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23限目 相談室とは名ばかり

 亜理紗が部屋を出たところで、レイラは扉を閉めた。すると、香織はがくるりと後ろを向いた。


「レイラ、私は亜理紗と今の事報告に行くから」

「分かりました」

「送れなくてごめんね」


(初めから送るつもりはなかっただろ)


 レイラは香織に首を振り、眉をさげたて彼女の顔を見た。


「いえ、今回は予想外の事が起きましたし仕方ありませんわ。私も報告書、書いた方が良いのでしょうか」

「う〜、大丈夫じゃないかな。君はなにもしなくていい」


 軽い口調で言っていたが香織の目は鋭く光っているようにレイラは見えた。その目を見た瞬間レイラは寒気がした。


「わかりました。それでは失礼致します」

「うん」


 レイラは頭を下げるとその場を去っていった。


 香織はレイラが見えなくなると、桜花会の部屋に向かって歩きだした。亜理紗は青い顔をして彼女の後を追った。

 桜花会室の赤い扉までくると、香織は学生証を機械に通して、さっさと部屋に入った。

 亜理紗はためらいがちに学生証を機械に通すと名乗り入室した。


 部屋に入ると仕事を終えた、桜花会の会長である天王寺憲貞(てんおうじのりさだ)と5年副会長の中岡圭吾なかおかけいごが入り口に一番近い、白いソファに対面に座り、ゆっくりとお茶を飲んでいた。


 書記の北沼真人きたぬままさとはいなかった。


「やぁ、香織かおり……」


 憲貞が笑顔で声を掛けたが、香織の顔を見て黙った。いつも、圭吾を見ると笑顔で真っ先に話かけてくる亜理紗であったが今は香織の後ろで下を向いている。


 香織は、ソファに座っている憲貞を見た。彼は眉を下げて困った顔をした。


「あ……相談室かい?」

「1時間」


 憲貞は香織の圧にまけて、胸ポケットからカードキーを出して渡した。


「ありがとう。感謝するよ」


 そう言って、香織はカードキーを受け取った。

 憲貞はため息を付いて頭を振った。


「お昼ご飯注文しますか?」

「頼む。折角書類終わったのに……もう次か」


 圭吾は、自分の携帯電話を取り出すと、香織は「私の分も頼む」と言って、会長席に向かった。亜理紗は二人に頭を下げると香織の後を小走りで追った。


 香織は会長席までくるとその後ろにある扉の前に立っていた。

 憲貞から借りたカードをとっての横にある機械に通して、番号を押した。


 すると、機械音がして扉が開いた。


 部屋にはテーブルがあり、そこに対面に椅子が並んでいた。その奥には小さな一人用の机と椅子がある。クローゼットもあり、更に置くに行く扉がある。

 白に統一されたシンプルであるが清潔感のある部屋だ。


 香織がテーブルの奥に座ると、亜理紗は扉に近い椅子に座った。


 二人が座り終わった時「失礼致します」と言う声と共に圭吾がファイルを持ってを現れて一番奥の机に座った。椅子は壁を向きに置かれているため圭吾は二人に背中を見せる形で座った。彼からも二人からもお互いの表情が見えない。


 圭吾はファイル形式を開きペンを持つとを「準備できました」と言った。香織はそれに頷くとテーブルの上で手を組んだ。亜理紗は姿勢を正し眉を下げて不安そうな顔で香織を見ていた。


「始めるか。さて、桜花会は桜華ではどんな存在でなければならないか分かるかい?」


 香織はニコリと笑いながら亜理紗に問いかけた。


「はい。全生徒に尊敬されるべき存在です」


 亜理紗は震えながらも、香織から目を逸らさずに答えた。その答えに彼女は目を細めて、亜理紗の瞳を覗きこんだ。


「今回の原因は?」

「あ……」


 亜理紗は香織の圧に、言葉がでなかった。身体の前で胸を抑えるように両手を重ねて、涙目になりながら香織を見た。それはまるで蛇に睨まれた蛙であった。


「聞こえない?」


 亜理紗に香織は顔寄せた。亜理紗は必死に恐怖を抑えて話始めた。


「いえ。私は元々成績がよくありません。それでも3年までの特待Aは丁寧に教えてくれました。しかし、4年になってから特待Aが変わりました。彼女たちの教え方は私の能力では理解するのが難しく成績が下がりました。やっていた問題は彼女たちの出されだ夏休み中の課題で、間違えを指摘されました」

「なるほどね」

「香織様、今回は本当にありがとうございました」


 亜理紗は目をつぶり、テーブルにおでこをつけた。それを見て、香織は苦笑いをした。


「私はただ騒動を見に行っただけだよ。助けたのはレイラだ」


 いつもとは違う、冷たい口調に亜理紗は驚き、頭を上げた。そこには無表情で亜理紗を見下す香織の姿があった。


「桜花会は全生徒に尊敬されるべき存在といったのは亜理紗だよね」

「はい」

「なら、その意味分かるよな」

「はい」


 亜理紗の返事を聞くと、香織はニコリした。


「うん。今後の活躍に期待している。帰っていいよ」


 香織がその場で手を振ると、亜理紗は立ち上がり「はい。ありがとうございました」と言って頭を下げると小走りで部屋を出て行った。


「あ~」


 香織は大あくびをして、両手を伸ばした。それから首を回すと立ち上がり、ネックレスを取ると書類を書いている圭吾に渡した。彼は眉を下げてそれを受け取った。


「憲貞との約束は一時間はだからまだ数十分はあるね」

「そうですね」

「よろしく。お昼は憲貞が出すだろうからさ」


 そう言って香織は圭吾の返事を待たずに部屋をでた。


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