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怪異研究会の事件ファイル  作者: シマフジ英
File 7 夢を操る怪異
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7-8話  怪異の失敗1

「ふぅ……」

 ため息をつきながら、()()(ぎく)はホテルの共用スペースの椅子に座り、設置してある自動販売機で買った飲み物を口に含んでいた。日菜菊がドリームワールドに巻き込まれていないのは偶然か必然か分からないが、少なくとも5人いる偽物のうち一人をすぐに排除できたので、幸先は良いと日菜菊は思った。


 だが、他に4人いるという偽物は、クラスメイトの雰囲気を察知して、直ちに日菜菊の偽物を指差してみせた。なかなかの洞察力だ。残り4人を連続で当てないと悪夢を見せられてしまうので、どうしたものかと日菜菊は思った。


「お、成戸(なると)じゃん。おはよう」

 そう言って声をかけて来たのはジャージ姿の村岡(むらおか)だった。日菜菊は飲み物を吹き出しそうになった。


「む、村岡! 何でここに!?」

「ん? ただの早朝ジョグだよ。別に今日はトレーニングするわけじゃないけど、身体ほぐしにさ」

 村岡はタオルを首に巻いており、汗もかいていて外を走って来たことを伺える様子だった。


(こ、これはつまり、()()()()()()()()()()()()()()は……)

 日菜菊はそんなことを思った。



    ◇◇



 ドリームワールドの1年2組の教室では、早速偽物を一人当てられたことでクラスメイトが騒いでいるところだった。莉子(りこ)浩太(こうた)、クラリスも拓海(たくみ)の隣で喜んでいる。そして、再び5分の推理タイムがスタートしたところで、すかさず拓海が声を上げた。


「あー、皆、すまん、次の情報が分かってしまった。ここは俺に任せてもらって良いかな?」

「え、何か分かったのか?」

「どういうこと?」

「拓海?」

 浩太とクラリスと莉子がキョトンとした顔で拓海を見た。拓海は村岡を指差した。クラスメイトの視線が村岡に集まる。


「え!? 何で俺なんだよ! 訳を言え、訳を!!」

「本物の村岡は今、ジョギングから帰って来て、ホテルの共用スペースでポカリ飲んでるよ」

 拓海は目の前の村岡もどきに、凄まじく具体的な情報を告げた。


「えええ……、待てよ……、なんでそんなことが分かる……?」

 村岡もどきは先ほどの日菜菊もどきと同様に狼狽(ろうばい)した。


 きっと本来は、お互いに情報を晒しあって怪しい者を特定していく戦いなのだろう。クラス一つ分の人数がいれば5分というのはかなり効率よく情報交換をしなければ偽物にはたどり着けない。この偽物たちもそういう勝負に特化しているに違いないと拓海は思った。だから、今、拓海が告げたようなことを言われるのには慣れていないようだった。


「不室くん、それって……?」

「一体どういう……?」

「皆も、()()()()()()、知ってるだろ?」

 状況が分からないという様子のクラスメイトたちに、拓海はそう言った。あまり情報を出しすぎると、偽物たちが事情を察して今後の戦いが不利になるかもしれないので、あえてそういう言い方にとどめた。


 きっとそれだけの情報でも、クラスメイトたちは、日菜菊が現実世界で村岡を見たということを理解してくれると拓海は判断したのだ。


「なるほどね!」

「いいよ、タクミ!」

「お前は最高だ、我が友よ!」

 莉子とクラリスと浩太は真っ先に村岡を指差した。クラスメイトたちも次々に事情を理解し、村岡を指差した。


「ええっと、またまた推理が早い……ですね? その子で良いですか?」

 フルーズの声が響いた。


「「「意義なーし」」」

 またまた生徒たちの声が揃った。


 再びスポットライトが村岡もどきに照射され、BGMが流れた。


「俺は、偽物でした……。一体どうなってるんですか、今回の皆様は!?」

 そう言葉を残し、村岡もどきは黒い穴に消えていった。



    ◇◇



「良し!」

 ホテルの共用スペースで日菜菊は思わず声を上げた。


「ん、何が?」

 椅子に座ってポカリを飲んでいる村岡が日菜菊の発声に反応した。


「うん、村岡にも事情を話しておかないといけないね。実は……」

「あれ、日菜菊に村岡くん、おはよ~。ふわぁ……」

 そこに2組の女子生徒が一人、あくびをしながら現れた。


(おお、これは……!)

 もう日菜菊にも仕組みが分かって来た。


 日菜菊が悪夢で声を上げて起きた時も、まわりのクラスメイトは誰も起きなかった。起こそうとしても起きる気配はなかった。


 つまり、ドリームワールドに取り込まれている生徒は起きない。しかし、取り込まれていない生徒は起きる。だから、起きている生徒がドリームワールドでは偽物ということだ。


 ドリームワールドにいる拓海はこの情報を使い、今起きてきた女子生徒の偽物を当てることができる。そうなれば残りの偽物は二人だ。


 日菜菊は村岡とその女子生徒に告げた。


「二人とも、ちょっと手伝ってほしいことがあるんだけど」

「ん?」

「なぁに?」


 日菜菊は二人に、クラスメイトがドリームマスターという怪異の攻撃を受けていることを伝えた。起きている、又は起きることができるクラスメイトがドリームワールドでは偽物なので、探してほしいということだ。


「ったく、本当に不思議事件のオンパレードだな、俺たちの高校生活!」

「ほ、ホントだね……」

 村岡と女子生徒が言った。


「おっけ、分かった、俺は男子部屋を見てまわるよ」

「私も女子部屋、チェックするね」

 村岡と女子生徒は、スマホのアラームアプリを起動し、各部屋に散っていった。女子部屋の方が多いので、日菜菊も女子部屋を調べに行った。


 まだ朝7時前ということもあり、この3人以外に起きているクラスメイトはいなかった。3人は各部屋でアラームアプリの音を鳴らしてまわると、男子生徒が一人と女子生徒が一人、目を覚ました。


 日菜菊はその情報を得ると、拓海がドリームワールドで全ての偽物を連続で当てることに成功した。


 怪異ドリームマスターのフルーズは二度目の悪夢を見せることが叶わないまま、ドリームワールドに取り込まれていた生徒たちは解放された。

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