あらぬ疑惑のその後
「ダリア。怪我してない?」
「私は大丈夫。後でお兄ちゃんの怪我も直してあげるね」
「うん」
そう言うと倒れてしまう。そこにレインとマーチさんが近付いてきた。
ダリアが人差し指をたて静かにするように促す。
「ふ~。もう大丈夫よ」
レインがペタンと座り込む。
「マーチ、もう武器はしまえ。それと依頼人は帰ってもらえ、明日正式に話をしよう」
「あの、私達なら大丈夫です。待ちますので今日中にお話が出来たらと思いますので、お願いします」
振り返ると貴族らしい男女がいた。
そこには華奢で、1人では何も出来なそうな男と、もう1人は護衛だろう隙の無い女。2人とも同じ年に思える。
「なら、悪いが別の部屋で待ってもらえるか?
マーチ。悪いが2人を連れていってもらえるか、それと当分護衛してくれ」
「ハイ」
マーチさんが俺とダリアを見て深々頭下げる。
「ごめんなさい」
それを見たダリアが立ち上がりマーチさんをハグする。
「よしよし、ごめんなさい出来立て偉い」
マーチさんが声を出して泣いてしまった。マーチさんが落ち着くのを待って依頼人の2人が移動する。
「なあ、ダリア。
タツキの事を少し教えてもらえるか?
軍の百人兵長がこんなに簡単に退役出来たのも不思議だったけど、これが原因か?」
「悪いけど、私には言えない。
聞きたければお兄ちゃんにから聞いて。
後、マーチさんの専属はやめさせてもらいたいな、お兄ちゃんが何て言うわからないけど。
私はあんなお兄ちゃんは2度と見たくないかな」
レインがダリアに対して頭を下げる。
「本当にすまなかった。特にタツキに対しても申し訳なかった」
「お兄ちゃんに何か言いたければ起きてから直接言ってね。今、ヒールかけているからその内に目をしますと思うよ」
「なあ、ヒールって肉体だけじゃないの?」
レインが不思議そうに聞く、確かに体に怪我をった訳でわない。
「うん、普通はそうなんだけどね。お兄ちゃん不思議とこうなった時、ヒールかけると目覚めるのが早いのよ」
一方その頃、俺は転生する時に来たあの広い美しい場所を1人でさ迷っていた。
相変わらず何もなく、地平線のようなものが見える不思議な場所だ。
でも、不思議と嫌な感じがしない、もしかしたら死んだのかも知れないな。そう思いながら歩き続けていた。
不思議なもので何も嫌な感じがなく、鼻歌を歌いながらのんびりと歩いた。
どの位だろうか歩き続けているといつぞや会ったあの女性がいた。俺を見ると驚いたような、呆れたような顔をしている。
「あんた何やってんの? まさかと思うけど自力でここに来たの?」
「ああ、生まれ代わる時にお会いした方ですよね。
お久しぶりです」
そう言って丁寧に頭を下げる。
「そうね。で、どうやって来たの?」
前回と違い落ち着いた話のしかたに少し戸惑いを覚える。
「すみません。どうやって来たかは解りません。気付いたらこの空間にいました、もしかしたら死んだのかもしれません」
「はぁ?」
女性が手で頭をおさえ、天を仰ぐ。その後少し考え事をした後こっちを向く。
「そう言えばお前にスキルあげるの忘れていたね。
そのせいかもね、お前は死んでない。大体そんな簡単に死なれたら私が困るだろう」
そう言ってこっちを見る。
「スキル? 死なれたら困る?」
突然、近くにより手を握ってきた。そして何かをごまかすかのように早口になる。
「お、お前も持ってるだろうスキルだよ、スキル。
そうさね、お前は剛腕、瞬足、裁縫なんか持ってるだろう!?」
その後顔面蒼白で俺を見る
「あれ!! でもこれ全部? 全部、後天的に自分で覚えたのか? まさか…」
きょとんとしながら答える。
「え、ああ。 生まれてから色々と有りまして会得しました」
「はぁ!! ちょっと待って」女性がさらに呆れた顔をしてしまった。
「悪かったな。複数のスキルを得るなんて、よっぽどの死に目にでもあわない限り身に付くものじゃない。
大体、お前は才能がない。ほっときゃ死ぬくらいに弱い奴なのにな」
何故か悪びれるわけでもなく、そう言い放つ。才能がないのは認めるよ。前世も運動苦手だったしな、でも。その言い方はひどくね。
そこで初めて疑問が出た。さっき『そう言えばお前にスキルあげるの忘れていたね。
そのせいかもね、お前は死んでない。大体そんな簡単に死なれたら私が困るだろう』
とか言ってたな。思わずジト目で女性を見る。
女性が俺を無視して早口に話す。
「お詫びだ、お前に精神耐性のスキルを付けてやるよ、感情的になると自分を抑えきれないだろ。
あらゆる苦痛や精神的ダメージを対する耐性をアップしてやるよ。
じゃないとそのままじゃダリアが苦しむだけだ」
そう言って握っていた手を伸ばす。
俺の体を光が包むと何かが入ってきた。
「これでいい。後な……だ」
途中で何を言っているか解らなくなって体が浮く。そして気が付くとギルマスの部屋の床に寝かされていた。
ダリアは落ち着いて隣の椅子に座りお茶を飲んでいた。
代わりに俺を見ていたギルド職員のお姉さんが、俺を覗き込んでいて目が覚めると凄いうれしそうに騒ぎ始めた。
「タツキさんがおきました。タツキさんおきたよー♪」
そう言うと数人の職員と一緒に喜び合っていた。
ガチャ。ドアの開く音がしてレインとマーチさんが来た。
俺を守るように女性職員がマーチさんとの間に入る。
「マーチ。あんたにタツキさんとダリアちゃんは任せられない。
あんたは何をやってんの? タツキさんを犯罪者にしたいの?」
「え? いや、わたしは…」
マーチさんがオロオロとしている。
もう1人のお姉さんがマーチさんに文句を言う。
「マーチ、タツキさんとダリアちゃんが来てから凄く明るくなったけど。そのかわりにタツキさんとダリアちゃんが暗くなったんじゃ意味がないじゃない。
どうしてもっと回りと協調しようとしないの?」
Fランクの昇格試験で一緒になった職員の人も
「タツキさん、同じトラブルが起きた時、Sランク4人とAランクを14人も倒したらしいじゃない。対人戦術は冒険者よりもはるかに上なのよ。
レインとマーチで持ってるギルドだよ、少し考えてちょうだい。
まして、あんたがタツキさんに熱を上げるから、タツキさんうちの冒険者達から避けられているのに」
「う、うそ!?」
マーチさんの顔が白くなり、集まった職員達がみんな唖然としていた。
「あんた、そんな事も気づかなかったの?
あれだけ一緒にくっついておいて?」
マーチさんが、訳が解らないのかプルプルと震えるだけたった。
「「「呆れた」」」
「おいおい、その辺にしておけ。
マーチ。お前の事は明日タツキとダリアを含めて4人で話し合う。
これから大事な話だ。関係者以外はみんな外に出るように」
「「「は~い」」」




