第二話 なんかひとつくらい才能あったっていいじゃん!
「…………」
リアナは黙ったまま宙に浮かぶホログラム画面を眺めていた。なんも言わない。ずっとずっとなんも言わない!
これはもしかすると、もしかして。
私ってば本当に聖女だったり……!
教会奥の別室に入り、リアナに名前を伝え、光る魔法陣(めちゃくちゃファンタジー!!)の上に立たされ約五分。
魔法陣の光は消え、おそらく適性検査とやらは終わったはずなのにリアナは難しい顔をして画面を見つめている。
「えっと、ヒヨリさん……」
「はい」
「えっと、驚かないでほしいんですけど」
「はい」
はいはいはいはい。大丈夫です。
そちらが転移者に慣れているようにこちらも異世界転移の上辺の知識くらいはあるんで!
「ヒヨリさんのスキルは……凡庸です」
は?
「えっと、もう一度言ってもらっても……?」
「凡庸です。特にこれと言って秀でた能力はありません。冒険者などの特殊なスキルが命綱となる職業は止めたほうが良いでしょう」
えっ。
あれよね。あとで何か未開のスキルが見つかって大変なことになるやつよね?
知ってる!!
でもうそういうときって大抵無能とかだよね? 凡庸て? あまりにもあまりじゃない? なにもないわけじゃなく?
「落ち込まないでくださいね。たまにあることなので」
たまにしかないんだ。っていうかたまにあるんだ? 特殊ですらない?
「前の世界で得意だったことやしていたことはありますか?」
「ええっと……事務職をしていました」
「ああ! それなら、冒険者ギルドが事務職員を募集していたのでご紹介できますよ!」
えっ。
「事務職ですか……?」
王室の秘書とかじゃなくて? 教育係とかでもいいよ? なに教えられるかわかんないけど。 内勤ってもうちょっとなにかないの?
「ええ! ああ、良かった! あのギルド事務所、ずっと求人が出てたんですよ! みなさん喜びますよ!」
ちょっと待って。ずっと求人出てたの? それってヤバイやつじゃない?
「あの、申し訳ないんですけど、ほかには何が……」
「さあ行きましょう! きっとすぐに決まりますよ! 良かった良かった!」
リアナが私とがっちりと腕を組む。そして私の言葉を聞くことなく、早口でペラペラと今後の流れを説明しながらハイテンションでずんずんと引きずっていく。
ドレスや甲冑、ローブの人々が闊歩するファンタジー世界で、現代日本のパジャマ姿な私は奇異の目に晒されながら。
あれ、ここもしかして教会じゃなくてわりとブラック系のハロワかなにかなのかな?




