第一話 転勤は突然に
「え……転勤、ですか?」
都合日和、女、二十三歳。とある団体職員として働いてもう少しでまる一年。突然転勤話が降って湧いた。
勤務地はド田舎。そのうえパワハラで有名なお局様がいる事務所。
えっいやだいやだいやだ!
幼稚だとか我慢が足りないとかそんなのどうでもよくて、シンプルに嫌!!嫌なもんは嫌!!
しかし嫌だなんて言えるわけもなく、転職するほど能力も勇気もなく。
ワカリマシタ……と渋々頷いて家に帰り、ゲームをしてネットをして慣れないお酒を飲んで、それでも布団の中でもんどり打ちながらなんとか眠りに落ちた。
もちろん自分の家で。
だけど。
「どこ……ここ……」
目が覚めた場所は、見知らぬ建物の中だった。
体を起こしあたりを見渡す。建物奥に祭壇のようなものがあり、ずらりと長椅子がいくつも並んでいる。頭上にはアーチ上の高い天井。天井近くの壁には色とりどりのステンドグラスがはめられ、光が降り注いでいた。どうやら教会のようだった。その一角で私は寝ていた。
えっなんで?
記憶をたどるが何も覚えていない。ということはあれだ。夢か。
「お気づきになられましたか」
はっとして振り向くと、シスターと思われるグレーと白の服装の女性に声をかけられていた。
女性がにこりと笑う。そして私は気がついてしまった。女性の髪が鮮やかな水色なことに。
これは、もしかして……?
「私の名前はリアナ。そしてこの街はアナシスタといいます。はじまりの街と呼ばれています」
「はじまりの……街……?」
「そうです。多くの転移者がこの街に現れるので、はじまりの街です」
「転移者って、」
「あなたのように、別の世界から来られた方のことですわ」
私が疑問をぶつける隙もなく、シスターはスラスラと説明を述べていく。
それはもう慣れた様子で。
「安心してください。慣れるまでは教会でお世話をすることも可能ですわ。できれば早めにご就職なさることをおすすめいたしますが」
「えっと、その、就職って、」
「冒険者や商人、踊り子から研究者まで。とはいっても元の世界と違うところも多いでしょうし、おわかりにならないでしょうから、適性検査をおすすめいたします」
リアナはそう言ってにこりと笑った。
えっもしかして、その適性検査で冴えない事務員だった私の秘めれた才能とかが見つかっちゃうってこと!? 聖女とか言われたり追放されたり処刑されそうになったり溺愛されたりしちゃうってことおおおお!?
私なんてなんの才能もない……って思ってたけどやっぱりなにかあったのね!!どうりでなにをやってもダメなわけだ!!
「もしよろしければご案内……」
「おっお願いします!!」
気がついたら、私は食い気味に返事をしていた。
おっけーおっけー。理解理解。
ここから私の逆転劇がはじまるわけね?
夢でくらい逆転しないとやってられないよね!!
はじめまして。うみうしです。
普段は別名義で公募に出していますが、息抜きに不定期連載できたらなと思っています。よろしくお願いします( ゜∀゜ )