表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
内気少女といにしえの恋  作者: メイズ
城跡に立つ高校
16/76

恋と友情

前回の、リアスが図書室に着くちょい前から始まります。

 ーーーミッくんとキリルはまだ図書室にいるかも知れない。昨日言ってたし。

 

 バスケ部に頼まれた役目を終えたリアスはすぐに図書室に向かった。あと15分で完全下校の時間だ。

 

 

 ーーー今日はオレ、ミッ君に言いたいことがある。

 


 リアスは大股で急いで図書室に向かっていた。

 

 ーーーオレは真夏多さんを追いかけてこの学校に来た。そして2ヶ月過ぎた。だけど、はっきり言って、オレは真夏多さんのことを詳しくは知らない。表面上のことしかわからない。これから彼女の内面を知ればもっと好きになるかもしれないけど、ただ彼女が存在しているのを見ているだけでオレは幸せだった。

 

 ここに入学するまでは。

 

 

 昨日、ミッくんはオレにライバル宣言した。

 

 オレは真夏多さんのことが好きだ。一目惚れから始まる恋なんてありふれてるだろ。そんでお近づきになれたら最高だろう。

 

 でもオレは彼女にコクろうなんて今んとこ、これっぽっちも思っていなかった。

 

 だって、今のオレは彼女にとってミッくんとキリルの友だちという存在だ。

 

 一応顔見知りになってオレの存在は知ったってのに、オレに興味なんか無いってわかってる。

 

 ミッくんが真夏多さんを渡すとか渡さないとか、今のところそんなレベルにオレはいないってことだ。

 

 

 それに‥‥‥

 

 それにオレ、昨日からミッくんのことばかり考えている。

 

 い、いやそんなこと言ったらミッくんにスーっと引かれてしまうかもしれないけど、怪しい気持ちではなくて、いわゆる人間愛だ。友情を感じているのだと思う。

 

 この学校ん中で底辺の頭脳のオレのことだってバカにすることなんて無いし、オレの真夏多さんへの気持ちを知ってたのにオレのこと仲間に入れてくれた。

 

 すっげー心の広いヤツなんだ。

 

 オレ、ミッくんへの気持ちは上手く表現出来ねーんだけど、これってどう言えばいいんだろう?

 

 でもオレ、ミッくんに直接会って言わずにいられないんだ! 今すぐにでも。

 

 オレ、このまま気まずい関係でいたくはないんだ。

 

 

 

「おーい、ミッ君、キリルー! いるかー?」

 

 

 リアスは完全下校間近の図書室のドアをドアをバーンと開け放って言った。

 

 

 カウンターで帰りの支度をしていた男子図書委員が驚いて振り向いた。もち、顔が怒っている。

 

 

「図書室では静かにしてください! それにもうクローズですよ!」

 

「すみませんでしたっ! その、人を探していて‥‥‥」

 

 見回した図書室には他には既に、誰もいなかった。

 

 その時、カウンターの横にある島田の部屋の扉が開いた。

 

「おや、座家くん。また君か」

 

 その後ろにミチルとルイマが教科書の詰まったリュックを背負って立っている。

 

「図書委員さん、後は私がやっておこう。もう帰っていいですよ。今日はお疲れ様。ありがとう。気をつけてお帰りなさい」

 

 島田が笑顔で声をかけた。

 

 図書委員の真面目そうな男子生徒は、ちょっと不審そうな顔をしたが、軽く会釈して出て行った。

 

 

「大声で呼んだりしてしてすみませんでした。オレ、二人がここにいるかと思って‥‥」

 

 リアスが萎れて言った。

 

「何か用だったの? だったらグルチャにメッセージ入れとけば良かったのに。まあいいよ。3人で帰ろ。島田先生、ありがとうございました。まだ気になる点が残っていますのでよろしくお願いします」

 

「ああ、そうだろうね。私もまだ話してないことがあるからね。では、君たちも気をつけてお帰りなさい。」

 

 

 

 3人で靴箱に向かいながら無言で階段を下った。

 

「‥‥で、どうしたの? ザッカリー。何の用だったのさ?」

 

 ルイマが促した。

 

「あ、うん。オレ、ミッくんに言っておきたいたいことがあってさ‥‥‥」

 

「‥‥‥‥」

 

 ルイマが見たミチルは無表情だ。

 

 

 ーーーこの、どよよ~ん とした空気は何ごとよ?

 

「なあに? あんたたち、ケンカでもしたの? らしくないけど‥‥‥」

 

 

 ミチルがおずおずと答えた。

  

「あ‥‥昨日僕がザッカリーについイキったこと言っちゃて‥‥そのことだよね?」

 

 

 リアスは、どぎまぎしながらミチルをちらちら見てる。

 

「い、いや‥‥オレが言いたいのはオレの複雑な胸の内で‥‥さっきまですごく考えて来たのに‥‥なんて言えばいいのか‥‥‥」

 

 リアスは自分に れて顔をしかめている。

 

「なあに? じれったいわね! さっさと言いなさいよ!」

 

 ルイマは島田の話をリアスに2連で邪魔されたので機嫌が悪い。

 

 

「‥‥‥ザッカリーは何も悪くないよ」

 

 ミチルは、リアスではなくルイマを見て言った。

 

 

「ふ~ん? 私には何のコメントもできないね。何も知らないんだから」

 

 

 3人はそれぞれ靴に履き替え、昇降口を出て、松の石垣に沿った通路に向かって歩き出した。

 

 

 オレンジ色の光が辺りを染めていた。

 

 

 ルイマの後ろにミチル、少し開けてリアスが続いている。

 

 誰も何も言わないまま、松の石垣の通路の手前まで来た時、突然リアスが沈黙を破った。

 

 

「うっ、上手く言えないけど、オレ‥‥ミッくん! 聞いて!」

 

 

 驚いてミチルとルイマは振り返った。

 

「オレっ、とにかく‥‥‥ミッくんのこと、すっ、好きだからっ! 何があってもさっ!」

 

 

「はっ?!」

 

 ルイマは、リアスとミチルを交互にキョトキョト見比べた。 

 

 

 リアスは言い放つと、ミチルを束の間見つめてから、突然ダッシュし、二人の横を駆け抜けて走り去った。

 

 ミチルとルイマは校門へ向かって走って行くリアスの背中を見てから顔を見合せた。

 

 

「‥‥‥‥」

 

「‥‥‥ほんと、バカな男子なのよ。いつも一直線しか知らないの。ほんと不器用。単純。そして純粋なのよ。知ってたけど。まだまだお子様ね。そう思わない?」

 

「‥‥‥‥‥うん」

 

「‥‥ミアのことでしょ?」

 

「さすが、キリルはお見通しなんだね‥‥‥」

 

 

 ミチルは涙が出そうになった。

 

「でもね、僕はザッカリーよりさらにお子様なんだ‥‥‥だから‥‥‥どうしてもザッカリーに嫉妬してしまうんだ。それでつい挑戦的なことを言ってしまって‥‥‥」

 

「‥‥いいじゃない。何て言ったのか知らないけど、土方のセリフ、ミアに聞かせてあげたらいいのに」

 

「からかわないでよ、キリル。意地悪だな、もう‥‥‥」

 

「違うわよ。からかってるんじゃないわよ。土方のそういう所、ミアが知ったらうれしいかも知れないでしょ?」

 

「何でそんな風に思うの?」

 

「‥‥‥ミアの気持ちはミアしかわからないよ? 特にあの子は内に秘めるタイプだし」

 

「‥‥‥僕はこのままでいい」

 

 ルイマは腰に手を当てて、はぁーっと大きなため息をついた。

 



「そう、ならもういいから! さあ、土方はザッカリーを追いかけなくいいの? あなた今、ザッカリーに愛の告白をされたんじゃなかったのかしら? 好きだって。あれはかなりの勇気がいったと思うわよ?」

 

 ルイマが片眉を上げた。

 

 

  

 ーーー僕のせいで、ザッカリーを悩ませてしまったのに。

 

 なのにザッカリーは僕を気遣って、自分の方から僕のところまで歩み寄ってくれたんだ‥‥‥

 

 

 追い付ける、今なら!

 

 

「そうだよね! 今すぐザッカリーを追いかけて、僕もザッカリーが好きだって言い返してやるよ。あれ? 昨日も言ったかも、これ」

 

「へ~え? 昨日もって? そうなの!? 相思相愛ね。ミアに報告したら何て言うかしら?」

 

 

 ミチルは駆け出した。

 

 

 

 ルイマは小さくなるミチルの後ろ姿を、松の石垣に沿い、ぼちぼち歩きながら見送った。

 

 

 ーーー麗しい友情だと思うよ。‥‥‥思いっきり走れ! 土方。

 

 

 

 

 

 

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ