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怪異研究会の事件ファイル  作者: シマフジ英
File 9 異世界・決戦
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9-5話  邪神竜の復活

 拓海(たくみ)はゾダールハイムのエアシップに乗っていた。邪神竜の監視チームの一員だ。()()(ぎく)莉子(りこ)と共に地上におり、前線からは下がった場所にいる。


 そして、その瞬間は訪れた。


「ドローンカメラに反応」

 エアシップに乗っている迷彩服の通信員が言った。画質は落とされていたが、砂漠の上に赤黒い光がほとばしっているのが確認できる。それはみるみるうちに巨大な黒い竜に変貌した。邪神竜の復活だった。


「来ましたね」

 その様子を妖狐のエマも見ている。


 邪神竜からは黒いオーラが発せられ始め、腹の辺りから無数の小型の黒竜が飛び出すのが確認できた。


「ドローン攻撃開始」

 通信員が言った。いくつかのドローンにはフェイズド・クリエイション・ライフルが搭載されており、エネルギーの続く限り自動で小型の黒竜を撃つことになっている。その攻撃が開始された。


 拓海たちのいるエアシップからはまだ遠い場所なので、音は聞こえない。


「ど、どうですか?」

「凄い数です」

 拓海が尋ね、迷彩服の通信員が答えた。モニター越しに、攻撃ドローンの残存エネルギーがどんどん減っているのが拓海の目にも確認できる。


「1番から10番まで、エネルギー残り4分の1。11番から20番、エネルギーゼロ」

「電波障害発生。ドローンカメラからの映像、確認できません」

「センサー情報の通信は依然続行。1番から10番、エネルギーゼロになりました」

 20台用意されていた攻撃ドローンのエネルギーはあっという間に底をついてしまった。


「本船の安全のため、少し距離を取りますよ」

 ゾダールハイムの兵士が言った。エアシップがさらに上昇する。



    ◇◇



 日菜菊は莉子とルビーと共に地上にいた。電波状態も少しずつ悪くなり、拓海の見聞きしている情報を日菜菊が口頭で伝える機会も多くなる。


「まあドローンで倒しきれるとは最初から思っていないわ」

「そうですね……。ここからが」

 ルビーと莉子が言った。


「小型の黒竜が、リムザデール村上空に到達しますよ」

 拓海が上空から見ている情報を日菜菊が伝えた。


「いよいよ攻撃開始ね」

 ルビーがそう言うと、日菜菊たちの元に攻撃音が聞こえてきた。リムザデール村に設置したフェイズド・クリエイション砲台が物凄いスピードでビームを連射するのが目に入る。実弾とは違う独特な音だ。


 撃ち落とされた黒い黒竜は次々と地面に落ちていった。


「撃破された黒竜は霧のように霧散しています」

「やはりあの小さな竜も悪霊とか怨霊の類のようね」

 日菜菊が拓海から得られる情報を伝え、ルビーが呟く。


 攻撃をすり抜けた黒竜たちはリムザデール村には目もくれず、そのまま南へ直進していた。


「よほど魔術協会の本拠地にたどり着きたいみたいですね」

「そうね」

 莉子とルビーが言った。


 次に第2陣が攻撃を開始した。リムザデール村より南方の森に潜んでいるゾダールハイムの魔術部隊だ。人間だけでなく、エルフや獣人族など、他の種族も参加しており、地上から様々な魔術による攻撃を繰り出している。しかし、黒竜は魔術を統べる邪神竜の化身であるためか、フェイズド・クリエイション砲台に比べると効き目が弱かった。


 魔術による攻撃が数発当たっても黒竜を倒すことができない。そのため、第2陣を突破する黒竜の数はリムザデール村の第1陣より多かった。


 さらに南にはフェイズド・クリエイション砲台による第3陣が展開しているし、その先には魔術部隊の第4陣と、交互に攻撃ポイントが準備されている。


「さて、私たちはこのまま待機するわよ」

「はい」

「分かっています」

 ルビーの言葉に日菜菊と莉子が答えた。



    ◇◇



 拓海は望遠鏡で大砂漠の北側を見た。黒い影が少しずつリムザデール村に近づいているのが見えた。


「来ましたね、本体が」

「ああ。大変な戦いになるぞ」

 拓海と悪魔ベナカーイが言った。


 ゾダールハイムの兵士たちは不安そうな声を発している。


「さあ、行きますよ……」

 妖狐のエマは、エアシップから大砂漠を覗き見た。そして右手を前に出し、左手で右手を支える。


「お手並み拝見と行こうか」

 エマの様子を見ながらベナカーイが言った。


「私は妖狐の代表として来ていますからね。()()を行使する権利が、今は私にある」

 エマの右手に赤いオーラが漂い始める。


顕現(けんげん)せよ、九尾(きゅうび)!!」

 エマのその言葉と共に、エマの右手の赤いオーラが地上に照射された。赤いオーラの中に青黒い影が渦巻き始め、それは巨大な9つの尾を持つ狐へと変貌した。


 拓海が受けた説明によると、九尾の狐は、かつて地球側の世界存続にまで関わるほどの大怪異だった。魂を喰らう能力を持ち、邪神竜と同等の大きさを持つ。当時の怪異や人間が立ち向かって勝利し、今では妖狐がコントロールを任されている。


「行け、九尾!! 喰らい尽くせ!!」

 エマの言葉に答えるように九尾の狐は咆哮(ほうこう)し、邪神竜に向かっていった。


 九尾の狐が邪神竜に歯を立てる。邪神竜もまた爪や歯、尾で九尾の狐を攻撃する。攻撃が当たる度に九尾の狐からも邪神竜からも黒い霧のようなものが溢れ出た。


「す、凄い! 邪神竜に引けを取っていない!」

「ほう、こんなものを用意していたとは……」

 拓海とベナカーイが言った。迷彩服の通信員は黙々と作業を進めていたが、ゾダールハイムの兵士たちは九尾の狐の善戦に歓声を上げている。


 一方、エマは険しい表情で、九尾の狐と邪神竜の戦いの様子を観察していた。



    ◇◇



 クラリスの故郷シュトールの街からも、地上から小型の黒竜を攻撃する光が確認できた。人々は作戦の詳細を聞かされていたわけではなかったが、戦いが始まったことは理解できた。


 手を合わせて天に祈る者、家族が戦いに出ていて無事を心配する者、伝説の勇者ゼノシュと賢者クーヤの物語を記した本を胸に抱いて地上からの攻撃を見守る者など、反応は様々だ。


 ピエットは、シュトールの街の近くに陣取る魔術部隊に加わっている。その手伝いにシャロンも出ていた。シャロンには拓海や莉子や日菜菊が重要な役目を負って前線近くにいることが知らされていた。


「神様、どうか皆をお守りください」

 シャロンはそう呟きながら戦況を見守るのだった。

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