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内気少女といにしえの恋  作者: メイズ
城跡に立つ高校
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ミアの憂鬱〈真夏多ミア〉

 また、同じことの繰り返し。



 入学してひと月とちょっと経った。




 どうして、こうなってしまうの? 私は隅っこで静かにしているだけなのに。


 ふと、感じる視線に顔を上げる。

 


 また、あの人。あっちの人も。私の方をちらちら見るのは止めて!

 ねぇ? 私の顔に何かついていますか?



 こちらを見てひそひそ話するのは止めて!

 私、あなたたちに何かした?



 休み時間の教室。どこかに身を隠すのには中途半端なこの10分間の試練。自分の席に座って周りは無視して一心に読書してるふりをする私。



「ミア、何読んでるの?」



 さっきまで新しい友だちの磯部柊也いそべしゅうや くんとお喋りしてたキリルが私の所に来てくれた。


 私は顔を上げる。


「キリル。これは童話集よ」


「ふうん。ミアらしいね。でさっ、あの3年の美術部の人たち、しつこいよね。毎日来るなんて」



 私は、美術部の人たちから絵のモデルになって欲しいと、入学早々頼まれている。


 もちろんお断り一択しかない。


 だって、そんな注目される目立つことなんて絶対に嫌。私は隅っこで静かにしていたいの。それなのに暇さえあればしつこく勧誘に来るなんて。



「大丈夫よ! また来たら私がビシッて断ってあげるから。なんか、これ日課だよね。あの人たち、マジ粘着力だわ⤵️」



「‥‥‥ごめんね、キリル。迷惑かけて」


「いいって。私たち友だちじゃない。困った時はお互い様よ。‥‥‥あ、チャイム。席に戻んなきゃ。そうだ! お昼今日はどこで食べる? 天気もいいし中庭とか?」


「うん、そうね。そうしようか」



 席に戻って行くキリルの背中を見てる。


 キリルは何事にも積極的でハッキリした性格で羨ましい。とても眩しい人。

 彼女と仲良しになれたことは私、本当にうれしく思ってる。



 しっかりものの彼女がいてくれて心強い。もし、このクラスで私一人きりだったらすごく辛かったと思う‥‥‥


 近頃、キリルを介して磯部くんともちょっとだけ話せるようになった。


 私のこのクラスでの友だちはいま だたったそれだけ。


 別にいいの。私のことはみんな、ほっといてちょうだい。



 私の最近の嫌なこと。それは美術部の部長+2名の男子の先輩が、私に絵のモデルになって欲しいとしきりにこの教室まで押し掛けて来ること。


 毎朝日課のように私を尋ねて来られて本当に迷惑。


 しかもその部長の甲斐雅秋かいがしゅう という先輩はナルシストっぽくて引く。


 クラスの女子たちはその人のことカッコいいだのイケメンだの騒いでいるけど、私は全く興味が無い。関わりたくない。ああいう人。


 キリルが追い払ってくれるから何とかなっているけれど、3年生の先輩にあんなに強気で張り合えるキリルは本当に尊敬するわ。


 私も自分のことくらい自分で何とかしなければならないってわかってはいるの。でも。



 どうして私はこんなに気が弱いのかな‥‥‥


 人目が怖くてどうしても避けてしまう。


 だって、他人に絡むといつもいいことなんてないもん。意地悪な人が多すぎる。



 いつも誰かしら私のことをひそひそ言っているのがわかるし、どこでどうなったかわかんないような根も葉も無い噂をされるのよ。



 中学の時も酷かった。


 私は誰と付き合ったことも告白されたことも無いのに、二股してるだの、ついにはパパ活してるだの。整形してるだの。


 私は、誰かからコクられそうな隙なんて絶対に作らないし、一人の時に誰かが近づいて来たら速攻逃げるし、公開告白でもしない限り私に告白するなんて無理だから。


 今までそんな人はもちろんいない。


 パパ活疑惑だって、母と離婚して出て行った父親と、2ヶ月に一回、二人で食事に行く約束になっているから、多分それのことだわ。



 今度こそはそういうの、リセットされてまたゼロから始めて平穏に過ごせることを期待していた高校生活だった。


 ミッくんとクラスが離れてしまって本当はすごくショックだった。8クラスもあるから、そこまでは期待してはいなかったのだけれど、もしかしてって思うじゃない?


 ミッくんが私を心配するといけないから私、離れてしまったってわかった時は平気な振りをした。


 私のことわかってくれるのはミッくんだけよ。いつも近くにいて私を助けてくれる。


 ミッくんさえいれば私は寂しくない。




 バカね‥‥‥‥わかってる。



 私はこのままじゃいけないって。

 いつも誰かの陰に隠れて、助けられて。


 これじゃ友だちなのに全然お互い様の関係じゃ無い。ミッくんにも、キリルにも申し訳なく思う。


 考えると落ち込む‥‥‥




 今日の放課後はミッくんとキリルと寄り道する予定。


 何でもキリルがミッくんと私に聞いて欲しいことがあるらしい。



 ーーーそこになぜだかミッくんが座家くんを連れて来た。



 ミッくんの友だちだから仕方がない。キリルとも仲がいいみたいだし。


 3人は中学の1、2年は同じクラスだったそうだし、ミッくんとキリルは3年間同じクラスだった。私は一回もミッくんと同じクラスになったことは無いのに。ちょっと疎外感。本当に神様は意地悪なの。



 日良豆駅前のお店で4人でお話した。


 

 ミッくんは例の男子にまた意地悪なことを言われたみたい。


 かわいそう。ミッくんほど優しい人はいないくらいいい子なのに。その意地悪な男子の顔は私、覚えてる。廊下ですれ違った時にはおもいっきり睨んでやるんだから! それくらいなら私にだって。


 ミッくんに意味無く意地悪するなんて許せない。 


 座家くんもミッくんのために怒ってくれた。ミッくんは俺の天使だとか言って。


 

 うふふ、面白い人ね。確かにミッくんの微笑みは天使みたいに純真でかわいく思えるわよね。


 悪い人じゃないみたい。ミッくんとキリルの友だちだもん、そうよね。


 それに、8組でキリルと私の噂を聞いて心配して教えてくれたの。


 これって学年中、キリルと私のこと、知られているって事なのよね‥‥‥



 憂鬱。ゼロから始めたのにまた目立ってしまうなんて。



 結局キリルの話は、広報委員の仕事の手伝いをして欲しいということで、学校の怪談を調べていて、ちょっと怖くなってしまったらしい。


 確かに誰もいない教室って不気味に思える時があるものね。


 私に出来ることなら協力するけど、私などが手伝ってかえって迷惑になったら申し訳無いと思った。だけど、キリルは私がいてくれればいいだなんて言ってくれた。


 ミッくんも手伝うことになったし、座家くんも気が変わって手伝うことになった。



 4人でSNSで連絡を取り合うグループを作った。


 

 座家くんが別れ際に私に言った。



「真夏多さんもさ、せっかく繋がったことだしさ、困った時は俺に言えよ! 俺らもう友だちだぜ?」



 私に向かってそう言ってから、"にかっ" と笑った顔が印象的。



 「‥‥‥ありがとう」



 人見知りモードの私は余り目を合わすことは出来なかったけれど、ミッくんとキリルのお陰で、もう一人とりあえず知り合いが出来たことは良かったと思うわ。

  



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