと努力している時に単刀を少しだけひねる。
「ギャー!!」
アカリ子爵令嬢が涙を溜めて謝罪してきた。
「もう、申し訳ございまぜんでした。許じで下さい」
それを聞いてさらに単刀をひねる。
「ギャッ」
ガタッ ガタン!!
アカリ子爵令嬢が痛みのあまりに気を失い倒れる。
「ムッシュム様。こう言う時はムッシュム様がアカリ子爵令嬢を抑え、真っ先に謝るものです。
2人とも役割が出来ていません」
ハラハラして見ていたレインが俺達を見る。
「レイン、悪いが今日はこれで帰られせてもらう。本当に2人とも狙われているなら俺達じゃなくギルドで匿う位した方がいい。
それとこの手紙は偽物だ。筆跡が違う」
「嫌、そんな事はないはずだ。筆跡の鑑定と手紙自体の鑑定を行って間違いなく2人の物だと判明したぞ」
レインが強く反発する。
「そうか、ならこの2人の事は調べたか?」
「ムッシュムは俺の部隊にいた、ラムロットに似ているし、アカリは現伯爵の侍女兼護衛のマターリにそっくりだよ。
マターリは本当に子爵令嬢だったはずだ」
ムッシュムが少し腰を浮かし逃げる体制を取るが、ムッシュムの後ろにダリアが音を消して立って逃走に備える。
「そう言えばラムロットて奴いたね。
良く女風呂覗き込んでは女の兵長に脅されてさ、次覗いたらちょんぎるぞって脅されて漏らしていた奴だよね」
そう言いながらダリアが股間を抑える。
ムッシュムがフルフルと震えだす。
「俺はびびっていねぇし、もらしてもいねぇぞ」
その言葉を聞いたダリアがムッシュムを捕らえて押さえ込む、レインが職員に声をかけると複数の男性が入ってきて2人を取り押さえた。
「この2人を牢屋に繋げ、それと自殺防止の為に魔封じと口もふさいでおけ」
レインが俺達を見る。
「なあ、何で2人が違う事がわかった?」
「この書類には機密文が書かれている。それも初めて見る奴の筆跡だ。
それで思い出した。軍部に、闇ギルドとつながりを持っているもの達がいる。
その内の1人がメイプル ラッシュ メメシー伯爵だ。
女傑としても有名だが、聖マリーンナ教会の敬虔な信者でもあるはずだ」
聖マリーンナ教会、聖女マリーンを神として崇める宗教。
現在の教皇は天秤座の勇者がなっている、そしてこの教皇は凄く人格者としても有名だ。
「まあ わかった。
悪いが明日また来てもらえるか?
闇ギルドがからむって事は、俺達に対する嫌がらせの可能性もある」
「そうか。なら、お言葉に甘えて明日また来ることにしよう。
ああ、ギルドの職員を俺達につけさせているなら今日はやめておけよ。今日の俺は機嫌がすこぶる悪い、誰かれかまわず殺すぞ」
「フッ 了解した。
ギルド職員や息のかかった者は絶体に近付けないようにしよう」
「ダリア。お待たせ。
今日はパンケーキでも食べに行こうか?」
ダリアが勢い良く振り返る。
「お、お兄ちゃん? どうしたの?」
そこに大人しくしていたマーチさんが反応する。
「あ、あの~。
出来ればご一緒したいのですが」
「すみません。俺としてはダリアと2人でゆっくりとしたいです。
申し訳無いですが」
「やっぱり駄目ですよね」
マーチさんがそう言うと泣きそうな顔をする。
「すみません。今日はダリアと2人にさせてください」
「お兄ちゃん…」
「あ、そ、そうですよね」
何か言いたげなダリアの手を引いてギルドを出る、普段は俺とダリアを付けて来た連中も誰もついてこようとはしない。
2人で龍源の向かいに有る食堂にくる。結局、パンケーキのお店には入らずに何となくこの店を選んで来た。
夕方にも関わらず沢山のお客で溢れかえっていた。
「あれ、タツキさんにダリアちゃん。いらっしゃい」
ふと見るとブリットが手伝いだろうかホールで注文を受けていた。
「ブリット、俺は取りあえずエールをお願い」
ぶっきらぼうにブリットに注文する。
ブリットがいつもと違う俺を見てダリアに確認する。
「何? 喧嘩でもしたの?」
「喧嘩の方がましかな。こうなるとクドイからほどほどにして良いよ」
「そ、そう」
そう言うとブリットが下がる。ブリットがエールと一緒につまみを持ってきてくれる。
すでに出来あがった客がダリアに絡んできた。
「嬢ちゃん、可愛いね。この店は初めてか?」
「違うよ。私、ブリットの友だちなの。何回か来てるよ」
「ふ~ん」
つまらなそうに答える客にブリットが文句を言う。
「ちょっと。私の友達に何してるの? ちょっかいだすなら店追い出すよ」
ブリットの厳しい言葉に客がふらふらと席に戻る。
エールを飲みながら回りからの嫌な視線を感じて辺りを見渡す。
この街では見かけないような姿の男達が何人かいるのを発見する。そいつらはいかにも強そうな者達だ、不思議と店全体に散らばるように座っていた。
「あ、ダリアさん。私も相席していい?」
そう声をかけてきたのはサーフィンだった。
「サーフィンいたの?」
ダリアがサーフィンに話しかける。
少しやり取りをした後にブリットが来た。
「ねえ、私もお仕事終わりなの、まぜてまぜて」
まさか、エールが空く前に2人が合流するとは思わなかった。2人が合流すると店主のおばあさんが来た。
「おや、タツキにダリアじゃない。家はどうだい?」
「お陰さまで、静かで何よりです」
「なら良かった。今日はたんまりと食べて帰ってね」
そう言うと厨房に戻る。
夜になるまで4人で話しながら食事を終えるとブリットとサーフィンが家に泊まりたいと言い出してきた。
「良いよ。おいで」
そしてその日は4人で家に戻った。
どうやらこの事がよかったみたいだ。普段2人で行動していたがこの日は4人で良かった。




