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74限目 査問会③

 部屋には桜花会と生徒会の会長、副会長、書記とレイラだけになった。レイラは椅子の前に立ち、姿勢を正して、憲貞の方を見ていた。


(居心地が悪い)


 憲貞はゆっくりと瞬きをして周囲を見た。


「桜花会会長、天王寺憲貞の名のもとに大道寺レイラと豊川亜理紗の主従関係を認める」

「生徒会会長、江本貴也の名のもとに大道寺レイラと豊川亜理紗の主従関係を認める」


 憲貞に続き、生徒会長の貴也が言葉を続けた。

 レイラはゆっくりと彼らに向かった頭を下げた。


 しばらく時間を置いてから憲貞はレイラを真っ直ぐに見て口を開いた。


「主従関係を結んだため、豊川亜理紗の桜花扇子強奪はなかったとする。ただし、中庭占拠の問題は片付いていない。主従関係を結んだ今、この問題は主人である大道寺レイラに課せられる」


 彼の動かない表情から感情を読み取ることができなかった。

 全員の視線がレイラに集まった。


「はい。承知しておりますわ」

「では、その件について全校生徒に謝罪するように。方法は問わない」

「え、それだけですの?」

「先ほど、君自身が言っていただろ。“中庭占拠は謝罪でどうにかなります”とな。だから謝罪を要求する。異議のあるものはいるか」


 憲貞はゆっくりと桜花会の人間を見てから、生徒会役員の方に視線を向けた。


「問題はありませんよ。だだ、今後はしっかりと管理してくださいね。レイラ様」


 貴也は穏やかな声でいうとニコリと笑った。貴也がほほ笑んだことで生徒会役員は心なしか雰囲気が暖かくなった。


「はい」


 レイラが貴也に言葉にうなずき返事をすると、憲貞は一度目を閉じてからゆっくりとあけレイラを見た。


「来年だが、大道寺レイラに桜花会会長を命じる」

「-ッ」


 レイラは言葉がでないほど、驚き憲貞を見たが彼の表情は変わらない。


「主従関係を結んだ、主人の上に人がいてはならない。その他の役職については追って知らせる」


 憲貞は言い終わると、圭吾の方を見た。彼は、頷き立ち上がった。


「これで本日の査問会は終了とする。今回の内容については桜花会として正式に決定するが、一般生徒への告知は後日行う。それ以前にこの内容ついての情報を漏洩した者は処罰の対象となる」


 その言葉が終わると、憲貞が立ち上がり室内にあるカードキーに自分の学生証を通し部屋を出ると桜花会役員がそれに続き各自学生証を通して部屋をでた。更に、生徒会役員も同じ様にして外に出て部屋の中はレイラ1人となった。


 先ほどまでピリピリとしていた空気であったが、今はそれもなくなった。しかし、レイラの心は荒れていた。


(会長って。来年? その時、レイラはまだ、二年だぞ)


 体の全身の力が抜け、椅子に項垂れるように座り床を見ていると、カチャリとドアのロックが解除された音がした。レイラは慌てて身なりを整えていると扉が開いた。


「レイラ様……?」


 驚いた声をあげたのは、彩花であった。


「お疲れですか?」

「……」


 質問しながら近づく彩花にレイラは必死に身なりを整えると、にこりと笑顔を見せた。それを見て、彩花はニヤリ笑った。


「随分取り乱したようですね。どうしたのです? 亜理紗様との主従関係ですか? 恐らくそれは覚悟されていましたよね。すると……」


 顎に手を当てて、考え始める彩花をレイラは黙って見つめていた。


「あー、主従関係を持ったと言う事は……う〜ん。もしかして、次期会長に指名されました?」

「……」


 レイラは何も言わないのを、肯定と取り彩花は嬉しそうに笑った。


「素晴らしいではないですか。私はこの制度の価値がわからなかったのですが、レイラ様があの亜理紗様をしがえて会長になるなんて、うん。いいですね」

「……」

「ダンマリですか?」


 首を傾げる彩花をレイラは困った顔をして見た。


「仮にわたくしがそうなると想定した場合、なぜ貴女は嬉しそうなのですか?」

「想定ですか」


 目を細めてレイラを見たが、特に彼女は返事をしなかった。彩花は諦めて言葉を続けた。


「愚問ですよ。亜理紗様の行動に傷つく人が多くいました。しかし、今後はレイラ様によって制御されるのですよね。それほど羨ましい事はありません」

「制御……」

「ええ、管理してくれるのですよね。これがこの制度の正しい使い方なのですからね」


 彩花の言い回しにレイラは首を傾げた。


「正しい使い方ですか」

「そうですよ。この制度の本来の意味を知っているのに成り立ちを知らないのですか?」


 彩花に言われて、レイラは手で口を押さえて考えた。


(成り立ち……。わかんねぇなぁ。制度の説明は規則に載っていただけだしなぁ)


 その様子を見て、彩花は眉をひそめてレイラの隣の席に座った。

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