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内気少女といにしえの恋  作者: メイズ
諸行無常な恋をして
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明日に備える

 冬雅の誤解は解けたものの、雅秋の不機嫌は収まらないでいた。



「ったくさぁ、こんなネズミは迷惑なんだよ! 首輪とリードとハーネス24時間つけとけよ!」


「無茶ぶり言うな! アシュリーに罪は無い。でも、ホントごめんね、ミアさん」


 冬雅はミアには平謝りだ。


「いえ。小さくても生き物の世話って大変なんですね‥‥‥」


「トーガはミアと俺への迷惑料として、ナッツメッセの夏イベント、ナイトメアー ブラッディ ホーンテッドハウスのチケット2枚な!」


 雅秋はここぞとばかりにちゃっかり抜け目無い。


「ううっ‥‥バイト日にち増やさなきゃな‥‥‥」


 冬雅が呻いた。



「ただいまー」



 玄関のドアが開く音が響いた。


 トントン階段を上がってくる足音。



「ミアさーん! 冷たいの買って来たよー。お菓子もついでに買って来た!」


 開けっ放しの冬雅の部屋の入口に、重そうなレジ袋を下げてシュカが戻って来た。


「ん?」


 シュカは、入り口の本棚の乱れを見て取り、そのまま3人を見渡す。



 乱れた髪のミア。


 不機嫌を晒した雅秋の顔。


 空嘯(そらうそぶ)いた風の冬雅。



「あー、やっぱりねー‥‥‥」



 アシュリーのケージを覗いた。


「あー‥‥ネズミ、見つかったんだね。よかったねー」


 しれっと棒読みで言う。



 雅秋がそれに噛みついた。


「シュカ! お前、察知して逃げやがったな! ミアを置き去りにしてっ」


「ガッシュだっていつもそうじゃん。こんなん毎度付き合ってらんないよ」



「ミア、俺の部屋に行こうぜ。シュカ、その袋寄越せ!」


 雅秋がシュカが買ってきた袋を奪った。


「うわっ! 横暴。パワハラ出た!」



 ここで雅秋に兄妹げんかに突入されては困ってしまう。


「あの、私帰ります」


「げっ、なんだよミア! 今来たとこじゃん!」


「ごめんなさい、甲斐先輩。明日の準備があるから、やっぱり早めに帰りたいの‥‥‥」



 申し訳なさげに雅秋の目に訴えた。


 雅秋はミアの気持ちを察してくれたらしい。



「‥‥‥じゃあ、駅まで送ってく」


「ううん、大丈夫です。道は大体覚えてるし、わかると思うから」





 雅秋たちに玄関まで見送られた後、ミアは見知らぬ街を一人歩きながら考えた。


 ミアは索と約束した事を至急実行に向けて手筈を調えなければならなかった。



 ──急に明日の朝、久瀬先輩を呼び出すなんて出来るのかしら?



 ミアはホームで、電車を待つ間にゼツガにメッセージを送った。



《遅くなってすみません。急なのですが、明日の午前中空けることは可能でしょうか? 名波先輩が例のことについて、久瀬先輩に直接説明したいそうです》


《明日の朝8時半に中庭の池の横の大きなスズカケの木の下で待つように言っています。二人きりで話したいそうです。知りたいならこれが最初で最後だと言ってます》


《出来ましたら、それが終わった9時ごろ、私と会って頂けませんか。この間の絵のお礼と、先輩を置いて逃げてしまったお詫びをしたいです 真夏多ミア》



 ミアが自分の最寄り駅に降り立ってからケータイを見ると、ゼツガから了解のメッセージが届いていた。



 ──名波先輩、久瀬先輩にどんなお話をするつもりなのかな?


 気になるけど、たぶん後から久瀬先輩に聞けるよね?



 ミアは帰り道の途中にあるスーパーで買い物をした。


 家に着くと買って来た材料で早速ゼツガのために得意のチョコブラウニーを焼き、焼き上がる間に刺繍糸でミサンガをせっせと編んだ。



 ──久瀬先輩が希望の大学に合格しますように。そして、先輩にも素敵な出会いがありますように‥‥‥



 ミアはゼツガに似合いそうなオリーブグリーンとオレンジ色を使い、心を込めてミサンガを編んだ。



 きれいな袋に入れて一言書いたカードを添える。


《素敵な絵をありがとうございました。久瀬先輩のことは大切な思い出となりました。受験、頑張って下さい》




 ──これなら、お礼を言いつつ、告白の返事もさりげなく伝えられるよね?



 ミアは明日の準備が出来るとずいぶんとほっとした。



 ──何だか今日はごちゃごちゃといろいろあって疲れたな‥‥‥



 ミアは買って来たお弁当で夕食を済ませ、シャワーを浴びて午前中の勉強続きをしてから、早めにベッドに入った。



 ──やだ、アシュリーの夢を見そう‥‥‥


 私がいくらねだってもお母さんがペットを飼ってくれなかった訳がわかったかもね‥‥‥アシュリーはとても可愛かったけれど。



 実際は、ミアは疲れて夢も見ずに朝を迎えたのだった。









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