102限目 生徒会への挨拶
レイラは生徒会室の前に立っていた。生徒会ではないレイラはこの部屋を開けることができないため、カードリーダーの下にあるブザーを押した。
しばらく待つと、「はい」と言う返事と共に生徒会副会長の岡田光一が扉を開けて顔を出した。
「どな……、え、レイラ様」
彼はレイラの顔を見た瞬間、固まったがすぐに笑顔になり、扉を開けるとレイラを招いた。
彼女が室内に入った途端、その場にいた全員が目を大きくして固まった。
生徒会室は桜花会室の半分程度の大きさしかない。入って正面の一番奥に会長用の机があり、中央に大きな四角いテーブルがある。それを囲うようにして生徒会の人間が座っていた。
レイラを見ると、生徒会長である江本貴也はすぐにキーボードから手をはなしパソコンを閉じると立ち上がりレイラのもとにやってきた。そして、一礼した。それを見た他の生徒会メンバーも同じ様にパソコンを閉じて立ち上がり頭を下げた。
「みなさん、そんな、大丈夫ですわ。座ってください」
レイラは慌てて、伝えたが誰一人して座る人間はいなかった。
(まるで、ヤクザみたいだぁ)
「これは大道寺レイラ様、本日はこのような場所にどうなされました? ご用がありましたら生徒会のから向かいましたのに」
「突然の訪問、申し訳ありません。事前に伝えますと皆様がいらしてしまうと思い足を向けました」
レイラが頭を下げると、室内は静まり返った。生徒会メンバーが全員がそろっているが呼吸の音だけしか聞こえない。。
「会長になるからには、きちんと生徒会の皆様全員に自らの足で向かい挨拶をしようと思い伺いました」
レイラは頭をあげるとニコリと笑った。
「改めてまして、以前全校生徒メールで報告致しましたが、来年度桜花会会長なります大道寺レイラと申します。よろしくお願いしますわ」
「挨拶に来て頂いたこと、申し訳ありませんが生徒会は桜花会の神格化や行事では協力をしますがそれ以上の距離が近くなるわけにはいかないのです」
貴也は、穏やかに笑いながらレイラに丁寧に説明した。レイラが首を傾げていると、彼女にだけ聞こえる小さな声で「生徒会の成り立ちについて聞いていますよね」と言われた。レイラがゆっくり頷くと、“なら、わかりますよね”と声に出さないで言った。
(そうだよなぁ。まゆタソが入学前に生徒会と仲良くしたら学校でも彼女と一緒にいられると思ったが……。学校の規則を桜花会が提案して、生徒会が可決する制度があるうちは二つの組織が仲良くすると癒着を疑われる事は確かだだよな。他にも色々言われたなぁ。それも全部、中村幸宏のせいか。爪痕残すなぁ)
レイラはため息をつき、生徒会一人ひとりの顔を見た。彼は困惑しているようであった。
覚悟を決めた。
「江本会長、何を言ってますの。私は桜花会の次期会長ですわよ。黒服ごときが気軽に話しかけていい立場の人間ではありませんわ」
レイラは口に手をあて、笑いながら周囲を見回した。生徒会のメンバーは苦い顔をしている中、貴也だけは“それでいい”と言うように頷いていた。
以前貴也から生徒会と桜花会の関係を聞いている彩花はバツの悪そうな顔をしていた。
「でも、これから私の手足となって働く人間の事が知りたいですわ。名乗って下さるかしら、次期会長の緒方先輩」
そう言って、レイラは一番恥にいたガタイの良い短髪黒髪の男子生徒を指刺した。
(名前と顔は知っているが実際に見て、性格もある程度確認しときたいな)
「え……? 名前」
緒方一が動揺して固まると貴也はにこりと笑い、彼の背中を押した。
「流石レイラ様ですね。今年度は幹部ではいらっしゃらないので生徒会との打ち合わせに出ておられませんよね。それで顔と名前が一致しているのですか」
「特待の方は、全員覚えています」
レイラの淡々とした返事に、貴也は笑顔で頷いた。そして、一の耳元に口を近づけるとさっさと自己紹介をするように促した。
一は小刻みは頷くと目を細め一歩前にでた。
「自分は書記であり、次期会長の緒方一です。……レ、レイラ様が何を考えていらっしゃるかは、ぞ、存じませんが、突然部屋にくるのは礼にかけていますね」
一は震える声でレイラに忠告した。
(なんだ? なにか文句つけなくちゃいけないと思っているのか? でかいなりして震えてるじゃねぇーか)
レイラはキッと一を睨みつけると、彼はビクリと身体を動かした。
「その話は江本会長と今して私は謝罪しましたわよね。次期生徒会長ともあろう人間が桜花会の話を聞いてないなんて先が思いやられますわね」
大きなため息をつくと、一は眉を下げて口を閉じた。
レイラは一を馬鹿にしたような笑いを浮かべた。
「江本会長。この方が本当に次期生徒会長ですの? 江本会長の後釜としては不十分ではないですか?」
レイラの言葉を聞いた一はまた、ビクリと体を動かし、子犬が助けを求めるような瞳で貴也を見た。
「仕方ないのですよ。生徒会は成績のみで役職が決まるのです」
ニコニコと笑い穏やかな口調だが、一を助けるような言動は一切なかった。それ以降、一は口を閉じた。
レイラはそんな彼を気にせず、次々と指名した。
現在会計で次期生徒会副会長の石田栄之助、現在役職はないが次期書記の安本隼人は名前だけを名乗りすぐに下がった。隼人は表情のよめない顔をしていたが栄之助はレイラに怯えているようであった。
「ここにいる来年度の生徒会メンバーは私で最後ですね。岡本副会長は卒業ですしね」
笑顔で前にでたのは彩花だ。
彼女の言葉に現在副会長の岡本光一は静かに頷いた。彼の顔には“早く終われ”と書いてあるようであった。
「同じクラスなので、面識はありますが改めてまして中村彩花です。よろしくお願いします」
「あら、ここにきてはじめて“よろしくお願いします”と言う言葉を聞きましたわ」
レイラが目を細めて周囲を見ると、貴也以外と視線が合わなかった。みんな彼女の視線を避け、下を向いていた。
「あはは、レイラ様が睨むからではないですか」
「睨む? 被害妄想が激しいのではなくて、私は皆さんのお顔をしっかりと覚えようとおもっていたのですわ」
2人の会話はまるで、虎と獅子が戦っているような緊迫した雰囲気であった。それを貴也は満足そうに見ていたが、他のメンバーは顔をあげることすら叶わなかった。
「では、もう十分ですよね。それでは、桜花会室までお送りします」
彩花はそういうと、手の平を上して扉をさした。すると、全員が改めてお辞儀をした。それはまるで、ヤクザの親分を送り出す場面に似ていた。
「そうですの。ありがとうございます。それでは皆様、ご機嫌よう」
レイラは彩花と共に、部屋を去ると全員がため息をついた。そして、一気に緊張がとけた。




