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第36話 劇的を毒す


 目覚めたナクアを待っていた光景は糸で簀巻きにされ口を塞がれたおじさん達の悲壮感漂うピラミッドだった。


「キモ」

「おっ!起きたじゃん! ほら、コイツらあーしが絞めといたからもう大丈夫だよ!」

「あ、ママ……これ、キモいけどいきてるの?」

「それなwww キモいけど多分生きてる!あーしの糸がアレにクリティカルして気絶してるだけっしょ! ていうか気絶とか大袈裟で毒ww」

「……キモ。」


 女性の2人には当然分からないが全裸でアレにクリティカルした時の痛みは想像を絶するものである。ちなみにティルぴの糸玉は時速300キロは出ている。これは新幹線の最高速度とほぼ同じで、スポーツならプロのゴルフ選手のドライバー初速に近い。糸玉は軽く柔らかい素材のため一概にゴルフのドライバーショットが至近距離で直撃したレベルと例える事は出来ないが男性なら話だけで冷や汗をかいてもおかしくない。


「なんかつかれた……ぎゃくにキモすぎておじさんはどうでもいい。それよりも……へびおおきい!!すごいね!!」

「あ、わかっちゃう? やばいよね! 流石にこのサイズはアガるww 蛇バイブス高ぇわマジで。」

「わかる。デカすぎて、もはやでんしゃwww」


 そんな散々な言われようのおじさんピラミッドの後ろには巨大な蛇が力無く横たわっていた。その大きさは電車は電車でも数年前に廃止された二階建て新幹線くらいの大きさで、テンションの上がったナクアは口を開けて嬉しそうに観察していた。そして、この新幹線の様に話の流れを置き去りにする切り替えの速さがナクアの地雷的な長所であり短所といえる。


「どうやってもってかえるの? きるの?」

「ん? 面倒だし普通にそのまま引っ張ってくけど? 」

「まじか……あ、このキモいのは?」

「あーそれな。ナーちゃんいるし持って帰りたくないけど、刺客なのかフラウ達に確認しないとだよね。でも呼ぶにしてもここに置いといたら秒で喰われるし……一旦土に深めに埋めとく?」

「ママのはっそうがほぼヤクザでウケるwww」

「ヤクザ? まあでも土の中でどの道食われるか。だる。」

「うーん……あっ! ナーちゃんわかったかも!」


 ギラギラとした笑顔で手を挙げる幼児の言葉にフォビアの森が僅かにざわめいた。



 ****


 ※ここから概要で説明した地雷女の暴走により、小説内容を一部変更してお送りします。



 ――陸の孤島と化したフォビアの森の奥深く、そこに男15人で監禁生活を送る刺客達が今回の依頼人。1歩踏みいれば森は壁も床もない野ざらしの空間、そして近隣の木々によって陽の遮られた薄暗い環境、なによりも凶暴な動植物が自生し常に危険と隣り合わせの彼ら。「1人も死なず、土に埋まらない方法で監禁されたい。」今回そんな無理難題に2人の匠が名乗りを上げた!


 ギャルの匠

 一児のアラクネママ ティルぴ(年齢不詳)


 パンツの匠

 元高校生地雷赤ちゃん ナクア(生後4日)


 史上初となる親子でもある2人の匠がまさかの豪華共演。刺客達の夢のため必死で作り上げた15分間の軌跡をどうぞご覧下さい。



before

 樹齢1000年を超える木々と背の高い草で覆われた監禁場所。屋根、壁、床、何も無い野ざらしだった薄暗い空間が……。


after

 なんということでしょう。あの野ざらしだった劣悪な監禁場所が頑強な白い蜘蛛の糸によって完全に覆われた匠の監禁スペースに早変わり。小さな虫や毒のある胞子を封殺し、内外装を全て白にする事によって明るい印象を与えつつ、目覚めた男達に現実味のない異質感と漠然とした虚無感が与える事に成功しました。また刺客を拘束していた糸を外し、広々とした音を吸収する何も無い空間に唐突に追いやることでじっくりと己の無力を思い知る完全な隔離空間を演出しています。そしてここで匠からの粋なプレゼント、中央には大きく太った芋虫がこんもりと盛られています。


before

 そして1番の問題だった周囲に生息する危険な動植物。360度全てから死の危険があるこの難題に対して匠が出した答えは……


after

 なんということでしょう。監禁スペースの周りに美しい蜘蛛の巣が張り巡らされ、大きな生き物の侵入を完全に防いでいます。さらに防ぐだけではなく刺客達の匂いを察知して襲い掛かる生き物を問答無用で粘着性の高い横糸ウェフトで捕え、なんと匠達の今晩のオカズに出来てしまうのです!これには思わず匠の笑顔も溢れますね。


 そして気になる今回の費用は……


 ・芋虫86匹 無料

 ・蜘蛛の糸 無料

 ・人件費 赤獅子


 つまり、なんと費用合計が休憩で食べた赤獅子のみ。匠達のアイデアによって希望予算内で監禁スペースが完成しました。



 ――1時間後、気絶していた刺客が目覚め新しい監禁スペースと初のご対面をしました。そして、なんということでしょう。匠による股間へのショックによって正気を取り戻しています。


「う……ここは? 真っ暗だ……なんだここ??」


「ん??……え、あれ? 自分の声も何も聞こえない……も、もしかしてここは死後の世界か?」


「ハアハア、うわ!?……なんだ?……何か……大量の……供物?(芋虫)が置いてある。ここはお社かも知れない。ダメだ……自分の心臓の音しか聞こえない……おい誰か返事してくれ!! 何でもいいから音を聞かせてくれ!!うわぁあぁぁあ、頭がおかしくなりそうだ!!」


「「……」」


 匠の狙い以上に刺客達は激しく混乱している様子です。真っ白と言っても外界から閉ざされていては光もなく何も見えない暗闇でしかありません。そして内外の音が遮られた空間は恐ろしく静かで徐々に刺客達の精神を破壊していきますね。


「「……か……か、か、かみさまぁ」」


 ……フォビアの森にある劣悪な監禁場所。それが匠の手によって安心・安全で数分で精神崩壊を引き起こすとっても最低な楽園になりました。


読んで頂いてありがとうございます!

もしご感想があれば是非聞かせて下さい!


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