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怪異研究会の事件ファイル  作者: シマフジ英
File 9 異世界・決戦
103/108

9-13話 お別れの前日

 旅館での朝食を済ませ、拓海(たくみ)たちは荷物を持って旅館の玄関に集まった。


「お世話になりました」

「いえいえ、また来てくれて嬉しかったわ。ぜひまた来てくださいね」

 旅館のおかみさんと挨拶をする。亭主は夜の仕込みの支度をしていたが、少しだけ顔を出してくれた。


 全員で旅館を出発し、観光スポットを巡りながら帰宅した。



    ◇



 すぐに新学期が始まった。始業式の日、拓海はいつものように莉子(りこ)の家に向かい、莉子と共に登校した。


 学校に着くと、2年2組の教室に向かった。教室は変わっても、この高校ではクラス替えが無い。今まで通りのクラスメイトと挨拶をした。第2寮から移動するだけの()()(ぎく)はもう教室にいたし、浩太(こうた)とクラリスとキマロは遅れてやって来た。


 クラスメイトたちも、クラリスとキマロと過ごす時間の終わりが近づいていることを知っているからか、二人に話しかけてくることが多かった。


 残りの1週間もいつもの日常を送った。いつも通りに授業を受け、放課後は怪異研究会の資料室で過ごしたり、ルビーのアンティークショップを訪れたりした。


 そしてクラリスとキマロが帰る前日、2組の教室でささやかなお別れ会が行われた。


「クラリス、キマロ。これ、うちのクラスからよ」

 クラス委員長の愛佳(あいか)が包装されたプレゼントをクラリスに渡した。


「ほぉ、一体なんじゃ?」

「今開けても良いのかな?」

「開けて!」

 促され、クラリスは封を開ける。


「これは……」

「アルバムだよ。これまでのね」

 クラリスはアルバムをめくった。拓海も仕上がりは見させてもらっている。クラリスとキマロが来る前の写真も混ざっている。クラリスたちが来た頃、デボール事件があって混乱している1年2組の教室の中、文化祭や体育祭、スキー教室やプチ修学旅行。様々な写真が織り込まれていた。クラスメイト一人一人からの直筆メッセージの書かれたページもあった。


 クラリスは無言でアルバムを眺めているうちに、ポロポロと泣き出してしまった。


「大切に……する。みんな、ありがとう……」

 莉子や愛佳がクラリスの元に向かい、慰めた。


「本当にありがとう。ワシらは、良い時を過ごした」

 キマロはクラリスの肩に止まって言った。


 二人はさらに、自分たちを受け入れてくれたことへの感謝、一緒に学校行事をしたことへのお礼、良い人生を送ってほしいという別れの言葉をクラスメイトに送った。


 生徒たちからは拍手が上がった。


 放課後は、怪異研究会のメンバーでルビーのアンティークショップに顔を出した。


「もう明日ね。クラリス、キマロ、地球はどうだった?」

「楽しかったです……」

「そもそもルビーには一番お礼を言わねばならぬ。ゾダールハイムを邪神竜から救ってくれてありがとう」

「全員で勝ち取った勝利よ。私はきっかけに過ぎない」

 ルビーは全員にお茶を入れてくれた。


 拓海たちは椅子に座って時間を過ごす。しばらくすると、浩太とクラリスとキマロは魔具を見物し始めた。


「ここを見られるのも今日が最後か……」

「くっくっく、結局ワシとコウタの契約を解除することは、チキュウの魔具にも出来んかったの!」

「むしろ良かったじゃないか。それができなくて」

 浩太たちが話している。


 そんな中、拓海は思い切ってルビーに聞いてみた。


「あの異世界の鍵、やっぱりもう使えないんですか?」

「回収されてしまったから無理ね。私より上位の怪異がコントロールしているから私にもどうにもならない」

「そうですか……」

 莉子も残念そうに呟いた。


 その後、ルビーも含めて全員で語り明かし、ルビーはクラリスとキマロにお土産を渡した。時間も遅くなり、拓海たちは帰宅する準備をした。


「ルビー、世話になったの」

「今までありがとうございました」

「来てくれて楽しかったわ、キマロ、クラリス。明日は私もゲートまで見送りに行くから」

 挨拶をし、拓海たちは帰路についた。


 日菜菊は第2寮に帰るため高校方面に向かい、残りのメンバーは家に向かう。浩太たちの最寄り駅に着くと、拓海と莉子はクラリスとキマロを見送った。


「じゃあね、クラリス、キマロ。また明日……」

「うん。また明日。バイバイ……」

 莉子とクラリスが最後に声を掛け合い、浩太とクラリスとキマロは歩き始めた。拓海と莉子を乗せた電車も出発し、二人はホームを歩く浩太たちを見送った。


 拓海は莉子と共に最寄り駅から家までを歩く。


「明日……か。あっという間だったな」

「そうだね。楽しかったよ……」

 どうしても空気が神妙になってしまうのだった。


 拓海の母・知里(ちさと)はこの日も遅い帰りだったが、拓海と莉子は拓海の家で夕飯を作ることにした。手を動かしていたかったのだ。


 二人で夕飯を食べ、そのまま話をしていると、知里が帰宅した。知里の分も用意してあったので、3人で食卓に座る形になった。知里も交えて会話をする。


 そのまま遅い時間になっても莉子は帰宅しなかった。拓海も一人になりたくない気持ちがあり、莉子に泊まっていくことを提案した。莉子もそう思っていたようで、パジャマ等の準備をして拓海の部屋にやって来た。拓海と莉子の間のことなので、知里も莉子の両親も了承した。


 二人でこの1年の思い出話などに花を咲かせた。それは夜がふけるまで続いた。

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