124限目 攻略対象者の処理
レイラはまゆらの様子を心配して声をかけると、「大丈夫です」と笑顔を見せた。彼女はゆっくりと深呼吸をすると部屋にある時計を見た。
「そろそろ夕食の時間ですね」
「そうですわね」
レイラはまゆらの態度を不思議に思いながらも夕食に向かった。
タエコが作る料理はとても美味しく、まゆらに対する違和感も忘れて料理を楽しんだ。まゆらも笑顔で食べていたのでレイラは安心した。
食事が終わると、まゆらはレイラと別れて自室に入った。
そして、大きなため息をついた。
「なんでだー。中村彩香と阿倍野相馬をくっけたんじゃないのか。ふたりでイチャイチャしててよ」
まゆらはイライラしながら、ドカンと椅子に腰掛けた。そして、マイク付きのヘットフォンをつけるとパソコンを開き、ネット電話をかけるとすぐに相手がでた。
「リョウさん?」
『なんですか?』
「中村彩香と阿倍野相馬は付き合ったのですよね」
『そうですね。その瞬間は見ていないですか?』
まゆらは彩香の後を追っていた相馬を誘導して、彩香と2人きりにした時の彼らの会話を思い出した。
「阿倍野相馬は中村彩香の犬になると言っていました」
『犬?』
リョウの驚く声がした。
「関係はいいです。仲良くなればレイラさんに近づかないと思ったのに……」
『友だちくらい、いいのではないですか?』
まゆらは歯をガタガタと震わせ、手を握りしめた。
「ダメ。ダメです。言いましたよね? 中村彩香に何かあれば阿倍野相馬がそれを恨み、レイラさんを学園と大道寺家から追放するのですよ」
『その話は何度も聞きました。えっと前作の記憶で、レイラさんが中村さんをいじめ学園から追い出すのですよね? 更に彼女が自殺して阿倍野君がレイラさんを恨むと』
「信じていないのですか?」
『ウソだとは思っていません』
まゆらはため息をついて、唇をかんだ。
「まぁいいです。中村彩香がいるかぎり阿倍野相馬は私に惚れないと思うし」
『その自信が私にはわかりません』
「彼は攻略対象だから、私に惚れるのです」
『攻略対象、それに私も入ってるんですよね』
「そう。でも豊川亜理紗とくっついたからもう私には興味ないですよね?」
『亜理紗の可愛さを教えてもらい付き合えた事は感謝してますが、初めから貴女にそういった興味はありませんよ』
「最初は亜理紗様のことイヤな顔してた癖に。まぁいいです。これでリョウさんと阿倍野相馬はクリアですから」
まゆらはニヤリと笑い、指を二本折り曲げた。
『その、コマのような扱いなんとかなりません?』
「後は、横山大晴ですね」
『聞いてませんね』
ヘットフォンからため息が聞こえたが自分の世界に入ってしまったまゆらには聞こえなかった。
「それと、忘れるところでした。二階堂春様です」
『え? 二階堂さんもその、対象なんですか? 彼女は横山君が好きみたいですよ』
まゆらは「横山、二階堂」とつぶやき、リョウに返事をしなかった。すると、リョウのため息が聞こえた。
「レイラさんが横山君をこの段階で黒服落ちさせたのは良かったです。これであの性格が助長されることはないですね」
まゆらは現状をパソコンに打ち込み確認していった。
『独り言なら切りますよ』
「何言ってるのですか。このままじゃレイラさんひどい目にあうんですよ。協力するって言いましたよね?」
『そうですが……』
リョウのため息の聞こえたがまゆらは気にしない。
「横山大晴と二階堂春を誰かとくっつけなくては。阿倍野相馬は想い人がいるから楽で良かったですし、リョウさんは自主的に動いてくれるので助かりました」
『だから、コマじゃないですって。貴女が妹を助ける為に動いていなければ家から追い出しているところです』
低い声で言うリョウに、まゆらはニヤリと笑った。
「それを聞いて安心しました。私に惚れないでくださいね」
『だから、その自信がよく分かりません。阿倍野君に横山君、それに二階堂さんに私の全員に好かれるって。好みも性格も違う人間ですよ』
リョウがあり得ないという態度をすると「それがゲームなんです」とまゆらは言った。
まゆらは彼に何度も説明しても、どこか馬鹿にしているようでイライラしていた。それから少しリョウと話をすると通信を切った。
まゆらはパソコンを打ち込みながら、今の関係を表にしてみた。
「……さっき、春は大晴に惚れてるっていたよね。振られて仲違いしてないのか? 春は両刀だけど大晴は…
…。いや、でも、彼がいいなら春とくっついてもらってもいいな」
独り言を言いながら、まゆらはパソコンに打ち込んでいった。




