第二話 鉱山の虐殺
続きです。
追記:12月14日、少女の口調に違和感が出た為、修正。
鉱山の見張りをしていた番兵は、夜道を歩く不審な人影を見つけた。彼は警戒し、武器を構える。しかし、その人影は歩み続ける。
「止まれ!貴様は何者だ!?」
人影は答える。
「私の名前は"リベルタス"」
「!?」
男の背筋に悪寒が走る。照明に照らされ露わになった人影の顔を見たからだ。
男は思わず後退りをする。その顔は紛れもなく、自分が殺した筈の奴隷のものだった。
そして同時に、男は自身の胸に鋭い痛みを感じた。反射的に自身の胸を見ると、そこには奴隷の手刀が突き刺さっていた。
「なっ!?」
男は驚愕の声を上げる。
そして自分の身に何が起きたのか理解すると同時に、地面に倒れ伏す。彼の意識は永遠に途切れた。少女は満たされたような表情を見せると、鉱山の門の中に入っていった。
夜間でも鉱山の中は労働する奴隷達がひしめいている。彼らは皆一様に疲れ切った顔をしており、中には小さな子供もいた。
そんな彼らを、少女はただ黙って見つめている。
「おい、あいつ、もしかして?」
「あの時の?」
「どうしてここに!」
少女の姿を確認した奴隷達はざわめく。彼らにとって少女はもう死んでいるのだから仕方が無い。
「……私は今、機嫌が悪い。消えろ。」
少女は静かに言い放つ。すると騒いでいた者達も大人しくなるが、
「やっぱり殺すか。」
少女は一人の奴隷に瞬間的に詰め寄り、伸びた爪で首を跳ねた。首を失った死体が倒れると、それを目にした近くに居た奴隷の一人が悲鳴を上げる。
「うるさい。」
少女はそう言うと、手近にいた奴隷の首を人外の腕力で締め上げる。骨が折れ、肉が潰れる音が響く。
「……」
少女は無言で手を離すと、次の獲物を探すように辺りを見回す。
「ひっ!」
誰かが恐怖に怯えた声を出すと、それに釣られるようにして他の者も騒ぎ始める。
「化け物だ!」
「死にたくねぇよぉ!」
「逃げろぉ!!」そう言って逃げ出す奴隷達を、少女は一人残らず殺していく。
逃げる者を叩き潰し、抵抗した者を切り殺し、泣きながら許しを求める子供を容赦なく解体する。
そうして奴隷達は一人残さず虐殺され、死体の山と血の川のみが出来上がった。
「……」
凄惨たる光景を見て、小さく微笑む。その笑みはどこか狂気じみたものだった。少しの間現場は沈黙に包まれていたが、やがて遠くから幾つもの足音が聞こえてきた。
「い、一体これはどういう事なんだ!?」
若い男が驚愕する。
やって来たのは番兵達だった。数は二十程で、その中には隊長らしき人物も居る。
「……お前の仕業か?」
隊長が問う。
「そうだと言ったらどうするつもり?お前ら如きに私が破れるとでも思っているの?」
少女は両腕を広げ、自信満々に答える。
「……」
少女の言葉を聞いた番兵達は、無言のまま槍を構え直す。そしてそのまま少女に向かって一斉に突撃するが、全て無駄に終わる。
先陣を切る番兵の体が突如破裂し、内臓や血を吹き出しながら絶命する。少女は腕を振り抜き、その一撃が先頭の兵を粉微塵にしたのだ。
続いて後続の兵が斬りかかろうとするも、少女はそれを軽々とかわす。そしてすれ違いざまに爪を振い、鎧ごと切り裂く。たったそれだけの攻撃で五人の命が刈り取られた。
「怯むな!数ではこちらの方が上なのだぞ!」
隊長が叫ぶ。
確かに彼の言う通り、番兵達は全員が武装している。それに対し相手の少女は何も持っていない。だがそれが何だというのだろうか、相手は一瞬で数人の命を奪えるほどの怪物だ。武器の有無など大した意味は無い。どうしても士気が下がってしまい、何人かは怯えている。
「チッ、仕方がない、ここは俺が出るしか無いようだな……。」
隊長は呟き、覚悟を決める。そして彼は剣を構え、少女へ突進する。
「ウオォォッッ!!」
雄叫びを上げ、正確に少女の頭を刺突する。
「ぐうッ!」
幸運にも刺突は少女に命中し、少女は脳漿をぶちまける。
「死にやがれ! この化物めが!」
隊長は勝利を確信する。がしかし、
「……この程度で私を傷つけたつもり?」
少女は不機嫌そうな表情になり、頭に刺さった剣を引き抜く。
「!?」
少女は既に傷を治していた。
彼女の身体は契約により、驚異的な再生能力を手に入れていた。
「さあ、私をもっと楽しませて?」
少女が笑うと、隊長の屈強な精神は恐怖に支配される。
「う、ああぁ……!」
もはや戦う意思すら無くし、剣を落とし、その場に崩れ落ちる。
「なんだよ、面白くないなぁ、死んで。」
少女は無慈悲に言い放ち、爪を振るう。それはいとも簡単に隊長の首を跳ねた。
「これで終わりかぁ……」
少女はつまらなさそうに言い、爪に付いた血液を払う。
「あ、あの隊長が…!」
「そんな……」
残された番兵達は狼籍し、完全に戦意を喪失してしまう。
「全く、こんな雑魚共に私は虐げられていたのか……」
少女は呆れたような表情をし、ため息をつく。
「じゃあお前ら、死ね。」
少女はそう言うと、近くに居た番兵達を次々と殺していく。番兵達は今まで虐げてきた奴隷のように何も出来ずに死んでいった。
しばらくして、番兵を殺し終えた少女は鉱山で一際大きい建物、奴隷の主人の館へ向おうとした。
しかし、
その時、少女の背後から声がした。
「悪いが、これ以上暴れられたら困るんだよ。」
振り向くと、そこには騎士のような格好の男が立っていた。
耳元で吠え声のような囁きが聞こえる。
『不味イぞ、「聖剣」ダ。』
男の腰元には、輝くような、美しさをも感じるような剣が差してあった。
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