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内気少女といにしえの恋  作者: メイズ
諸行無常な恋をして
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不穏な密室〈雅秋〉

雅秋の目線で。

 次々に現れる俺のライバル。


 先手必勝。


 俺はミアを家に連れて行くことを思いついた。


 家族に紹介しておけば俺たちの仲は公認だ。これってかなり高い承認レベル。


 本当は親父にも紹介して、がっちり固めてしまいたいところだったけれど、夏休みの平日の昼間の家になんて、兄のトーガと妹のシュカしかいない。


 急な思いつきだったし、仕方ない。



 名波と久瀬には追いつけないほどのリードが欲しい。


 俺はまたしても少し強引にミアを家に誘った。



 思惑通り、ミアを兄妹に紹介出来たけど、その後は‥‥‥




 ******




 トーガとシュカは、俺が連れて来たミアに興味津々で、ついでにミアに俺の下らないサゲ話を吹き込んだり、ミアから情報を得て俺をからかう材料を探ろうとしていると思われる。


 この二人は、変なところで気が合っていて俺をイラつかせる。


 《うっ、雅秋。ヤバッ‥‥‥さっきからお前汗臭いぞ。シャワーでも浴びて着替えろよ。ミアさんは俺たちがお相手してるから》


 《あー、うちも思ったー。ガッシュ汗臭い。そういうの女子には嫌われるから》


 トラップだってわかっちゃいるんだけど、俺の習性を知っているコイツらには翻弄されてしまう。



 俺を汗臭い呼ばわりして遠ざけ、その間にミアと俺抜きで話そうって腹はわかってんだけど‥‥‥


 だけどな、自分臭い呼ばわりされたら気になってしょうがないじゃん。


 俺が日頃から目指してるのは知的、かつちょいアバンギャルドな芸術系だ。汗など似合わない。


 よし、迷っている時間は無駄だ。俺は10分以内でシャワーを済ませて戻って来てみせる!


 ミアは人見知りだし、初対面の二人とは、最初の10分くらいは、たわいのない話題で進行するはずだ。



 俺は速攻自室に着替えを取りに行き、風呂場へダッシュ。


 よっしゃ! スッキリした。シャワーを終えて体を拭く。


 時計を見るとまだ5分。ドライヤーでプラス2分。


 髪は洗いざらしだけど、ま‥‥たまにはこういう普段の姿をミアにさらすのもいいかもな。



 早く戻らなきゃ。俺の幼少の思い出話とかされてたらたまんない。


 金魚掬いの金魚を育ててると(タイ)になって食えるってトーガに騙されてて、小5までずっと信じてたこととか、未だに甘口カレーしか食えないこととか、シュカにはゲームスコアでは連敗続きなこととか。俺のダサいとこ。



 階段上ろうとした時、ミアの叫び声が聞こえた。



「きゃー! いやっ!」



 はっ?!


 俺は反射的に階段を一段とばしで駆け上がった。


「ミア?」


 トーガの部屋の内開きのドアを開けようとした。


 あん? 開かない。


 ドアの前に何か重たいものを置いてドアを塞いでいるようだ。



「くっ、くすぐったいです‥‥‥‥あっ、やっ‥‥‥」


 何、この声?



 俺は全身の力を込め、踏ん張って体ごとドアを押す。


 押し続けるとグググ‥‥と、数ミリずつ動いた。


 トーガの部屋のドアの開きの側内側に、脇に置いてあった小さな本棚がずらされて突っかかっているのが見えた。


 ──まさか、俺を締め出して?



「ミア! おいっ、何やってんだよ? トーガ? シュカもいるんだろ?」



「きゃー! いやっ!」


 ミアの叫び!


 焦るな! これはがむしゃらにドアに当たるより、じっくりゆっくり力を込めた方が開きそうだ。


 俺は慎重に力を込めてドアを押す。


「おいっ! 開けろッ! トーガ、ミア!」



 ドアの内側に向けて俺は怒鳴る。



「きゃっ! どうして私の所に来るのっ? いやっ!」


 ミアの焦った声!


 だいぶ開いて来た。隙間から部屋の中の様子が見える。


 取り乱した髪でベッドの上に座り込み怯えているミア。


 その前に後ろ姿のトーガが向き合って立っている。



「雅秋、もうちょっとなんだ。待っててくれ! 騒ぐな。いいからドアは閉めておいてくれ」


 俺に振り向きもせずうわずった声で返して来た。


 シュカがいない。 どこに行ったんだアイツ!


 俺の目の前でこんなこと許さない! トーガはミアがあまりにも可愛くておかしくなっちまったのか? 



「クソ、トーガッ! ミアに何してんだッ! 即刻ここを開けろッ!!」


 もうちょいで俺が通れる隙間が開きそうだ。



「動かないで‥‥‥」


「は、はい‥‥‥」


 トーガとミアの会話が聞こえた。



 ま!?


 嘘だろ?! トーガがミアをベッドに押し倒した!  



「やめろッ! トーガッ、ミアを放せ!」



 何とかすり抜けられるくらいは開いただろう。俺は横向きになって無理やり体をねじ込む。



「兄貴何考えてんだ! ミア! 思いっきり膝蹴りぶっ込め!」


 俺は本棚に乗り、飛び降りた時と同時だった。



 兄貴が叫んだ。


「やったー! 捕まえたっ!」



 冬雅は完全にミアに覆い被さっている。


「離れろッ、このサイテーヤロウ!!」



 俺はトーガをミアからガッと横にひっぺがした。









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