宰相 ウエイト バルス ラッツ
マーチさんに連れられて別の部屋に戻る。
「マーチさん、さっきの話なんですが順を追って説明してもらえますか?」
「そうですよね。
先ず、椅子に座っていたのがこの街の代官とその息子。
ここは国王直轄の街だけどいつも国王がいるわけではないの、だから国王不在の時は代官が街を管理してるのね。
で、ある問題が起きたの。その問題と言うのが、代官の息子が約3ヶ月程前に突然と行方不明になったんです」
「「行方不明?」」
代官の息子は、ある貴族にたぶからされたらしくて、その貴族所有の施設に軟禁される。
たが本人は遊んでいる感覚に近かったらしく、湖の近くの屋敷で大切に扱われていたようだ。
湖で泳いだり釣りをしたり、時には屋敷の者と剣術の鍛練や魔法の訓練等を受けていたようだ。
代官が息子が拐われた事に気付いてから様々な所を探したがわからなかった。
そんなおり、新しく冒険者に登録した者が凄く人気をはくしている。
そう聞いた代官が、その冒険者を怪しんだ。家臣達がその冒険者は全く違うと言う説明も受け入れずそいつらが息子を誘拐したと考え始めた。
代官の息子の誘拐はギルドにもその情報は入っていて、Sランク冒険者を中心に捜索を進めていたらしい。
そして武術大会の予選が始まった辺りで代官の息子の居場所が判明。その日の内に兵士と冒険者達が息子の救出に成功した。
そして誘拐したある貴族の部下が、この武術大会にでていると噂になり代官は部下達に大会を見張らせていた。
だが、誰が貴族の部下かわからず以前噂になった俺を捕まえろと指令がでたらしい。
所が俺達が完全に姿をくらました。そこで代官は俺が貴族の部下だと確信する。だがその日の夜、マーチさんとレインによって貴族の部下を捕まえる事に成功。
代官は間違った行動で責任を取らされる予定だが、何とか俺に責任を擦り付けて逃げるつもりだった。
それがたまたま領地の見回りに来ていた宰相にその事がばれてしまい、今日ギルドで話し合いが持たれているらしい。
「まあ、代官の話はわかりました。
大会を失格になったのは何故ですか?」
「あ、それ。タツキさんがダリアちゃんをかばって闘技場からダリアちゃんを抱っこして降りたでしょう。それが実は違反行為に当たるって話しなのね。
私はその位って思ったんだけどさ、レインがね。どうしても駄目だって」
そう言って上目つかいで俺を見る。
「わかりました。ギルド主催の大会ですしレインの指示に従います」
「そうしてもらえると私も楽かな。レインから2人を説得してくれって頼まれていたから」
マーチさんがそう言うと安心したように笑う。
「マーチさん。実は相談があって」
「何々!? 私なら何時でもOKよ」
ダリアがジト目でマーチさんを見る。
「宿に、族が入ってかなり荒らされているんです。
何処か代わりの宿とか紹介してもらえませんか?」
「え、私との愛の巣を紹介して欲しい!!」
ダン!! ダリアがテイブルに手を付いて勢い良く立ち上がる。
「マーチさん。そんなこと言ってると、パンケーキのお店一緒に行かないからね」
マーチさんが固まる。頭がショートしたのだろうか、頭から湯気を出して動かなくなってしまった。
「ダリアちゃん。ここは半分こしましょう。左側は私にちょうだい」
「だめです!!」
ダリアの冷たい支線にマーチさんがさらに固まる。
そんなやり取りをしてるとレインがくる。
「タツキ、悪いが一緒に来てくれ。ダリア、マーチ。2人はここで待機していてくれ」
ダリアとマーチさんと顔を合わせてから1人部屋を出る。移動したのはギルマスの部屋だ。
そこには宰相と呼ばれた若い男がいる。見た目には俺とそう違わない気がする。いっても二十歳前後だろうそう思わさせる容姿だ。
「タツキ、立ってなくていい座れ」
宰相にそのように言われて向かいの椅子に座る。
「今回はすまなかった。代官は今日中にこの街からでていく、お前達の宿に押し入った連中は全て死罪となった。安心して暮らしてくれ」
押し入った連中が死罪? 代官の命令に従っただけだろうに。
「ありがとうございます。わざわざそれを伝えるために呼ばれたのでしょうか?」
宰相が座り直すと真っ直ぐに俺を見る。
「タツキ、王都で働く気は無いか?
妹の事なら心配はいらん、嫁として嫁ぎ先には困らない。
ここの代官と違って立派な家も沢山ある。どうだ?」
「ありがたいお言葉ですが、王都にいくつもりはありません。まして、ダリアを他の誰にも渡すつもりもありません。
ダリアと2人でこの5年、色んな問題をくぐり抜けてきました。これからも2人で生きていくつもりです。
それが私の答えです」
「ふむ、若いな。羨ましい位に」
若い? あんたとそう変わらない気もするが、変な言い方をする人だ。
「タツキ、宰相はこんな見た目だか、すでに60を過ぎた年だ。
見た目で判断すると理解が追い付かないぞ」
レインの言葉にますます混乱を覚える。俺と変わらない見た目で60を過ぎた年だと?
あり得ないだろう。俺の混乱を見て、レインと宰相は楽しそうにしている。
「はは、驚いたろう。実際、私はすでに68歳だよ。
どうしてか肉体的に二十歳から変化がない。どうにもな年相応に見られないのも不便な事も多いぞ。
ちなみに、若い時は冒険者をしていた。
私の名前はウエイト バルス ラッツ。元タウルス(牡牛座)の勇者をしていた。
今は引退して宰相何てのをやってるけどな」
「タウルス(牡牛座)の勇者?
先の大戦で、たった1人で敵国の進軍を押さえきったと言われる伝説の勇者?
へ!?」
驚き過ぎて言葉を失う。元兵士の俺は耳にタコができる程この話しを聞かされた。
それは先の大戦、今から4~50年も前の事だ、兵士なら誰でも知る話で、伝説と言われる程の存在だ。
救国の英雄でありながら当時の軍が弱すぎると言って軍を参戦させなかった。軍に取っては忌むべき存在。
軍幹部はタウルス(牡牛座)の勇者がいなければ軍がもっと国内で有利になっていた。そう現在も考えている程の存在だ。
「そうですか。なら俺の出生はすでに」
「知っている。ダリアのこともな」
「そうですか。今の目標は何処かに家を借りて、そこを拠点に活動を行う事です。
でもそれはあくまでも、ここルルンダル ダンジョン都市でです。
もし生活がしずらくなったら他の街に移動しますが、今のところ王都にいく予定はありません」
「仕方ないな、無理強いしても意味はあるまい。
私の後継者にどうかと思ったが」
宰相がそう言うと俺を見る。目が合うが俺の気持ちに変化は無いと思ったのだろう、あきらめたようだ。
「タツキ、時間を取らせて悪かったな。
戻って良いぞ。
それと後一週間位は姿をくらませておけよ。全て終わらないと色々面倒な事に巻き込まれるぞ」
「わかりました」
そう返事をすると部屋を出て、ダリアの元にいく。




