聖女マリーンとダリア
気晴らしに依頼を受けずにダンジョンに来た。
「お兄ちゃん、久しぶりに部屋に行こう」
「あ、そう言えば忘れてた」
「お兄ちゃん、友達をないがしろにするのは駄目だよ」
ハハ、友達ね。伝説の勇者 ダッツ ヘルムがお友達って他の人には言えないよね。
ダッツ ヘルムの部屋に入るとダッツ ヘルムとあの聖女マリーンが部屋にいた。
「おお~。タツキ待ってたぞ」
「ダッツかどうした?
って隣の女性は。ま、まさか彼女か?」
彼女か? の言葉に聖女マリーンの顔が真っ赤になる。
「おい、タツキ。冗談はお前の技術だけにしておけ、俺はこんなぺったんこじゃなくこういうのが好みだ」
そう言うとジェスチャーをする。
「ちょっとダッツさん。それは女性に対して失礼です。
それにそんな綺麗な人を泣かせて何をやってるんですか!」
ダリアが何故か物凄く怒っている。
「しょうがないだろう。俺とマリーンは孤児で、赤ん坊の頃からずっと一緒に育ってんだよ。
女って言うより兄妹としか見れねぇ。兄妹に欲情する方が変だろう」
ダッツがマリーンを見ながら言う。
「女はね、一気に綺麗になるの。その時マリーンさんに見向きもされなくても知らないからね。
ちなみに私はお兄ちゃん大好きよ。結婚するんだから」
ダッツが不思議そうな顔をしているが、その姿を見てマリーンが声を出さずに笑う。
「ねえ、マリーンさんって声出せないの?」
マリーンの様子を見てダリアが声をかける。ダッツがマリーンをまもるように立って俺とダリアを見て剣を構える。
「そんなに警戒しなくても良いよ。私とお兄ちゃんも孤児みたいなもんだし、良く虐めてられてたから。
その時ね、私がいつもお兄ちゃんの怪我直してたの。そしたら、いつの間にか回復魔法も覚えたんだよ」
私はその時をハッキリと覚えている。私をかばってお兄ちゃんがやられてしまった。それも3歳も年上の奴らだ。体も大きく力も強い連中だった。
金につられて何時も私を追いかけ、いやがらせをして来て、私を助けてくれるお兄ちゃんが代わりにやられる。そんな毎日だ。
だから、何時もお兄ちゃんの傷の手当てをしてた。
その時は特に酷く、正直もうダメだ。そう思ってお兄ちゃんの手を握って泣いてた時だ、手が輝き始めるとお兄ちゃんの怪我が全て治ったのだ。
「大丈夫よ。私の回復魔法は超1級品よ。何せ、何時も助けてくれる瀕死の状態のお兄ちゃんを回復させてたから」
マリーンが鏡の前に来る。
「マリーンさん。私を信用してくれる?」
マリーンが黙って頷く。
「神聖なる女神ルシャナの力を借りて今、汝の苦しみの全て回復させよう。
女神ルシャナの愛を受け入れたまえ。
エクストラ・ハイ・ヒール」
鏡越しに900年の時空を越えてダリアの回復魔法がマリーンに届く。
マリーンの体を光が覆い始める。その光はじょじょに首に集まると更なる光を放つ。
その余りの光の強さに目を閉じるてしまった。光が落ちつくとマリーンが一人で口をパクパクとさせていた。
「マリーンさん。ゆっくり息を吸って、吐くときに喉を動かすの。
最初はアやマって声を出すと出やすいよ」
マリーンが頷くとダリアに言われたように声を出す。
「ス~」「あぁ~」「あ、ま。 でっ、でた」
その後マーリンがなきながら座り込んでしまう。
その姿を見たダッツがマリーンを抱き締めて声を出して泣いてしまった。
「マリーン、ここで待ってろ。い、今ジジイ呼んでくるからな」
興奮気味にそう言うとダッツが出ていく。
「ダリア、ありがとう」
マリーンがゆっくりと声を出してダリアにお礼を伝えた。その後、凄い騒ぎ声のダッツがマルベルト ラッセルの手を引いて納屋にやって来た。
「マリーン。見せてご覧」
マルベルト ラッセルがマリーンを呼んで首を見る。
「信じられん、私にも治せなかったこの子の声が、完全に回復している」
「だから言ったろうジジイ!! タツキとダリアの2人がマリーンを助けてくれたって」
その後しばらくは歓喜に溢れた3人が興奮冷めやらぬように喜びを分かち合っていた。
マルベルト ラッセルが俺達に土下座した。「タツキ、ダリア。この恩は一生涯忘れない。
それとダッツとマリーンとこれからも良い付き合いをしてくれるか。
この子達の友達としてこれからも一緒にいてくれるかい?」
「当然」胸をはりダリアが答える。
「あの、ダリア。私に回復魔法を教えてもらえる。私、聖魔法と回復魔法の特性を持ってるんだけど、声が出なくて使えなかったから」
マリーンの申し出にダリアと顔を見合わせる。だって、あの聖女マリーンに回復魔法を教えたのってダリアなの?
不安そうにこっちを見るマリーンにダリアが笑顔で答える。
「任せて。私もまだまだだから、一緒に上手くなりましょう。
でも、私に聖魔法は特性ないから教えれないよ」
「うん」
マリーンの嬉しそうな顔に思わず安堵してしまった。でもダッツの奴、何か有るとすぐにマリーンの事を庇う癖に、ツンデレなのかね。
少し落ち着きを取り戻した時だ。ダッツ ヘルムが俺達を見る。
「タツキ、ダリア。お礼に新しい剣術のスキルを教えるよ」
「「いいの?」」
思わずダリアと声が合う。
「ああ、パリィを応用した技術だ。以外に使いがってがいいんだよ」
「ダッツ、悪い。その前にパリィってなに?」
俺の返答にダッツ、マリーン、マルベルト ラッセルの3人がずっこけた。
「そうか。お前達の時代にはパリィも無いのか? 仕方ないな」
「なら、私が教えてあげる。こう見えてもパリィは私得意なの」
マリーンがそう言うとパリィについて教えてくれる。
「先ず、パリィは物理反射って覚えてね。
何かが当たったらそれを反射させてダメージを負わないようにする技術なの」
俺達の顔がよっぽどポカーンとしていたのだろう。マリーンが直ぐにやり方を変える。
「話すより見せるのが早いよね」
そう言うとパリィを見せてくれる。それから具体的なやり方を教えてくれる。
円を造り、そこに当たる物を弾き返す。結界と違い、魔力は弾けないが物体は弾き返す事が出来る技術のようだ。
その後石ころを取りダリアが俺に投げる。
「パリィ」
カキン! 石ころが体に当たると同時に弾き返した。
次にダリアに石ころを投げる。
「パリィ」
カキン! ダリアもパリィを覚えたみたいだ。




