E-2話 地球への手紙
クラリスはキマロとシャロンと共にシュトールの街で行われている霊魂祭に参加していた。秋の収穫祭とはまた異なる行事であり、手紙を書いて魔術で火を着けることで、理の異なる世界へメッセージが届くと伝えられている。
亡くなった親族などがいるとされる冥界に手紙を宛てるのが通常だが、この年、クラリスは地球の友人たちへの手紙を書いた。亡くなった人へのメッセージを宛てることだけがこの行事の趣旨ではないことに気づいたのだ。
本当に届くことを願いに込めて、クラリスは日本語で手紙を書いた。
『怪異研究会の皆へ
拓海と日菜菊、莉子、そして浩太、元気にしていますか?
私は魔術学校に復帰しました。実を言うと地球に行く直前に飛び級が成立していたので、1年の空白があっても元の同級生と同じ学年に戻っただけでした。
ゾダールハイムは、まだまだ邪神竜のことで大騒ぎです。異世界からの救援者を称える記事が毎日のように出ているし、一緒に戦った兵士たちはあちこちで自慢話をしているようです。
うちの父など、地球に行ったことがあることを隠そうともせず、調子に乗って社交界でスピーチとかをしています。兄や姉と共に冷たい目で見ているところです(笑)
大砂漠の端の村リムザデールは、邪神竜と九尾の狐が通過したことで多くの建物が崩れていて、復旧が始まりました。私やシャロンもボランティアで手伝うつもりです。勇者と魔王の物語の記念館の館長さんも大張り切りです。
それもそのはず、勇者と魔王の物語に続きが加わることになったのだから。
勿論、その大部分は今回の邪神竜との戦いのことになるけれど、ダークエルフや魔族が魔王の資料を提供してくれました。魔王が世界に絶望し、邪神竜を生み出してしまった部分の情報が加わるのではないかと思います。
ちなみに、勇者ゼノシュと賢者クーヤの愛を持ってしても倒せなかった邪神竜を、異世界からやって来たある男女がその意志を継いで魔王の魔術で倒したという話は、ゾダールハイムで大受けになっています。
シュトールの街の劇団も早速お話作りに動いているようです。
でもね……。多分、放っておくと、拓海と日菜菊が愛の力で邪神竜を倒したみたいな話ができてしまうよ、きっと(笑)
私は全部見て来たし、ヒナタ・コンビと莉子の素敵な関係が違う形で物語に残ってしまうのは悔しいので、正しい物語が残るように頑張ってみます。
怪異研究会の活動は、どうですか?
きっと皆のことだから、また何らかの怪異事件に巻き込まれているのでしょう。少し心配だけれど、近くにルビーさんもいるのだから大丈夫だと信じています。
クラスの皆も元気かな?
夏になれば、2回目の文化祭の準備が始まるんだよね? 今年はどんなことをやるのでしょうか。もし、可能ならば見に行きたいと願っています。
私も、もう一度地球に行く方法は無いか探る活動をしています。シャロンや、興味を持った他の友達も手伝ってくれています。いつか、見つかるといいな。
クラスの皆にも宜しくね!
最後に、浩太へ。
約束は、ちゃんと守っています。浩太はどうですか? 私は最後まで頑張るよ!
クラリス』
クラリスは手紙を手に持ち、魔術で燃える祭壇の前に立つ。静かに手紙を炎の中に投げ入れ、両手を組んで祈った。クラリスの肩では、キマロも祈っている。
しばらく祈った後、祭壇から離れ、既に終えているシャロンと合流した。クラリスたちは静かに歩き始め、祭壇から離れていった。




