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内気少女といにしえの恋  作者: メイズ
城跡に立つ高校
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僕の見る景色〈島田見影〉

 僕は幼少の頃、他の人たちは、自分とは見えている景色が違っているなんて思いもしなかった。

 

 まさか見えていないなんて。

 

 父親も母親も兄弟たちも見えていないだなんて、気づかないでいた。だから、みんなが僕をからかったりいじめたりしているんだと勘違いしていた。

 


 

 

 ーーー何でなんだろ? なぜみんな知らんぷりしてるんだろ? まるでいないかのように無視して! 誰かに意地悪したらいけないって僕にはいつも言うくせに。

 

 みんなみんなそうなんだ。いつもいつも! 言ってることとやってることが違うんだ。

 


 あの買い物袋を提げているおばあちゃん。

 

 横に心配そうに付き添っているおじいちゃんが色々話かけても知らんぷりしてる。時には荷物をかわりに持とうか、と言ってくれてるのにおばあちゃんは渡そうとしないで、そのままゆっくり歩いている。

 

 ーーーケンカでもしたのかな? これじゃおじいちゃんがかわいそうだ。

 

 すぐ後ろを母と手を繋いで歩く僕は、そのおばあちゃんとおじいちゃんを追い越した後も振り返ってその二人を見ていた。

 

 するとおじいちゃんと目が合った。すると僕に言った。

 

《坊や、すまないがこのばーさんに荷物が重たくないか聞いてくれんかの? こいつは膝が悪くてのう。転んだらいかんし》


 

 僕は母の手を振りほどいて、おばあちゃんに話しかけた。

 

 

「おばあちゃん、その買い物袋重たいの?」

 

 おばあちゃんは微笑みながら僕と母親を交互に見てから言った。

 

「あらあら、優しい坊やだこと。ありがとうね。おばあちゃんは大丈夫よ」

 

 母とおばあちゃんは微笑みを交わしている。

 

「優しい息子さんですこと」

 

「ありがとうございます」  


  

 僕はおじいちゃんに向かって言った。

 

「おじいちゃん、おばあちゃん大丈夫だって!」

 


 微笑んでいた母はスッと表情が抜け落ちた。

 

「‥‥‥だって、おばあちゃん膝悪いからってこのおじいちゃんが‥‥‥。さっきから何回も話かけてるのに。知らんぷりしてたらいけないんだよ」


 母は僕の手を取ると、無言でサッと早足で歩き始めた。見上げるその顔はすごく怖いことになってる。

 

 手をぐいぐい引っ張られながらも気になって振り向くと、おばあちゃんはそこに立ち止まったままだった。買い物袋を地面に置いて、指で目を拭っているのが見えた。その横でおじいちゃんがあたふたとおばあちゃんに何か言っている姿があった。



 

 日曜日の午前中。小学生の兄二人にくっついて公園に来ていた。

 

 兄たちは二人でキャッチボールをするので、まだチビで下手くそだった僕は仲間外れにされた。だから一人で鉄棒で遊ぶことにした。

 

 出来なかった逆上がりの練習をしていたら、自分と同じくらいの、見たことが無い4、5才の男の子がどこからともなくやって来た。

 

《一緒に遊ぼうよ。ぼく逆上がりできるよ! 教えてあげようか? 僕はタクヤ。みんなターくんって呼んでいたよ》

 

 

「ほんと? ターくん。僕はミカゲ。どうやったらぐるって出来るの?」

 

《えっとね、そっちの一番低い鉄棒でやるんだよ。で、地面を思いっきり蹴るんだ。いい、見ててね。こんな風に‥‥‥》

 

「へぇー、すごいね。じゃあ僕もやってみる!」 

 


 その子が教えてくれた通りにしばらく練習してたら、なんとか1回だけ成功した。 



「やったぁー! 今の見た? ありがとう、教えてくれて」

 

《よかったね。ねえ、もっと遊ぼうよ。ミカくん。僕、誰かと遊ぶの久しぶりで‥‥‥》

 

 

 そこに兄たちが戻って来た。 

 

 

見影みかげは一人でよく飽きずに鉄棒してるなぁ、出来たみたいじゃん。良かったな」

 

「一人じゃないよ、ター君と一緒だよ」

 

 

 一番端の一番高い鉄棒にぶらぶら ぶら下がっているター君を指して言った。


 兄たちが来たので僕から離れたらしい。

 

 

「何言ってるんだよ? わけわかんない奴だな、見影は。いっつもさぁー」

 

「見影は友達いないんだ、こいつ。いつもおかしなことばっか言ってるから馬鹿にされて。もうちょいしっかりしろよ。にーちゃんたちだって、いつも見影と一緒にはいられないんだからな」

 

 

 一番上の兄が僕の頭をポンポン叩いた。


「さあ、帰るぞ。もうお昼ご飯の時間だよ。あの時計が12時になったら、一回家に帰んなきゃ母ちゃんに怒られる」

 

 

 ターくんはもう僕のことは知らんぷりで、1人で鉄棒をくるりくるりと回っている。 


 兄二人に両脇から手を繋がれ、公園の出口に向かった。

 

 

 ーーーターくん、兄ちゃんたちがシカトしたから、怒ってないかな? きっと兄ちゃんたちはお腹がすいて早く帰りたくて知らんぷりしたんだ。

 

 

 振り返って見ると、たー君は鉄棒のバーに器用に座ったまま、僕に手を振ってくれた。

 

 がっかりしたような顔で。

 

 

 

 物心ついてから、そんなことを何回か経験し、さすがに私も察しがついた。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()ということに。

 

 

 両親はそれを恐れ否定して、僕のシックスセンスは無いもののように無視していたし、兄や回りの人たちは、僕を妄想癖の強い変なヤツだと思っていただけだった。

 

 僕は自分の能力に気がついてからは、立ち振舞いに気をつけるようになって行った。

 


 それまで、町の中には、いかにも時代から外れた格好をしている人も、刀をぶら下げた着物姿の人も、銃を下げた軍人のような人達だって、たまにはそういう人もいるものだと思っていた。それに、僕に絡んで来る霊はそれほどいなかったから、気にすることもなかった。

 

 

 僕には、彼らも生きている人間と全く同じに見えていた。

 

 今だって。

 

 

 僕は、学校内や知り合いの間では『独り言おじさん』、と 陰で言われているようだ。

 

 確かに周りから見ればその通りだね。

 気をつけてはいるつもりなのだけれど (´▽`;)ゞ

 

 

 さすがに僕も齢50を越え、経験を重ね、幼い頃よりか霊というものが解って来たとはいえ、いまだに困惑させられることがある。

 

 例えば、最近ではコスプレイヤーという変わった格好をした若者が増えていること。さらにハロウィーンに近づくとさらに仮装したたくさんの人が現れる。これらに僕は非常に困惑させられるのだ。

 

 これらは生きている人間なのか、霊が現れているのか?とっさに判別は難しい。

 

 霊には陰は出来無いけれど、普段でも日向にいない限りはそうそう目立つ陰など出来ないし、室内では なおさらだ。幽霊が現れる時間だって昼も夜も関係無い。 24時間OKなんだ。

 

 

 だから僕の場合、周囲の人がその人を認識している素振りがあるかどうかで判断するしかない。しかし、その周囲の人も霊だという可能性も稀にもあるため、確実とは言えないのだが。

 

 僕の能力ではそれが限界。

 

 もっと僕を上回るシックスセンスの持ち主ならば、僕のような、こんな見分けの苦労は無いのかもしれないね。

 

 でもね、幸いなことに僕には人間の霊しか見えないようで、ゾンビのような恐ろしいものは見たことが無いのは有難いところだね。

 

 

 僕の場合、幽霊も大抵は 生きている人間と同じように見えるのだが、はっきりとこれは霊だとわかることも稀にある。

 

 霊は、実体化しているためにはそれなりにエネルギーが要るため、足りなくなると姿が薄れて来るからだ。

 

 そうなったら、大抵の霊は諦めて成仏に向かう。魂が消滅してしまうそうだ。そしたら輪廻転生叶わず無になってしまうらしい。

 

 しかし、霊力を自ら集める事が出来る特別な霊は消える事は無い。

 

 そういう特別な霊は大抵は、霊界生物の誰かしらの御加護を得て個人的に庇護されているとか、霊力を自ら集めることの出来る能力を彼らから授かった霊たちだ。

 

 

 この学校にたむろしている落花生おかき 城ゆかりの幽霊たちは、その特別な霊だ。

 

 

 でもね、僕だってここの幽霊たち ひとりひとりの事情も歴史も そこまで深くは知らないよ。赤の他人なのだから。

 


 そして今、僕はこの落花生高校で司書教諭として過ごしている。

 

 ここは僕でなければ務まらないのだ。大体慣例で6年前後で違う学校に移動になるが、結局は次の年にはまたここに戻って来ることになる。

 

 他の司書教諭が就いた場合、数ヵ月で自己都合退職したり、鬱病になったり、移動願いを早々に提出することになるからね。

 

 

 落花生城の幽霊たちはどうやら僕以外の司書には厳しいらしい。

 

 確かに、霊を目視出来る僕の方みたいなのが1人くらいいた方が彼らには何かと都合が良いのだろう。

 


 僕が今、やれなければならないことはここの後継者を見つけておくことなんだけど。これはなかなかね、難しい問題なんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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