ネックレス
ユーリシア辺境伯都市の近くに来ると一台の馬車が止まり車輪を治していた。
「どうした? 車輪の故障か?」
従者の老人が俺を見る。
「どうした? 故障か?」
「どうも馬車の車軸が折れてしまったみたいだ。部品等を持っていないか?」
この地域は道が悪く部品を破損する事も多い、だから替えの部品はみんな持っているのが常識だ。
「車軸か有るぞ。どれ、見せてみろ」
馬車から降りて車輪の辺りを覗くと、何か木の枝のような物が刺さっていた、馬車の下に入りその枝を抜く。
「なにか刺さっていた。抜いたので少し動かしたくれるか?」
従者が動すがギリギリと音をあげる。
色々と探すと神目に一つの道具が見える、馬車の車輪を支える道具に何かが取り付けてあった。
「おい、逃げろ。中に人はいるか?」
「お、奥様が!!」
咄嗟に馬車の扉を開けて40手前の女性を抱き抱え、御姫様抱っこの状態で馬車を降りる。
ドン!!!!! 突如として馬車が爆発した。
咄嗟に光壁を張り、女性とラッパシュ達の馬車を守ると突然として馬車が爆発する。回りにかなりの数の一般人がいて、ざわざわとして集まって来ていた。
爆発がおさまり従者の老人を探すと全身が煤まみれになりながら何とか耐えていた。
「タツキ? ああ、生きていたのですね。嬉しい」
突然そう言われて抱きつかれてしまった。良く見るとその女性は俺が助けたあの第2王妃だった。
何故だ、何故ここまで面倒事に捲き込まれる? 何故ここにお忍びの王妃がいる?
ダリアとラッパシュ夫婦が走ってきてそのまま平伏する。
「お久し振りでござます。
マダラカス国 リンツ辺境伯の長男。ラッパシュ ドント リンツでございます。
お会い出来て嬉しく思います」
その言葉に抱きついていた王妃がハッとして俺から離れ服の乱れを直す。王妃が離れた事で俺もダリアの横で平伏する。
「ラッパシュか、久しいですね。
タツキ、先程はすみませんでした。あのような爆発は逃げるとき以来で驚いてしまいました」
「いえ、お元気なお顔を見れて嬉しく思っております。それより、護衛の兵士もなくどうされたのですか?」
王妃が顔を背ける、おそらく窮屈だと言う理由で無断で出てきたのだろう。
そこに従者の老人がやって来る。
「奥様、何時までもそうお転婆であられると困ります」
「う、すみせん」
従者があまりに素直に謝る王妃を見て目を丸くする、その姿から想像するにもっとわがままなのだろう。
俺が立ち上がると老人を見る。
「怪我は無いか?」
「問題無い、何とか伏せて免れた。それより良く爆発が分かりましたな?」
「俺は兵役上がりだ。以前レジェンダス国の特殊魔道具を目にしたことがある。
それと酷似していた。兎に角2人に被害が無くて良かった」
「「レジェンダス国」」
王妃と老人が顔を見合わせる。
「それよりタツキ。わらわの馬車が使い物にならぬ」
「ハッ! ラッパシュ殿、同行しても良いだろうか?」
「当然です」
するとラッパシュの妻のアッパスが王妃をエスコートして馬車に入る。
それを確認してラッパシュが従者の老人を馬車に乗せた。
「ダリア、5分程ここを頼む」
「了解」
王妃が俺に抱き付いた事もあってかダリアが少し不機嫌に返事を返してきた。
街道から少し離れた場所に第2旅団とおぼしき兵士が一人倒れていた、抱き起こすと直ぐにヒールポーションを飲ませる。
「グッ。 す、すまない。誰か知らぬが感謝する」
「他に仲間は?」
「来ていない、少し街の外を見たいと言うことだったから不要だと思った。実際、ここは護衛も普段は要らない場所だ」
「そうか、俺は兵役上がりの冒険者だ。さっきの爆発はレジェンダス国の魔道具に酷似していた。爆発してしまったから、詳細はわからないがな」
「なぜ、魔道具だと?」
兵士が俺を見て困惑している。
「元急襲隊の所属だ、レジェンダス国の魔導具にはほとほと困らさられたからな、まだ記憶しているよ。
どうだ、動くのが難しいようなら後ろの荷車に乗っていくか?」
「お願いしても良いか」
第2旅団の兵士をおんぶしてタッカンの乗る馬車に乗せる。
「レタス。箱の中にヒールポーションが入っている。
この人に後2本渡してやってくれ」
「ハイ。まだ治っていないのですか?」
「表面だけだ、悪化する前にヒールポーションで治した方がいい」
その後ラパッシュの馬車を走らせユーリシア辺境伯都市に入り、そのまま馬車を進めユーリシア辺境伯の屋敷の前にくる。
「到着しました」
王妃をエスコートして馬車からおろす、すると兵士が驚いて笛を鳴らす。
緊急時の笛だ遠くまで音が届く。
一気にユーリシア辺境伯の兵士達が入り口に集まり、緊張した表情をしている。まさに一触即発の緊張感だ。
それを見たラパッシュが馬車を降りる。
「私はマダラカス国 リンツ辺境伯の長男。ラッパシュ ドント リンツだ。
またまた、街の外でお会いして同行して頂いた」
兵士の一人が平伏する。
「恐れいります、王妃をお連れ頂感謝いたします。
ですが、王妃は別の馬車を使っていたはずです。王妃の馬車は何処に有るのでしょう?」
「それは、私が答える」
後ろの馬車に乗っていた兵士が降りてきた。
「団長!!」
兵士達が騒ぎ出す。
「突然、護衛に付いた私が襲われた。それは見たことの無い鎧をまとった3人の騎士だ。
王妃に害がないように街道をそれて対戦していた時に、馬車の爆発が起きてしまった。
私もかなりの重傷を追ってしまったが、たまたま通りかかったラパッシュ殿下の従者の方にみんな助けられた」
簡素だがそう説明をした、すると一人の若者が出てくる。
「私は、ユーリシア辺境伯の長男。ガルーダ サークル ユーリシアだ。
ラパッシュ殿。この度は叔母上をお連れ頂感謝いたします。
少しお話もしたくございます。ゆっくりとしていかれては?」
「ガルーダ殿。お心使い感謝いたします。
現在、我々は至急の用があり急いでいる所です。次回の共同訓練の際、お会い出来る事を楽しみにしております」
「分かりました。当主は現在、王都におり正式な挨拶も出来ずに申し訳ございません。
共同訓練を私も楽しみにしております」
「あ、待つのじゃ。
そなたの妻にこれをやろう、冒険者家業は不安定だ。何か有ればこれを持って私を訪ねなさい。
助けてもらった恩もある、一度は何でも話を聞こうぞ」
そう言うと着けていたネックレスを外して平伏していたダリアに渡した。
「そなたは良い夫を持った。これは妾からの褒美だ」
そう言うと妖艶に笑う。
俺はその日、宿でダリアに物凄く文句を言われると思っていた。
それが何も無かった、なんかそれで良かったのだろうか? ダリアの優しさに感謝しつつ。嵐が過ぎるまで大人しくしている事を心に誓った。




