E-1話 新入部員勧誘
拓海は、怪異研究会の資料室にいた。莉子と日菜菊と顧問の剣持もいる。
「しまったなぁ……」
「肝心なこと、忘れてたよね……」
拓海と莉子はため息をついた。
邪神竜の大事件や、クラリスとキマロとのお別れのこともあって、誰もが新入部員勧誘のことを忘れていた。1年生が入学してまだ少ししか経っていないが、争奪戦はもう始まっている。既に入部する部活を決めた新入生も多いはずだと拓海は思った。
「す、すまない。僕もすっかり忘れていたよ……」
「先生、去年はあんなに必死だったのに」
日菜菊が剣持を茶化す。柚希が救われた以上、今年の剣持にそこまでのモチベーションは無かったのだろうと拓海は思った。
「もう放課後だもんね。今日は準備をして、明日の朝から勧誘開始かなぁ」
「そうだな。配るチラシも作らないとな」
莉子と拓海が呟く。
「だけど、うちの部って結構ガチに怪異と絡むよね? どんな生徒が良いんだろ?」
「そうだね。特に、君たちは怪異を引き当てる宿命にあるようだし」
日菜菊と剣持が言った。
「そもそも、私以外みんな怪異じゃないですか、この中!」
莉子が剣持に言った。
「「あ、そうだ! 忘れてた」」
さらに拓海と日菜菊が声を揃える。
「でも、私たちが怪異を引き当てるっていうんなら、新入生にも混じっているかもしれませんね」
「え! いや、まさか……」
「あり得るのかもな……。そういう生徒がいたら直接声をかけてみても良いかもしれないな」
莉子、拓海、剣持が順に言った。
怪異を見破る魔具は拓海たちもいくつか持っていたが、他の魔具も探そうという話になり、ルビーのアンティークショップに移動した。
「なるほど、通常の勧誘以外に直接怪異の後輩を探す、と。相変わらず面白いことを考えるわね」
ルビーはケラケラと笑いながら、怪異を判別するための魔具の候補をいくつか出してくれた。
「チラシを配って勧誘する組と、魔具で怪異の後輩を探す組に分かれないとね」
「そうだな」
「剣持先生にも手伝ってもらうとして、浩太も含めて組分けだね。どうしよう」
「浩太くん?」
ルビーが首を傾げた。
「浩太は、怪異研究会に正式入部したんですよ」
「あら、そうだったのね」
拓海の説明にルビーが答えた。
「クラリスと、約束したんだそうです。お互いの世界に行く方法を探すって」
「なるほどね」
日菜菊が言うと、ルビーは手を顎に当てた。
「まあ、存分に悩んで足掻くと良いんじゃないかしら。青少年の特権よ」
「あのコウちゃんが足掻く、ですか」
「俺からすると浩太は恋愛強者って奴ですから。こんなことになるとは」
「だからこそ、大きな壁にぶち当たったのかもしれないわね」
ルビーは店に飾ってある小さな写真を見た。そこには拓海たちも含め、浩太とクラリスとキマロが笑顔で映っている。
「心配ないわ。もしあの二人が真実の愛に導かれているのなら、必ず再会できるわよ」
「ロマンチックですね。そういうものでしょうか?」
「そういうものよ。保証するわ」
拓海はルビーの言葉に少し救われる想いだった。きっと浩太とクラリスが再会できれば良いと、そう思った。
「まあ、あんまりコウちゃんとクラリスのことばかり言ってると、キマロが怒るかも」
「そうだな、ワシを無視するでない、とか言ってね」
莉子と拓海が言い、全員で笑いあった。
拓海たちはしばらく店にとどまり、チラシのデザイン案を考えた。夜になる前には完成させ、剣持にデジタルデータを送った。印刷は朝までに剣持がしてくれるということになった。
拓海たちはルビーから魔具を手渡されると、翌日の新入生勧誘に備えて帰宅することにした。
「じゃあね、皆。今年度の怪異研究会の活動にも期待しているわ」
「はい、さよならルビーさん」
「「また来ます」」
拓海たちはルビーに挨拶をしてアンティークショップを後にする。
駅に着くと、日菜菊は別ホームから寮に戻っていった。拓海と莉子は電車で最寄り駅まで移動し、手を繋いで家までを歩く。
家までたどり着くと、いつものように二人は拓海の部屋に向かうのだった。




