2-10話 異世界お見合い大作戦2
デボールのお見合いの結果、デボールと相手の女性は2回目の逢引をすることになった。立役者となった浩太はデボールから感謝されっ放しだった。
浩太のことを凄いと思ったのは2組の生徒たちも同じで、異世界ゾダールハイムから学校に帰って来た後、反省会と称して学食に集まるのだった。
「コウちゃん、お疲れ!」
「浩太、マジで凄かった……」
莉子と拓海が浩太に声をかけた。
「あのおっさんをねぇ……」
「何よりも見捨てなかったのが凄いよ、天知くん」
「ホントだよな。俺だったら軽蔑するだけで終わってたよ」
拓海と莉子だけではなく、クラスメイトも次々と声をかける。
「まあ、きっと自己責任だの何だの言われまくってきたんだと思うよ、デボールのおっさん。けど、それだけじゃ前に進めない人もいるってことだ。……全敗は辛いって」
浩太はデボールの境遇を語った。
「……フンだ!」
特に咎めもせず、浩太がただデボールに協力したことが気に入らないらしく、クラリスは納得いかないという顔をしていた。
「クラリス、そうむくれるでない。お主からしたらもっとデボールにお灸を据えたかったとは思うが」
キマロがフォローしたが、クラリスの機嫌は悪いままだった。
その後も何度か浩太はデボールを手伝った。その度に2組の生徒たちはゾダールハイムのゲート監視所に集まった。拓海と莉子も中学の同級生のことを感心しながら見守った。
そして、ある日の授業中。突然、教室の扉が開いた。拓海もクラスメイトもビックリしてそちらを見たが、そこに現れたのがデボールであることを認識する間もなく、デボールは浩太の元に駆け寄った。
「コウタ殿ぉぉぉぉ!!!」
「うわ、おっさん!? 何だ、急に! 抱きつくな、気持ち悪い!!」
「う、上手くいったのだよぉぉぉ!! ありがとぉぉ、コウタ殿ぉぉぉ!!」
泣きながら叫ぶデボールに教室がざわついた。
「え、上手くいったって……?」
「ま、まさか……」
「婚約成立……??」
デボールに続いて、手下たちが入ってくる。手下たちも泣きながら浩太と握手をかわし、生徒たちの疑問に肯定の頷きで答えた。
「「「えええーーーーー!!?」」」
クラスメイトのざわつきが一層大きくなった。
「あ、あの、皆さん、授業中……授業中です」
生物の先生がそう言っているが、生徒たちには聞こえていないようだった。
「な、なんということじゃ……。あのデボールが本当に婚約するとは」
キマロが信じられないという表情で言った。
「ま、良かったな、おっさん。結局、あんたに足りなかったのは導き手だった、ってことだ」
浩太がデボールに言った。
「うむ、うむ、ありがとう、ありがとう!!」
「ただな……」
浩太はそう言うと、立ち上がってデボールを右手で指差した。
「クラリスにやったこと、あれはダメだ」
浩太は太い声で言った。浩太の真剣度が伝わったのか、教室が静かになる。
「浩太……」
拓海が浩太の名前を呟いた。何事もなかったように振る舞いデボールの手助けをしてきたが、きっと浩太はデボールがクラリスにしたことを忘れてなどいなかったのだろうと拓海は思った。
「クラリス」
「なによ……って、きゃ!」
浩太はクラリスの腕を掴んで立ち上がらせた。
「クラリス、殴りたいだろ、このおっさんのこと?」
「え?」
クラリスはデボールを見た。そして、ニコリと微笑んだ。
「うん、殴りたい!!」
「ほれ、これ使いな!」
肯定したクラリスに、浩太はどこに隠しておいたのかボクシンググローブを手渡した。
「おい、デボールのおっさん、嫌とは言わせねえぞ」
「……ああ、分かった」
デボールは抵抗しようとはせず、クラリスの前に立った。
「クラリス、一発だけにする必要はないよ!」
「フックよりストレートだ!!」
「やっちゃえクラリス!!」
クラスメイトが声をかける。
「ありがと、みんな。…………はぁぁ!!」
クラリスは3発、デボールを殴りつけ、3発目の勢いでデボールは地面に転がった。
「痛てて」
そう言いつつも、デボールはすぐにクラリスに向き合った。
「クラリス、本当にすまなかった! 僕がどうかしていたんだ!」
デボールは頭を下げて、そう言った。
「デボール卿、これからは変なコンプレックス持ったりしないでくださいね。あなたにはもう婚約者がいるんでしょう?」
クラリスがデボールに言った。
「クラリス、よく言ったよ!」
莉子がクラリスに声をかけた。
「「クラリス、偉い!」」
拓海と日菜菊が揃ってそう言い、拓海と莉子と日菜菊が拍手をした。拍手はクラスメイトにも伝わっていった。
「クラリス!」
浩太がクラリスに向かって手を出した。
クラリスはボクシンググローブを外すと、浩太の手に自分の手をタッチした。
「……もう嫌だ、このクラス…………」
わけが分からずに取り残されている生物の先生がそう呟いた。




