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126限目 内心穏やかではいられない

 しばらくして、まゆらは頭をあげた。


「これですね。署名は……江本貴也さんって前会長ですか」

「前会長を知っているのか?」


 隼人のサラサラとした前向きの揺れた。

 まゆらはその瞬間言い訳を考えたが、ボロが出るのを恐れ当たり障りのない返事をした。


「……そうですね。噂ですが」


 すると、隼人は前髪が大きく揺れるほど頭を動かして頷いた。


「そうだな。江本会長は桜花会と対等に渡り合えてる生徒会を作った方だ。外部にも噂は広がるよな。それに比べて今年は……」


 隼人は悲しそうにため息をついた。


「本当になんで役職が成績順なんだ。それを決めた奴って……江本会長だった。確かに成績優秀な人間は素晴らしいが奴は例外だ」


 それに彩花は同意した。


「そうですね。その点レイラ様は素晴らしいですね。学年トップですし、まだ2年でいらっしゃるのに去年の功績も感服です」


 彩花にレイラが誉められ、まゆらは心があたたまりそれが顔に出そうになったため力をいれた。それが彩花には桜花会を恐れているように見えた。


「河野さん。確かに桜花会と言うと顔が強張るのも分かるけどレイラ様は違うよ。河野さんが今見ている豊川亜理紗様の件だってレイラ様の功績だよ」


 彩香は胸に手を当てて、頬を赤く染めながら話始めた。その姿は完全に耽溺たんできしていた。


「豊川亜理紗様は、傲慢で我儘な上に成績が悪く、特待Aの力なしでは留年する可能性がある方です。だから、特待Aにいじめられる姿があったのよ」


 声を小さくして言いづらそうであった。そんな彩香に隼人は「その原因は中村だと聞いたが」と言ったが彼女は“あはは”と笑うだけであった。


「だから、レイラ様は亜理紗様から特待Aを外した。それで、レイラ様自身から勉強を教えて貰って成績をのばしたんだよ」

「詳しいですね」


 まゆらにそう言われたのが嬉しかったようで、彩香は機嫌よく笑った。


「それは、レイラ様の親友以上だから」


 その言葉にまゆらの眉がピクリと動いた。


「なんだ、それは友だちじゃないのか。だいたい、桜花会と生徒会が仲良くするなんて」


 隼人が言葉を強くすると、桜花は声あげて笑った。


「それは癒着という問題ですよね。そんなの、桜花会が強行すればどんなに生徒会が反対しても決まりますよね。豊川亜理紗様の件がいい例です」

「確かにそうだが……」


「豊川亜理紗様の件って生徒会は反対したんですか?」


 キョトンとした顔のまゆらが聞くと、隼人は言いづらそうな顔をした。


「なんて、言うか……」

「江本会長は豊川亜理紗様の特待A廃止に反対だったんですよね?」


 彩香が、はっきり言うと隼人とは口を閉じた。しかし、彩香はそれを許さず彼に同意を求めた。すると隼人は困った顔しながら頷いた。


「なぜです? 特待Aと相性が悪いのでしたら、廃止や変更があってもいいのではないですか」

「そう思うよね。レイラ様は豊川亜理紗様に非があるから特待Aを廃止としたんだよ。意味わかる?」


 まゆらの頭の中に、特待規約が浮かんだ。


「桜花会に非があるなら、桜花会付きを外れても特待権利はそのままだからですか」

「そう。だから、江本会長は反対しんだ。もちろん、俺も反対だった。桜花会というか、いじめという行為をして特待権利がそのままなど有り得ない。豊川亜理紗様の以前の特待Aは退学にまでなったんだ。それなのに次の奴らだけ優遇するなんて」


 隼人は感情が高ぶり、両手でテーブルを叩いた。その勢いで前髪があがり素顔が見えた。彼の目は青かった。


「青い……」


 思わず、まゆらが口に出すと彼は慌て前髪を抑えた。


「ハーフなんだよ。それだけ」


 何も聞いていない2人に彼は強い口調で言った。そして、それ以上聞くなと目で訴えてきた。肩をすくめながら「続きを」というにまゆらに隼人は頷いた。


「だから、先ほど中村が言ったとおり桜花会が強行したんだ」

「私は良い判断だと思います。特待Aがいるのにレイラ様が教えて成績上がったら彼らが嫉妬して豊川亜理紗様へのあたりが更に強くなるかも知れません。特待Aの人間を変えても状態は変わりませんでしたし、変えたら前の特待Aはやめてしまうかも知れません。そしたら、誰もやめずいじめがなくなった今の状態が最高じゃないですか」


 彩香は楽しそうに語ると、隼人は「そうだが」と言った。それを彩花はニンマリと笑って見た。


「むしろ、レイラ様と一緒にいて今後の桜華を共に考えていくべきなのですよ」

「共に? あのレイラ様とできるのか」

「私はできますよ」


 その彩香の台詞にまた、まゆらの眉がピクピクと動いた。

 頭の上で話を進める隼人と彩香をまゆらは眉間を寄せて見ていた。するとそれに気づいて彩香はまゆらの方を向き、座っているまゆらに合わせて少しかがむと優しく笑った。


「河野さん。そんなに、怖い顔しなくても大丈夫。私はレイラ様と対等に話ができるんだよ」

「対等ですか」


 まゆらは“怖い顔”と指摘されてあわてて、眉をさげた。


「ええ、レイラ様は私のためなら何でもしてくれると言ったのよ」

「……」

「そうだよね。河野さんが驚くのも無理ないよね。だってあのレイラ様だから」


 楽しそうに話す彩花に隼人は首をまげた。


「確かに、よく一緒にいるようだが本当か?」


 彩香の真後ろで隼人はつぶやいた。彩香はまゆらから離れ彼の向き、隼人を見上げた。


「勿論ですよ」

「分かった。退学にならないように頑張れ」

「レイラ様が私を退学にするなんて有り得ないです」


 彩香の一連の会話に、まゆらは内心穏やかではいられなかった。今すぐ自分がレイラ様の家で暮らしている事を話したがったがそれが得策ではないことは分かっていたため必死に堪えた。


 その後、少しすると生徒会の人間が全員集まり会議が始まった。その会議中、まゆらはずっと彩香をレイラから離す方法を考えていた。


「……なるほど。わかった。では、河野さん宜しく」

「はい」


 事前に隼人にも言われいた“横山大晴様 桜花会権限一時停止の解除について”の最終報告書の作成を一に改めて任された。


「一人では大変だろ。うーん。阿倍野くん一緒にお願いできるか」

「はい」


 事前に頼まれていたようで一に言われた阿倍野相馬は特に驚くことなく返事をした。


「それでは今日の会議はここまでとする。各自最終下校時間までは帰るように」


 一のこの言葉で会議は終了し各自仕事を始めた。

 相馬は会議が終了するとすぐにまゆらのもとにきた。


「河野さん。行こうか」


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