127限目 鈍器で頭を殴られたような衝撃
まゆらは相馬に書類の受け取りに誘われて、時計を見た。
「こんなに早く行って、桜花会の方は書類ができているのですか?」
「今回の件はレイラ様が作ってるから大丈夫よ。仕事早いもの」
横から彩香が口を出してきた。それに相馬は嬉しそうな顔をした。
「あやちゃん、ありがとう」
「いいえ。レイラ様については何でも聞いてね」
「はい」
笑顔で礼を言う相馬とレイラの全てを知っていると語る彩花に腸が煮えくりかえりそうになったがまゆらは必死で押さえ、返事をした。
まゆらと相馬は一に桜花会室に行く事を伝えて部屋を出た。
「阿倍野君は中村さんと付き合ってる話は本当です?」
唐突に聞いたので相馬は驚き真っ赤になり口をパクパクと金魚のように動かした。
本来は世間話からして少しずつこの話しに移行した方が良いことは知っていたが今のまゆらにはその余裕がなかった。
「どうなんです?」
「あ、いや、その。付き合ってるというか付き合って貰ってるというか」
「どういう事なんです? 付き合ってるのですよね? なら、中村さんがレイラ様を親友以上と言っているのはほっといていいですか?」
「そんな事言っているのか」
相馬は驚いた顔をしたので、それに期待したが彼はすぐに笑顔になったのでまゆらは落胆した。
「素晴らしいね。あやちゃん本当にレイラ様が好きなんだ」
「嫉妬とかないのですか?」
「えー、ないない」
相馬は思いっきり首を横に振った。
「俺はあやちゃんが幸せで、そばに居られればいいんだよ。あやちゃんの世界にレイラ様が必要なら俺はレイラ様も守るよ」
「そうなんですか。でも、もし、もしですよ。中村さんがレイラ様が一番と言って将来的にレイラ様と一緒にいることを望んだらどうするのですか?」
「え? 将来? うーん」
相馬は天井をみて少し悩むとまた、満面の笑みを見せた。
「俺もその近くに住ませてもらえたらいいな」
「そうなのですか」
相馬の反応はまゆらの納得のいくものとは程遠かった。
そんなことをしている間に桜花会室の前まできた。相馬が部屋をノックするとすぐに春が顔を出した。そして、何も言わずに部屋に戻るとまた出てきた。
「これ?」
ぶっきらぼうに渡してきたのは桜花会権限一時停止解除についての書類だ。
「ありがとうございます。二階堂様」
「ええ、よろしく」
相馬が丁寧にお辞儀をすると春は無表情のまま短く返事をし扉を閉めた。
その態度にまゆらは驚いた。
「なんですか? あの……」
まゆらがそこまで言うと相馬は慌てて、彼女の口を抑えて桜花会室から離れた。そして、近くの教室にまゆらを引き入れりと座り込み息を吐いた。
「ーッ」
「あ、ごめん」
相馬は口を抑えていることに気づき手を離した。
「なんなんですか?」
「ごめん。でも、河野さんが心臓に悪い事を言おうとしたから」
「え?」
「二階堂様の態度を批判しようとしたでしょ」
「何が問題なのです? 彼女は1年ですよね? 先輩に対してアレはないです」
その言葉に相馬は大きくため息をついた。
「河野さんは去年まで公立にいたんだよね? 桜華は公立とは違うんだよ。全校生徒の上に桜花会があるんだ。だから、1年でも桜花会なら黒服の6年は敬語を使い頭を下げるよ」
「でも、レイラ様はあんなぶっきらぼうで偉そうではないですよ」
「だから、レイラ様は異端と呼ばれ黒服に好かれているんだ」
「好かれる?」
まゆらが目を大きくすると、相馬は「当たり前」だと言った。
「あやちゃんほど耽溺してる人も少なくないんじゃないかな。だから、レイラ様と仲のよいあやちゃんは羨ましがれているよ。レイラ様が会長になってからはあやちゃんを通してレイラ様と知り合おうと言う人も増えたしね」
始めて目の当たりにする事実にまゆらは言葉が出てこず頭が真っ白になった。
「黒服は憧れが強いけど、同じ桜花会の方は本気でレイラ様を狙っているかもね」
相馬のその言葉はまゆらにトドメをさした。まゆらは鈍器で頭を殴られたような気がした。
「あ、それと僕とは同い年だし敬語じゃなくていいよ」
相馬が遠慮がちに言うがその言葉はまゆらの耳には入って来なかった。




