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怪異研究会の事件ファイル  作者: シマフジ英
File 9 異世界・決戦
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9-2話  邪神竜の迎撃準備

 拓海(たくみ)は、大砂漠の端の村リムザデールに来ていた。莉子(りこ)()()(ぎく)も一緒だ。拓海と日菜菊の情報共有能力は他の怪異たちからも頼りにされていたため、勇者ゼノシュの墓の探索には加わらず、最前線の村まで来ていたのだった。


 拓海は莉子と共に、かつて観光で訪れた村を歩いていた。勇者と魔王の物語の記念館は閉鎖されているし、村に残っているのは、ゾダールハイムの兵士や、地球からやって来た邪神竜討伐の協力者ばかりだった。ほとんどの民間人は村から避難しているが、一部有志で残った者もいる。


 リムザデールには魔術兵器が整備されていたが、魔術では邪神竜に効果は薄いだろうと推定されている。そこで地球から持ち込まれた兵器も整備されていた。


「ね、ねえ拓海。あそこにいる人、どう見ても軍人だよね?」

「だ、だよな。一体どういうコネで連れて来たんだ、ルビーさん……」

 莉子と拓海が言った。迷彩服に身を包んだその集団は、空に向けて砲台を準備している。


「怪異の世界に身を投じた人間もいるということよ」

「あ、ルビーさん」

 ルビーが拓海と莉子の元にやって来た。


「あの砲台、あなたたちも怨霊との戦いで使ったフェイズド・クリエイション・ピストルの砲台版よ。本物の軍隊が使っているような兵器は私の力では手に入らないわね」

「そうなんですね……」

「でも、兵器にしか見えないような……」

 拓海と莉子がそう言うと、気づいた迷彩服の集団が手を振ってきた。


 そして、拓海と莉子は砂漠の前の大地に佇む巨大な船の前に来た。魔術で空を飛ぶエアシップだ。これで空から大砂漠を監視することになっている。そこには日菜菊もいた。


「拓海、気をつけてね」

「ああ。莉子も」

 莉子と拓海はそう言った後、しばらく抱き合った。怪異研究会としてもこれまでで一番危険と思われる事件だ。拓海もいざ前線に立つと緊張が止まらなかった。それを無理やり押し込めるように、莉子を抱きしめる腕に力を込めた。


 そして、拓海はエアシップに乗り込んだ。闇のマナに溢れる大砂漠の上では魔術通信は機能せず、地球側の電波通信が検討されたが、微妙に電波障害も起きていたため、拓海が投入された。地上に日菜菊を残すことで情報共有を円滑にする目的だ。


 やがてエアシップが離陸した。地球側の飛行機と異なり、ほぼ垂直離陸だ。小回りが効くのは便利な点だった。地上では日菜菊が莉子と手を繋いでエアシップの上昇を見守っている。


「拓海さん、そんなに緊張しないで」

「うむ。いざとなったら俺が守護する。大船に乗ったつもりでいるがよい」

 エアシップに乗り込んでいた妖狐のエマと悪魔ベナカーイが拓海に話しかけてきた。他の悪魔たちも乗っているし、妖怪たちも参加している。確かに、頼りになるメンバーだと拓海は思った。


 乗り込んでいる迷彩服の人が地上と電波通信を試みた。今のところ通信は通じているようだった。


 そして大砂漠の上空にはドローンが飛ばされた。邪神竜復活の兆候を見逃さないためだ。通信が途絶えた場合に備えて、自律行動ができるようなプログラムが組み込まれている。


 大砂漠の北側はかつて魔王が根城にした巨大な山脈があるのみで、邪神竜が北上する可能性は低かったが、念の為にドローンは北側にも回り込んでいた。


 拓海は上空から大砂漠を見た。拓海の目にも分かるくらい、大砂漠には異様な黒いオーラが渦巻いているのだった。



    ◇◇



 エアシップの離陸を見届け、日菜菊は莉子とルビーと一緒にいた。莉子はルビーの手伝いという名目でここにいる。莉子の閃きや頭の回転の良さをルビーも期待しているということだと日菜菊は思った。


「邪神竜が作り出す黒竜をあれで撃ち落とすんですよね?」

 莉子がルビーに言った。それは、竜神族の祖メゾギルアの悪夢で見た、邪神竜が作り出す大量の小型のドラゴンだ。メゾギルアの魂から得た情報によると、邪神竜本体よりも小回りが効くため、間違いなく本体に先行して南下するだろうという話だった。


「そうね。そのためのフェイズド・クリエイション砲台。もしここに降りて来るのなら地上でも迎え撃たないといけないけれど」

 ルビーが答えた。


 地上には魔術の武器を持ったゾダールハイムの兵士も、地球から訪れているヴァンパイア、ヴァンパイア・ハンター、妖怪もいる。しかし、メゾギルアの夢の中で勇者一行を襲う黒竜は数に物を言わせて勇者ゼノシュたちを追い詰めた。気を引き締めなければ危険だと日菜菊は思った。


 リムザデールの広場には炊き出しをしている場所がある。そこには勇者と魔王の物語の記念館の館長の男性がいた。日菜菊たちは館長の元に向かった。


「館長さん、避難しなくて良かったんですか?」

 日菜菊が尋ねた。


「ええ。何か力になりたくてね」

 館長は流暢な日本語で答えてきた。この人も翻訳術を使えるということだ。


「僕は記念館の館長をやっているぐらい、勇者と魔王の物語に魅せられていましてね。その続きを見られるということで舞い上がっているだけなのかもしれません。なあに、チキュウの皆さんの頼もしい姿を見れば、きっと何とかなると思っていますよ」

 館長はそう言って、炊き出しのスープを日菜菊たちに手渡してきた。日菜菊と莉子とルビーはそれを受け取った。

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