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82限目 出かける

 レイラは着替えて、髪をポニーテールにして毛先を巻いた。

 鞄にまゆらと交換しメガネが入ったメガネケースとハンカチ、ティッシュそれから電子マネーのカード入ってる事を確認した。


 机の上にあったネックレスをみた。


(兄貴からもらったコレ、しなくちゃダメかなぁ。でもアイツと出かけるから必要ないんじゃないか。いや、だからこそつけないとダメか?)


 レイラはネックレスを手に取るとじっとみた。一見、チャームの蝶はとてもかわいく、羽の部分にある水色とピンクの宝石が輝きおしゃれなデザインであった。


(するか。約束だしな)


 トントン


 準備を終えたころ扉をノックする音が聞こえた。レイラが返事をすると現れたのは家政婦のなぎであった。


「おはようございます」


 凪はいつも、レイラが朝食をおえ身支度を整えてから部屋を訪ねてくる。慣れない人間に自分の油断した姿を見せるのが嫌であったレイラがそうするようにお願いしたのだ。



「おはようございます。凪さん」


 凪は頭を下げると、室内に入り扉をしめた。


「早速ですが、伊藤いとうカナエさんの報告をさせて頂きます」

「いつも、ありがとうございます。お手数をかけします」

「いえ、気にしないでください。仕事ですから」


 凪は淡々と答えた。


「いつも通りの時間に出勤して、昨日と同じ事務仕事を家政婦専用の家で行っています」

「そうですか」


 レイラは彼女に報告に安心した。あの事件があってカナエはレイラ付きの家政婦でいることができなくなった。本来は懲戒免職となるはずであったが、レイラが両親に働けるように願ったのだ。


(俺の家政婦でいると、イレギュラーな仕事が多くなるが山崎について事務仕事なら常に同じ時間に同じ仕事ができて彼女の特性にはあっているだろう。だいたいレイラから離れる事が両親や兄貴の絶対条件だったな)


 強姦未遂事件の後に行われた、両親と兄貴との会議を思い出してレイラは鼻で笑った。


(あの両親も(レイラ)を心配するんだ)


「レイラさん。何か問題がありましたでしょうか」


 沈黙が続いたため、凪は声をかけた。


「いえ、出かけますわ。お兄様と車の準備が終わったのですよね」

「はい」


 レイラは鞄とコートを持つと、部屋を出て玄関に向かった。その後を凪は追うように歩いた。


 玄関につくと、リョウがいた。彼はレイラの姿を見ると、挨拶をした。


「おはようございます。レイラさん」

「おはようございます。お兄様」


 リョウは襟つきのシャツにくるぶしくらいの丈のズボンを履き、ダッフルコートを着ていた。靴は革靴だ。


「なんですか? そんな見て」

「いえ、中学生には見えないと思っただけですわ」

「そういう、レイラさんもつい数ヶ月前まで小学校に通っていた女子には見えませんよ」

「そうですか?」


 レイラは自分の姿をみた。黒のパンツに白のシャツを着ていた。トメが専属の家政婦であった頃は清楚系のスカートが多かったが、今は自分で選んでいるため自然とパンツスタイルが増えた。


「いいですけどね。レイラさんは亜理紗様を迎えに行くのですよね? でしたら私は先に目的地に向かいますね」

「わかりましたわ。ユリコさんから聞いてると思いますが準備をよろしくお願いしますわ」

「わかりました」


 レイラに返事をすると、リョウは車に向かった。

 レイラが車に到着すると頃にはリョウの乗った車が動き出した。レイラが車に乗り込んだことを確認した運転手の敏則はゆっくりと後部座席の扉をしめて運転席に乗り込んだ。そして、レイラに声をかけて車を走らせた。


 車が出発して少しすると、敏則が声をかけた。


「お友達とお出かけとは、珍しいですね」

「そうですね」


(初めてだよ。遊んでくれる人間なんていなかったからな)


 しばらくすると、大きな門が見えてきた。亜理沙の家はレイラの家よりは小さいがそれでも一般家庭よりははるかに大きかった。


 車の速度が落ちて、ゆっくりと門の前に止めると敏則はハザードランプをつけた。そして、車から降りようとしたのでレイラは止めた。


「大丈夫ですわ。1人で行きますわ」

「……、わかりました」


 敏則は少し考えた後、にこりと笑った。そして、シートベルトを外したのでレイラは「すぐに戻りますわ」と言って、自分で車の扉を開けて外に出た。


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