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第三話 あーはいはい。わかるわかる。

「というわけで、今日から入ったヒヨリさんです。みなさんよろしくお願いします」


 まばらな拍手が巻き起こる。

 あれから数時間後。冒険者ギルドアナシスタ事務所の中で私はパジャマ姿のまま頭を下げることになっていた。


 なにがどうなったのかは私もわからない。リアナから担当者に繋げられ、面接をし、また人が交代して面接し、そこからリアナとともにギルド事務所の会議室で職員から渡された弁当を食べながら数十分待ったあと。

 晴れて私の採用が決まった。


 これ、辞退とかできます?


 ただほかに行く当てがないのも事実で、更に言うと凡庸らしい私はほかに就活でアピールできることもありそうになく、とりあえずはここでお世話になることにした。

 なにも知らないので怖いは怖いけれど、職も無く路頭に迷うのも怖い。

 事なかれ主義の私にぴったりの職業でもあるかもしれない。

 わざわざ異世界まで来てやることじゃない気もするけど。


 とりあえず休憩室兼ロッカーに案内されたが特に預ける荷物もなく、しかしさすがにパジャマ姿は気になるのでなにかないか聞くと、支給品の作業服を渡された。背中に「冒険者ギルド アナシスタ事務所」と記載されている。


 あーめっちゃ見たことある。毎日着てたよ、こういうの。

 意図せず団体職員味が増してしまった。

 ていうかこの世界にもあるんだ。作業服。


 などとどうでも良い感慨に浸っていたら、休憩室に人が入ってきた。


「大丈夫? 私、ユリ。同じ総務課だから、わからないことがあったらなんでも言ってね」


 にこりと笑う同じくらいか少し歳上に見えるピンクの髪の女性。良かった! 意外と同僚はまともなのかも!


「ありがとうございます! 実は今日この世界に来たばかりで……」

「ああ。それで急にうちに来たんだね」

「あの……、大変失礼かと思うのですが、ここ、ずっと求人出てたって……」

「あー……」


 ユリさんが困ったように笑い、


「あ、今ちょうど部長の出張お土産があるんだ。食べる? クッキーなんだけど、知ってるかな?」

「今話題逸らしました?」


 笑顔のまま固まる。


「ここ、人は入ってくるんだけどすぐ辞めちゃうんだよね……」


 ほらね!! やっぱりね!! 知ってた!!

 さっきの説明だとここ給料は高くないけどボーナスは少額でも毎回出るし、国立施設だからクビになることもないし福利厚生も最低限あるんだよね?

 それでもみんな辞めるんだよね?


「ちなみにどんな理由で……?」

「実は、ヒヨリさんの指導担当のツボネさん……その、ちょっと厳しい人で……。あっでも悪い人じゃないんだよ!? すごく仕事も出来るしベテランだし!! でも、その、なにか困ってることがあったらすぐに言ってね……?」


 あーはいはい。わかるわかる。

 大丈夫です。理解したんで。濁さなくても良いです。

 これあれだわ。

 パワハラだわ。

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