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22限目 桜花会の香織

 心配そうな顔して入ってきた香織であったが、レイラには彼女の表情が悪魔の微笑みに思えた。

 その姿は黒服二人にとっては神様に見えるらしく、パッと顔が明るくなった。


「香織様」

「どうしたんだい?」


 黒服二人は嬉しそうに香織に近づいていった。香織はニコニコしながら彼女たち話を聞いている。


(おいおい。あの二人はバカなの? 香織も桜花会だそ。その中でも最も冷酷なのにな)


 レイラは近くに椅子に座り扇子をゆっくりと動かしながら、亜理紗の方をみた。彼女の顔はさっきと全く違い真っ青な顔をして唇を震わせていた。

 香織は黒服二人を連れて、ゆっくりとレイラと亜理紗のもとへきた。

 そして、近くの椅子に座るとその後ろに黒服二人が立った。それはまるで黒服二人が香織の側近みたいであった。


(あの子たちなんか幸せそうな顔しているよ)


 レイラは黒服二人に同情した。


「ねぇ、亜理紗。この達が亜理紗の勉強を見ていたらレイラが邪魔したと言ってるだけどどうなのかな?」

「……」


 亜理紗は下を向いて、唇を震わせて何も言わない。レイラはパタパタと扇子を振った。


「ちょっと、中学生。香織様が今話しているのよ。その変な扇子をしまいなさいよ」

「そうよ。失礼よ」


 二人はレイラを指さして強い口調で言い放った。彼女たちは香織が自分側についたと持っているらしくレイラへの敬語も忘れていた。


 香織の眉がピクリと動いた。


 レイラは目を欲しめて天井の方を見た。


「香織先輩、監視カメラを確認した方が早いのではないのでしょうか。最近、音声が鮮明に入るものに変えたのですよわよね」


 黒服二人の身体ビクリと跳ね上がり眉を下げて、ポニーテールの女子生徒が慌てた。


「そこまで、する必要はないと思いますわ」

「そうですわ。それに監視カメラを見るのは先生にお願いしないといけませんし」


 香織は黙って彼女たちの話を聞いていた。時折レイラ方へ視線を投げた。そのたびに彼女と目が合いレイラはめんどくさく思った。


(まだ、続けるのかよ。もう終わりにしようぜ。本当帰りたい)


 レイラは扇子を閉じると、その先端でポニーテールの女子生徒を指した。


「そうですか。私はお二人が亜理紗先輩付きの特待Aにもかからず、キチンと勉強を教えていなかったように思いますわ。更には桜花会である亜理紗先輩を罵倒していたように感じましたわ」

「そんなことはありませんわ」


 ポニーテールの女子学生は話しているレイラではなく香織に強く訴えた。そして、亜理紗のところへ行くとレイラが亜理紗に教えた問題用紙を持って香織に渡した。彼女はそれを受け取り「なるほど。とても分かりやすいね」と言って褒めながらその答案用紙をみた。


「ありがとうございます」

「これは君が書いたのかい」

「ええ、香織様に褒めて頂き嬉しいですわ」


 ポニーテールの女子生徒がニコリと笑って言った時、三つ編みの女子生徒が「え」っと目を大きくした。それをポニーテールの女子生徒が睨むと「そうですわね」とひきつった笑顔を作った。


(あの二人、レイラも亜理紗も桜花会だってことこいつら忘れてねぇか。まぁどうでもいいけど。早く帰りたい)


 レイラはため息をついた。


「あら、そうですの? それでは私と意見が違うますわね。それは私が書いたのですわ」

「ウソですわ」


 ポニーテールの女子生徒が即座に反論した。香織は困った顔して女子生徒二人の顔を見た後、レイラの顔を見た。そしてしばらく悩んだ後、「あっ」と声を上げた。


(わざとらしいなぁ)


「そうだ。筆跡鑑定をしよう。丁度今日テストだったしそれで鑑定すればいいね。少しお金がかかるけど真実を知るためには仕方ないね。まぁ、ウソであった方に払ってもらえばいいか」

「まぁ、20万くらいですね。真実を知るためには安いものですわね」


 レイラはわざと大きな声で値段を強調した。


(多額の支援金がでる桜華に特待ではいるやつは、経済的に頻拍してることが多いが二人はどうかな)


「……」

「……」


 二人は真っ青な顔をして下を向いている。香織は後ろを向きそんな二人ににこやかに微笑んだ。


「君たちもそれでいいよね。筆跡鑑定と監視カメラ確認をしよう。まぁ、すぐに結果はでないから9月の新学期にまた話そう」

「……」

「どうしたんだい? まさか、桜花会相手にウソをつくなんて事はないだろうから大丈夫だよね? 私たちを相手にするのは一般生徒とは意味が違ってくることは勿論、特待Aの二人なら知っているよね。この方法でいいよね?」


 女子生徒二人は勢いよく顔上げて、レイラと亜理紗の姿をみた。彼女たちは桜花会の白服と言われる白い制服を着ている。


「……はい」

「……わかりました」


 二人は小さな声で返事をすると、香織は満足そうに笑って立ち上がった。そして、亜理紗とレイラの顔を見た。


「それじゃ、亜理紗、レイラ行くよ」


 香織の声でレイラは返事をすると、亜理紗も慌てて返事をして立ち上がった。

 二人は香織の後を追うと、香織は突然立ち止まった。そして、レイラの方を見た。

 レイラが首を傾げると、彼女が持つ扇子に触れた。


「私があげた、扇子よく似合っているよ。桜花扇子だから“変”ではない気にするな」


 それを聞いた黒服二人は固まり言葉が出なかった。


「ありがとうございます。香織先輩の録音機能付きネックレスも素敵ですわ」

「ありがとう」


 楽しそうに笑う香織とレイラの後ろで、亜理紗はチラリと床に座りこむ女子生徒二人に悲しげな顔を向けた。


「亜理紗何してんだ。行くよ」

「はい」


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