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113/130

113限目 天狗の鼻は早めにおっておく

 腕を組み仁王立ちしているレイラはゆっくりと全体を見てから、大晴を支えている圭吾を見た。


「中岡副会長、彼を相談室へ」

「はい」


 圭吾はレイラから部屋のカードキーを受け取ると、嫌がる大晴を強制的に、会長席に後ろにある部屋に連れて行った。


「お兄様は亜理紗と予定通り仕事を進めてください」

「わかりました」


 レイラが亜理紗の方を見ると、彼女は頷いていた。リョウは足早に、会長席にある資料を持つと亜理紗の元へ行った。


「北沼先輩、一緒にきて記録をお願いしますわ」

「はい」


 真人は開いていたパソコンを閉じると、それを持って立ち上がり圭吾の後を追って会長席の奥の部屋へ入った。

 レイラは、周囲の様子を確認すると、リョウと亜理紗に後をお願いし会長席の後ろにある部屋へと向かった。


 部屋の中央にテーブルがあった。そこの入り口側の席に圭吾と大晴が座っている。奥の離れた場所にある机に真人がパソコンを置いて座っていた。


 室内には窓もあり明るく、警察の取り調べ室のように暗い雰囲気ではない。狭いが各教室と同じ作りであった。


「お待たせしましたわ」


 レイラは、圭吾と大晴の正面に座った。圭吾は真面目な顔をして背筋を伸ばして座っているのに対して大晴は椅子の背もたれに寄りかかり、仏頂面でレイラを見ていた。


(横山……。確か、親は弁護士だった。コイツの父親が一代でデカくした事務所だよな)


「まずは、横山くん説明してくださる?」

「……。なんで、なんで、新入生代表がアイツなんですか」


 大晴はレイラの話を聞かずに自分の感情をぶつけていた。


「新入生代表は、入試もしくは中等部進学試験の首席がなるものですわ」

「そんな……。だって毎年、初等部の桜花会会長がやっているではないですか」


 納得いかないと大きな声だした。感情的になる彼を見てレイラは首を傾げて後ろを振り返り真人を見ると、彼は頷いた。


「なんで、黙っているんですか? やはりアイツを贔屓しているのですね」

「贔屓……。桜花会は常に特別扱いを受けますわ」

「そうではなく……」


 大晴が唇をかみ苦い顔をしている時、真人の座っている横にあるプリンターから音がなり2枚の紙が出てきた。真人はそれをレイラに渡すと彼女は、内容を確認してからその紙をテーブルを滑らせて大晴に見せた。


「なんですか?」


 レイラが提示してものを大晴は眉を顰めて見た。そこに書いてあったからのは新入生代表に選考される対象生徒の規定が書かれていた。

 更にもう一枚の紙には成績順位であった。


「一位が二階堂春アイツで、次は……、え? 一美月? コイツは生徒会の……俺は? どこだ」


 大晴は自分の名前を必死に探した。彼の名前は全体の真ん中あたりにあった。


「なんで、この俺が、黒服なんかの下なんですか? 採点ミスですか? 不正ですか?」


 彼の取り乱し具合が面白くて、レイラは鼻で笑った。


(成績の悪さを他者のせいにするなんて終わってるな)


「貴方の上は全員特待ですわよね。なら仕方ないのではありませんこと」

「なんで、仕方ないのですか。俺は初等部ではずっと一位だったんですよ」


 レイラは説明するのがめんどくさくなり、圭吾の顔を見た。すると彼は、承諾したようで頷いた。


「まず、桜華初等部は相当経済的に余裕がある家庭しか入学できないが、中等部からは特待制度があり支援金も貰えますので経済的に余裕がなくとも点数さえ取れれば入れるんだよね」

「え……?」


 大晴は意味がわからなくてキョトンとしていた。


「桜華はレベルの高い学校じゃないのですか? 家庭教師も桜華に受かった時は褒めてくれました」

「桜華学園は上位校ではありますが、地域を限定しないのであればここよりハイレベルな学校はいくらでもありますわ。特に中学受験で入ってきている特待Sは化け物ですわよ。彼らの中には最難関を落ちて桜華にきている方もいますしね」

「……」


 更にレイラの追加で説明したが、大晴は目をぱちくりとさせていた。


「井の中の蛙大海を知らず」


 パソコンから目を離さず、キーボードから手を離すことなく真人はつぶやいた。


「されど空の蒼さを知れるといいですね」


 真人はそこまで言うと、口を閉じた。「そうですわね」とレイラが言うと圭吾が頷いた。


「君の成績は桜華学園中等部一年では真ん中あたりであり家の規模としても……。そして他者に暴力を働くのは」


 大晴が分かっていない顔をするので、圭吾がはっきり言葉にした。


「あれで二階堂さんがケガしたらどうするつもりかな」

「あんな、カマ野郎誰も心配しませんよ」


 鼻で笑う大晴に圭吾は困った顔をした。そして、先ほどレイラが彼に提示した紙を指差した。


「……確かに制服着用の義務はありますが性別によって着る服を指定はされてませんよ。でも、普通は着ませんよ」


 強く自分の主張をする大晴にレイラは首をふって真人を見ると彼は頷きキーボードを素早く動かした。


「残念だね」


 そう言う圭吾の目は笑っていなかった。そして、携帯電話を取り出すと電話をかけた。しばらくして相手が出て、圭吾は丁寧な言葉であった容赦なく事実を伝えた。


 その会話を聞いて、大晴の顔はどんどん青くなっていた。


 しばらくすると、真人が一枚紙をレイラに渡した。彼女はそれを読み、胸ポケットからペンを出すとサインをした。それを大晴に見せた。

 レイラは淡々とそこにある文章をそのまま読んだ。大晴はそれを手に力を入れて自分のズボンを握りしめながら聞いていた。


「……ってことです。桜花会会長、大道寺レイラの名において命じます。1か月の桜花会権限の停止、および桜花会制服の着用を禁じます。理解しましたら、サインをお願いしますわ」

「いや、そんな……」


 青ざめた大晴は首を振って涙目になっている。その時、圭吾は携帯電話を大晴に渡した。彼は恐る恐る、それを耳に当てた。


「はい」


 震える声で返事をすると、電話の向こうから『何をやっとおる』という低くどすのきいた声がした。


「親父」

『桜花会の規約を読んでいなかったのか』

「いえ、その読んだよ……。でも、そんな大したことしてないんだよ。ちょっと……理不尽だったから。でも、二階堂にアレくらいの事は初等部の桜花会でもやってたし誰も何も言わなかった」


 電話の向こうで、ため息が聞こえた。


『そうか。私はお前を少し母に任せすぎだな。兄がしっかりしていたから安心していたが……』

「兄貴と俺は違う。俺は兄貴よりもいい子だって母さんも姉さんも言っていた」

『……そうか。だが、学園でそれは通用しない。他者を偏見的な目で見るなどこれから上に立つものとしてあるまじき行動だ』

「二階堂のこと? だって、あんなのおかしいよ。男がスカート履くなんて気持ちが悪い。そんなカマ野郎が俺より優秀だなんて認めない」

『お前に認められたい人間がいるのか? お前の承認を得ることで何かメリットが二階堂や他の者にあるのか。今、家を出されたらお前はどうする?』

「え、ちょっと、待って、待ってよ。俺を追い出すの? そんなの、アレだよ。まだ成人してないし養育の義務があるでしょ。ねぇ」


 大晴の電話を持ってる手震えていた。それをレイラと圭吾は何も言わずに見ていた。真人はひたすらキーボードを打っていた。


『養育の義務に私立中学の進学は含まれていない。公立中学でも義務は果たしている』

「ちょっと待ってって。ごめんなさい。謝るから、反省しているから捨てないで。お願いだから。なんでもするよ」


 大晴は涙を流し、懇請こんせいした。


『なんでもするなら桜花会役員に従いなさい』


 その言葉を最後に電話は切れた。受話器から“ツーツー”と聞こえたが、大晴は電話を持ったまま動かなかった。

 圭吾がティッシュを彼の横に置くと、彼はゆっくりとそれを手にして顔を拭いた。


「話はつきましたか? サインをお願いしたいのですがよろしいでしょうか?」


 レイラはにこりと笑って、紙を彼の方に差し出した。大晴はレイラのその笑顔を見た瞬間、体が震えだした。その振動でうまくペンが持てないなかったが、圭吾もレイラも助けることなくその姿をじっと見ていた。

 大晴は必死で手を押さえて、サインをした。


「はい。確認しましたわ。それでは私はこれと今の音声を学園側と成績がに提出してきますわね」

「後の処理はやっておくよ」

「ありがとうございます」


 レイラはそういうと、部屋を出て行った。


「音声……?」

「え? 知らないの? 桜花会の規約にかいてあるけど、会議や打ち合わせなど全て録音しているんだよ。会長はそれを提出しに行った。じゃないと、君の桜花会権限の停止なんてできるわけないじゃん」

「……今の、会話は全て聞かれるんですか?」

「必要ならね」


 愕然とする大晴を横目に、圭吾は立ち上がり部屋の奥から黒い学ランを取り出した。


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