最中
十二の月が移ろう。月並みに月日という時の流れが波のように移り変わってゆく。
十五夜。中秋の名月。秋の最中。
お茶とお菓子。
縁側で祖母と和菓子を食べるのが好き。
お月見と言えばお団子。お月見団子が定番だけれど今日のお茶のお供は「最中」。
まんなかに餡があるから「最中」を「さいちゅう」や「さなか」ではなく、「もなか」と呼ぶようになったという説もあるようだ。
「最中」の皮が口の中にくっつくのが苦手だったけれど、この「最中」はくっつかない。
この「最中」いいかもな。
兎が見える。鈴虫が鳴いている。薄が揺れる。
満月のような丸い「最中」を食べてお月見をする最中のゆったりとしたひと時。
~数年後~
祖母にお線香をあげた。
「最中」を食べている最中。「最中」の最中。
まったりとゆっくりとしたひと時。
お月さま。
兎が見える。鈴虫が鳴いている。薄が揺れる。
お線香の煙がのぼってゆく。